USEFUL

病棟で役立つ

病棟で役立つ

病棟において最も大切になるのは、患者さんの皮疹や皮膚の状態を的確に把握することです。皮膚障害を早期発見するための患者さんの観察ポイントを紹介します。

皮膚障害の状態を確認する観察ポイント

薬疹や重症の皮膚障害を除いて、抗がん剤治療によって日常的に起こりやすい皮膚障害はほぼ決まっています。抗がん剤のタイプによって起こりうる皮膚障害のパターンは多少違いますが、病棟での「観察」については抗がん剤の種類の違いで区別すべきではありません。
日常的に起こってくる皮膚のトラブルは、「皮膚の乾燥」「爪の炎症」「ざ瘡様皮疹」の3つです。これらは分子標的薬によって起こることが少なくありません。また、殺細胞性抗がん剤と分子標的薬で起こる副作用として「手足症候群」があります。それぞれ起こり方に違いがあるので注意深く観察するようにしましょう。

皮膚の乾燥

抗がん剤の治療中は乾燥肌になりがちです。抗がん剤によって表皮の細胞がダメージを受け、角質層が薄くなって皮脂や汗の分泌が悪くなるからです。
皮膚の乾燥が起こる頻度は高いのですが、皮膚科医にコンサルテーションがあり、診察するのは乾燥がひどくなってしまったケースです。もっと軽い段階で皮膚の乾燥に気づいて対処することが望ましいです。
一般的には皮膚の乾燥は冬の季節、下肢に見られることが多いですが、抗がん剤治療を行っている患者さんの皮脂欠乏症は体幹にも出てきます。そして、皮膚が乾燥すると、患者さんは痒みを感じます。ひび割れや出血を起こすケースもあります。

観察のポイント
  • 皮膚がカサカサして粉をふいていないか
  • 皮膚がウロコのような状態になっていないか
  • 皮膚にごわごわした感じがないか
  • 痒みを訴えたり、皮膚を掻いたりしていないか

とくに、皮膚が膜状にむけている場合はトラブルが強いと考えて対応しましょう。
もともとドライスキンの患者さんもいますが、抗がん剤治療を始めた後に乾燥が起こってきた場合は注意が必要です。

爪の炎症

抗がん剤治療では皮膚だけでなく、爪にもいろいろな症状が現れます。爪も細胞分裂が活発なので、抗がん剤のダメージを受けやすいからです。

観察のポイント
  • 爪の変色や変形、爪が薄くなる、爪が割れていないか
  • 爪のトラブルが進行し、爪がはがれ落ちていないか
  • 爪のまわりに炎症が起こり赤く腫れていないか

手の指や足のまわりのトラブルは患者さんのQOLを損ないますし、治療の継続を困難にする場合もありますので、手足の爪が正常に近い状態かどうかを注意深く観察してください。
とくに、足の爪は靴下をはいていると見逃しやすいので、靴下を脱いでもらってチェックすることが必要です。
爪は使わないとどんどん劣化していく器官です。入院期間が長くなると爪の状態が悪くなっていることも多いので、丁寧に観察することが大事になってきます。
入浴ができない状態でも、足浴はしてもらってください。その際に爪の状態を観察するようにしましょう。

ざ瘡様皮疹

顔や胸、背中を中心に、ひどいニキビのような発疹が全身に現れます。頭皮や耳のなかに起こることもあります。

観察のポイント
  • 顔面だけではなく、他の部位にも皮疹がないか
  • 毛穴に一致したニキビ様の皮疹がないか
  • 発疹が急速に悪化してはいないか

ざ瘡様皮疹には、時に重篤な細菌感染症が合併することもあるので注意が必要です。細菌感染が起こると発赤が強くなることもありますが、ほとんど外見的には見分けがつかないので培養検査が必要になることもあります。
また、角質の状態が悪くなると、ざ瘡様皮疹が起きやすくなるので、スキンケアがきちんとできているかどうかをよく観察してください。ケアが十分ではない場合は予防的に保湿クリームなどを使うよう指導しましょう。
患者さんに皮疹があれば、皮膚科へのコンサルテーションがある前に、当該科で外用薬が出ているはずです。薬への反応性も重要な観察ポイントです。外用薬を3日〜1週間ほど塗っても改善しない場合、「このまま指示どおりの外用療法を続けてもよいのか?」という目で観察することが大切になるでしょう。
強いステロイド外用薬を塗っていても良くならない場合は、ぜひ皮膚科にコンサルテーションを依頼してください。

手足症候群

手足症候群は、抗がん剤によって皮膚の細胞障害が起こって生じる副作用のひとつです。
殺細胞性抗がん剤の副作用の場合は、紅斑が手足全体に広がり、重症になると痛みや水ぶくれを伴います。
分子標的薬(マルチキナーゼ阻害薬)によるものは、手指の腹部や関節、かかとなど物理的な刺激や圧力、摩擦のかかる部位に紅斑や水ぶくれが生じます。

観察のポイント
  • 紅斑が手足全体に広がっているか、圧力などのかかる部位に限局しているか
  • 症状が急激に起こったか(分子標的薬の場合)

分子標的薬を使っている患者さんは手足症候群になりやすいので、手や足の状態を注意深くチェックしておく必要があります。
重症化すると、皮膚が角化し、亀裂を伴うこともあります。角化が強くなると、水ぶくれや膿疱ができることもあり、まれに潰瘍化します。疼痛も強くなり、日常生活に支障を及ぼします。

サイトへのご意見サイトへのご意見