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皮膚に学ぶ

皮膚に学ぶ

抗がん剤によってなぜ皮膚障害の副作用が出るのかについて考えてみましょう。皮膚障害が現れるメカニズムを知り、重症度を正しく評価することで適切な対応をとることが可能になり、皮膚障害の悪化を最小限におさえながら抗がん剤治療を続けることができます。

皮膚の構造と働き

皮膚は「表皮」、「真皮」、「皮下組織(脂肪組織など)」の3層から構成されています。このうち表皮は皮膚のいちばん表面にある層で、さらに「角質層(角層)」「透明層(手のひらと足の裏のみ)」「顆粒層」「有棘層」「基底層」の5層に分かれています。【図1】
皮膚では、表皮のいちばん深いところにある基底層で日々新しい細胞がつくられています。新しく生まれた細胞は分化を繰り返しながら徐々に表面に押し上げられていき、やがて角質層になって、最後はアカになってはがれ落ちます。このサイクルはターンオーバーと呼ばれ、年齢や部位によって異なりますが、約6週間周期で繰り返されています。
また、表皮には免疫に関連するランゲルハンス細胞やメラニン色素をつくるメラノサイト(色素細胞)が存在しています。
真皮は、表皮の数倍から数十倍の厚さがあり、血管や神経、リンパ管が通っています。真皮には炎症に関連する肥満細胞や免疫に関連する組織球があります。
真皮の下の皮下組織は脂肪を多く含んでいるため皮下脂肪組織ともいわれます。
さらに、汗腺、皮脂腺、毛包、毛なども皮膚機能のひとつとしてさまざまな働きをしています。

図1 皮膚の構造 静岡県立静岡がんセンター作成・監修:抗がん剤治療と皮膚障害第5版,静岡:静岡県立静岡がんセンター, 2018;p3

皮膚は人間の体の最前線にある「人体最大の器官」で、さまざまな働きをしています。
その役割は主に次の6つです。

保護作用(バリア機能)

角質層が担っている大切な役割に「バリア機能」があります。この働きによって、体外からの刺激(機械的・物理的な力、化学刺激物質、細菌、紫外線など)から体を守っています。
また、バリア機能によって体内からの水分喪失を防いでおり、角質層内の水分はいつも一定に保たれています。

分泌作用

皮脂や汗を分泌します。皮脂腺からは弱酸性の皮脂が分泌され、これが皮膚の乾燥を防いだり、細菌の増殖をおさえたりしています。

体温調節作用

暑い時には汗を出して体温の上昇を防ぎ、寒い時には立毛筋を収縮させて体温が外に逃げないようにしています。

貯蓄作用

皮下に脂肪を蓄える働きをしています。

排泄作用

体内の老廃物を汗腺から汗として体外に排泄します。

知覚作用

皮膚は感覚器官でもあります。触感、温感、冷感などの外界の情報を察知するセンサーとして働くとともに、痛みや痒みを感じる役割もあります。

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