頭痛・生理痛・骨や筋肉、関節の痛み・腹痛の原因や特長
10代の子どもや若者の約5人に1人が慢性痛(持続的または再発的な痛み、または3カ月以上続く痛み)に悩んでいるという国際的な報告があります※1。日本でも、頭痛や月経痛、筋骨格系の痛み、腹痛などに悩む子どもが少なくありません。
頭痛では、片頭痛に注意が必要です。子どもの片頭痛は頭の両側に起こることが多く、片頭痛と気づかれないこともあるといいます。しっかり対処せずに重症化すると大人になっても片頭痛に悩まされるリスクが上がるので、早めの対策が重要です。
一方月経痛は、女子中高生の7割が悩んでいるという報告があります※2。かつて月経痛は「少しぐらいの痛みは仕方がない」、「我慢するもの」と思われていた時期がありました。しかし、月経痛を訴える子どもの中には子宮内膜症の初期病変が見つかることもわかってきたことで、専門家は「たかが月経痛と軽く見てはいけない。放置すると本当の子宮内膜症に進み、将来、不妊になるリスクもある」と警鐘を鳴らします。
スポーツによる筋骨格系の痛みは、1回のケガで組織が損傷される「外傷」と、繰り返される負荷で組織が徐々に損傷される「障害」に分類されます。伸び盛りの成長期には、スポーツ中に障害が起こりやすいという側面もあります。特に注意が必要なのは腰痛と膝関節痛で、中でも腰椎分離症が原因の腰痛の場合は初期のうちに見つけることが大切です。
腹痛は、過敏性腸症候群が原因のケースが多いようですが、この中に近年増加中の潰瘍性大腸炎やクローン病という炎症性腸疾患が潜んでいることが少なくありません。ただの腹痛なのか、背後に注意すべき病気があるのかを見分けることが肝心です。
頭痛や肩こりによる痛み、腰痛、腹痛、関節痛など、大人はさまざまな痛みに悩まされます。これらの痛みは一般に加齢とともに増えると思われがちですが、実は10代の若い世代でも痛みを経験する人は少なくありません。例えば、小児および思春期の若者(19歳未満)の慢性痛の有病率に関する多くの論文を解析した研究によると、約5人に1人が慢性痛を経験しており、中でも多かったのが頭痛と筋骨格系の痛みでした※1。
10代の痛みについて、東京医科大学小児科・思春期科主任教授で、小児頭痛外来を担当している山中岳先生は、次のように話します。
「痛みにはいろいろな種類がありますが、10代で特に多いのは頭痛や腹痛、関節痛、腰痛、胸痛などで、女子では月経痛が目立ちます。例えば片頭痛があるとか、スポーツで関節を傷めたとか、月経による腹痛や腰痛など、痛みの原因が比較的わかりやすい場合もありますが、一方で原因の特定にいろいろな検査が必要になる場合もあります。中には頭痛の影に脳腫瘍のような深刻な病気が隠れていることもあります。また原因がはっきりしないこともあり、体の機能自体には問題がなくても、心の問題から痛みを感じるようになることも少なくありません。子どもの痛みに対しては、成長途中にあるからこそ、体はもちろんのこと、心にも配慮することが大切です」

10代に多い痛みの代表として挙げられるのが、「頭痛」、「月経痛」、「筋骨格系(筋肉や骨、関節など)の痛み」、「腹痛」です。これら4つの痛みについて、症状や原因、大人の場合との違い、留意点などを紹介します。
頭痛にはいくつかタイプがあり、中でも多いのが筋肉のこりが原因で起こる「緊張型頭痛」と、脳の血管が拡張して起こる「片頭痛」です。
「10代の頭痛でも、これらの頭痛がよく見られます。頻度は緊張型頭痛が一番多いと思われますが、緊張型頭痛で医療機関を受診することは少ないため、受診者では片頭痛患者が圧倒的に多くなります。片頭痛は緊張型頭痛よりも症状が強く、生活に支障を来す度合いが大きいからです」と山中先生は話します。
片頭痛の症状の特徴は、①ズキズキと拍動するような痛みを繰り返す、②体を動かすと頭に響く、③吐き気や嘔吐を伴う、④光や音、においなどの刺激に過敏になるなどです。こうした症状がつらくて勉強や仕事などが手につかない、寝込むといったことも珍しくありません。症状は子ども大人と同じですが、頭痛の起こり方には特徴があるといいます。
「片頭痛というのは、その言葉通り、頭の片側が痛むことが多いのですが、子どもの場合は年齢が低いほど、頭の両側が痛みがちです。このため、なかなか片頭痛として認識されず、対策が遅れて長期間頭痛に苦しんだり、中には仮病と勘違いされたりすることもあります」(山中先生)
片頭痛は2、3歳で発症することもあるそうです。「医療機関への受診は小学生になってからだったものの、話を聞いてみると幼児のころから頭痛らしきものを訴えていた、ということもあります」と山中先生。そもそも片頭痛はなぜ発症するのでしょうか。
「一つには体質があります」と山中先生。「家族に片頭痛の方がいると発症しやすい面があります。それに加え、生活環境などいろいろな要素が合わさり発症に至ると考えられます。睡眠不足や天候、ストレスなどが重なって引き起こされることもあります」(山中先生)
痛みは主観的な訴えなので、子どもが幼い場合はそのつらさを上手に伝えられないこともあります。そんなときは家族や教員など周囲の大人が早く気づいてあげることが重要です。
「子どもの場合、片頭痛が始まると、痛みを訴えるのではなく、おとなしくなってあまり動かなくなることが多いようです。また子どもの片頭痛は大人に比べ、吐き気や腹痛などの胃腸症状を伴いやすい傾向があり、胃腸炎と間違えられることもあります。いつもと違う子どもの“状態”に、大人がいち早く気づくことが大切です。いつもと違う素振りがあれば、『どこか痛い?』『頭は痛くない?』などと聞いてあげてください。言葉で答えられるお子さんや、頭を指し示すお子さんもいます」と山中先生はアドバスします。

では、子どもの片頭痛に対して、どう対処すればいいでしょうか。医療機関の受診は急いだ方がいいのでしょうか。
「子どもの片頭痛の半分以上は、大人にまで持ち越すことがわかっています。特に低年齢で発症した場合や重症度が高い場合は、そのリスクが高くなります。受診のタイミングが遅れると治療が難しくなるケースもあるので、気になる症状があれば一度は小児科で診てもらうようにしましょう。稀ですが、頭痛の背後に脳腫瘍などが隠れていることもあるので、深刻な病気でないことを確認する意味でも重要です。特に5歳以下で頭痛を訴えるような場合は、早めの受診をおすすめします」
そう語る山中先生自身も、小学校低学年の頃から片頭痛に苦しめられた経験を持つといいます。
「比較的重症度が高く、現在も年に1、2回ほど起こりますが、以前に比べるとずっと楽になりました。片頭痛の治療は近年、格段に進歩しました。私が20代後半のころに医療機関で処方してもらえるトリプタン製剤という新しい片頭痛薬が登場し、片頭痛管理が本当に楽になりました。人生が変わったと思ったほどです。片頭痛だから仕方がないと諦めて2、3日寝込んで過ごすのと、しっかり薬を飲んでコントロールするのとでは、QOL(生活の質)が全く違います。保護者とお子さんの両者が病気の知識を持って、小さいころから上手に付き合っていくことが大事です」
なお、「起立性調節障害」が原因で頭痛が起こることもよくあります。起立性調節障害は、横になった状態から立ち上がったときに頭痛やめまい、倦怠感などの症状が出る病気で、主に自律神経がうまく機能しないために起こります。思春期※3に多く、日本小児心身医学会によれば、軽症例も含めると中学生の約10人に1人が起立性調節障害であると考えられるといいます。
「起立性調節障害にはいくつかタイプがありますが、中でも立ち上がったときに血圧が低くなったり、脈が早くなったりするタイプで頭痛が多いことがわかっています。この起立性調節障害による頭痛と片頭痛の両方を持っている子どもも結構多いのです。朝に症状が出やすく、家庭や学校などのストレスも影響します。子どものつらい気持ちに寄り添ってあげることも大切です」と山中先生。
女子の場合、毎月の月経に悩んでいるケースも少なくありません。
千葉県の中高生608人を対象にしたスポーツ庁の「子供の体力向上課題対策プロジェクト」の調査によると、勉強や運動に影響を与えるほどの月経痛があると答えた女子は71%に上りました※2。さらにその月経痛の程度は、「我慢できる」が43%、「薬で我慢できる」が35%、「勉強・体育がつらい」が15%、「1日寝込む」が2%でした。月経痛をうまくコントロールできず、痛みに耐えながら学校生活を送っている女子生徒の現状が伺えます。

月経に伴って、生活に支障を来すような強い下腹部痛や腰痛などの症状が起こる病態は「月経困難症」と呼ばれます。これには2つのタイプがあります。一つは子宮内膜症や子宮筋腫などの病気があるために月経痛がひどくなる「器質性月経困難症」。もう一つが特定の病気はないものの痛みがつらい「機能性月経困難症」です。
思春期は子宮が十分に発達しておらず、子宮頸管が狭く硬いため月経痛が起こりやすいという側面もあり、従来は病気のない機能性月経困難症が多いとされてきました。ところが、近年、この機能性月経困難症とされる中にも、ごく初期の病変が潜んでいることがあるとわかってきました。10代の月経痛対策に積極的に取り組んでいる、藤沢女性のクリニックもんま院長の門間美佳先生は次のように話します。
「病気のない機能性月経困難症の人の多くに初期の内膜病変が見つかっており、10代の女性でも、お腹の中を腹腔鏡で調べると、子宮内膜症の初期病巣、内膜症の元があるということです。これを放っておくと、いずれ本格的な子宮内膜症に進む危険性があるので、10代の月経痛を軽く見てはいけません」
子宮内膜症とは、本来なら子宮の内側にある子宮内膜組織が、子宮の外(腹膜や卵巣など)にこぼれて、出血や炎症、癒着(ゆちゃく)を繰り返し、様々な痛み(月経通、性行痛、排便痛)が現れたり、放っておくと卵巣のう腫(チョコレートのう胞)や癒着による不妊の原因になる病気です。
「月経のたびに子宮以外の場所でも“月経”が起こるため、古い血液が卵巣に溜まったり、周囲の組織と癒着して子宮が後ろに引っ張られる子宮後屈になったりします。初期の内膜症が本格的な子宮内膜症へと進行していきます。子宮内膜症は将来の不妊や、卵巣がんの発症リスクにもつながるので注意が必要です」(門間先生)

では、なぜつらい月経痛や子宮内膜症が増えているのでしょうか。その背景にあるのが「現代女性の多すぎる月経回数」だと、門間先生は指摘します。
「現代女性は昔の女性に比べて出産回数が減ったために月経の回数が増え、月経のある期間も長くなったといわれています。明治時代ごろの生涯の月経回数は50回ほどだったのに比べ、現代の女性は約450回と9倍も多くなっています※4。ライフスタイルの変化や月経回数が多くなったことにより、月経困難症や子宮内膜症などの病気が増えてきたと考えられています。
月経困難症や子宮内膜症は、将来の不妊、妊娠高血圧や早産などの産科合併症、卵巣がん、骨粗鬆症、さらには心筋梗塞などの病気の発症リスクも上げると報告されています。
月経は妊娠のために必要なからだの仕組みですが、デトックス効果はありません。妊娠を望んでいない期間の月経回数を減らしたり、治療によって子宮を休ませたりすることも、現代女性にとっては大切な選択肢なのです」
「月経は病気ではない」、「月経痛は我慢するもの」などと考えている人もまだ少なくないのかもしれません。特に10代の娘さんを持つお母さん世代では、ご自身の若いころを振り返り、「私も痛かったけれど我慢してきた」という方も一定程度いらっしゃる印象があります。しかし、医学的な知見から月経痛のリスクが明らかになった現在、「我慢は禁物」だと門間先生は強調します。
「月経痛は“病気の入り口”である可能性も高いので、我慢や放置をせずに適切な対処で痛みを抑えることが大切です。その目的は大きく2つあります。一つは、お子さんが毎月の痛みから解放され、過多月経による貧血を改善して、勉強やスポーツなどで自分の能力を発揮できるようになることです。
もう一つは、将来の不妊や様々な疾病になるリスクを下げることです。お子さんの“今”と“未来”のためにも、ぜひ一度、婦人科で相談してください。私にも小学校6年生の娘がおり、月経痛がひどく、貧血で倒れることもありました。現在は、小学生にも使える安全性の高いホルモン剤で月経痛や貧血が改善し、元気に毎日を送っています」(門間先生)
10代の月経痛に対しては、子どもだけでなく、保護者が一緒になって対処することが大切です。月経のつらさについて話し合う、月経の仕組みや痛みの改善策をともに学ぶ、婦人科に一緒に行って相談するなど、親子で始めてみてはいかがでしょうか。
骨や関節、靭帯、筋肉など、筋骨格系の痛みも多くの10代の子どもや若者が経験します。中でも多いのがスポーツ傷害(外傷および障害)による痛みです。2017年のスポーツ安全協会の調査によると、スポーツ傷害の発生件数が最も多かったのが10〜12歳でした※5。

慶應義塾大学スポーツ医学研究センター准教授の原藤健吾先生は、「大学附属の小学、中学、高校の生徒を対象にスポーツ医学相談を行っていますが、骨や関節の痛みを訴えて来る生徒はとても多く、そのほとんどがスポーツ外傷や障害による痛みです。傷害の部位を調べたところ、膝が32%、腰が26%、足首から下が24%と、これら3つの部位で8割以上を占めていました。スポーツの種類に関わらずよく使う部位なので外傷や障害が生じやすいと考えられます」と話します。
10代でスポーツ外傷や障害が起こりやすい背景には2つの要因があります。一つは、部活などで過度に体を使いすぎる「オーバーユース」で、もう一つが成長期に特徴的な体の発達速度によるものです。
「10代では骨や筋肉、靭帯などが成長していきますが、実は骨の伸びる速度が早い一方で、筋肉や靭帯、腱といった軟部組織は骨に比べて伸びる速度が遅いという特徴があります。その結果、筋肉や靭帯、腱が骨の動きに伴い柔軟に動くことができず、引っ張られた状態になりがちなのです。これが10代にスポーツ障害が起こりやすい一因になっています」と原藤先生は説明します。
子どもはからだの成長期にあるため、骨の両端には、骨を成長させるための「
筋骨格系の痛みの中でも特に注意が必要な腰痛と膝の痛みを見ていきましょう。
子どもが腰痛を訴える時、注意が必要なのが、10代前半の成長期に起こる「腰椎分離症」です。初めは運動をするときにだけ痛みますが、次第に日常生活でも痛むようになります。背中を後ろに反らしたり、斜めにひねったりすると痛みが出るのが特徴です。これは腰椎後方にある弓状の骨の疲労骨折が原因で、初期はひびが入った状態ですが、進行すると完全に分離してしまいます。
「腰が痛くてスポーツができない、あるいはできるけれど痛いといった訴えがある場合は、この腰椎分離症を疑って、早く検査を受けることをおすすめします。ただし、単純X線検査で腰椎分離症だとわかるときにはかなり進行しています。単純X線検査の結果で異常がないとされ、そのままスポーツを続けているうちに症状が進んでしまい、上の骨が下の骨に対して前にずれてしまう『分離すべり症』になってしまうこともあります。それを防ぐためにも、ごく初期の段階で見つけられるMRI(磁気共鳴画像診断)検査を受けるのがいいでしょう」と原藤先生。
最近はスポーツクリニックや脊椎専門のクリニックも多くなっており、医療機関にMRIがなくても、提携施設でMRI検査も受けられるケースも増えています。

スポーツをしている小学校高学年から中学生の男子に多いのが、「オスグッド病」です。これはスポーツで飛んだり跳ねたり、ボールを蹴る動作を繰り返し行うオーバーユースにより起こる病気です。膝のお皿の下の骨(脛骨粗面 けいこつそめん)が徐々に出っ張ってきて、痛みを生じます。
「ただし、スポーツを休まないといけないほど痛いということはあまり多くなく、スポーツを続けながら痛みを軽くしていく方法が一般的です。痛い場所を氷で冷やしたり、太ももの前面の大腿四頭筋のストレッチをしたりするのが有効です。オスグッド病に限らず、スポーツ外傷や障害を防ぐにはストレッチなどで筋肉の柔軟性を高めることがとても重要です」(原藤先生)
膝のあたりの痛みには、「成長痛」と呼ばれるものもあります。幼児から小学校低学年くらいの子どもに見られ、夕方から夜半にかけて痛みを訴えることが多いとされます。「持続しない一過性の痛みで、検査をしても異常がなく、痛みのある場所も膝だったり太ももだったりと、その時によって違うことも。病気ではないので、特に心配する必要はありませんが、成長痛なのか、あるいはどこかにケガがあっての痛みなのかは見分ける必要があります。もしも特定の場所を痛がる、痛みが続くということがあれば整形外科を受診しましょう」と原藤先生は助言します。
突然、お腹が痛くなってトイレに駆け込んだり、便秘でお腹が張って痛くなったり…。腹痛も10代にとって、つらい症状です。腸には明らかな異常がないのに腹痛や便秘、下痢を繰り返す「過敏性腸症候群(IBS)」は、中学生や高校生などの若い世代に多くみられます。
「ただ、過敏性腸症候群と思っている中には、潰瘍性大腸炎やクローン病という炎症性腸疾患が紛れ込んでいることもあります。炎症性腸疾患は消化管に原因不明の炎症や潰瘍ができる病気で、近年、10代のお子さんに増えているので、腹痛が長引いたりする場合には、しっかり診断を受ける必要があります。例えば炎症性腸疾患の症状である血便や、夜中に腹痛で目が覚める、体重が減少するといったことがないか、保護者の方は注意してみておく必要があるでしょう。思い当たる場合は早めに受診するようにしてください」(山中先生)
一方、思春期の子どもは、血便があっても恥ずかしがって保護者にいわなかったり、また血便かどうかよくわからなかったりすることもあります。血便かどうか判断に迷う場合には「お子さん自身に便の写真を撮ってもらい、受診の際に持っていくと診療の助けになります」と山中先生は話します。
腹痛の原因は多岐にわたり、盲腸などの病気のこともあれば、頭痛のパートで紹介した起立性調節障害により起こることもあります。また精神的なストレスによって発症したり、悪化したりすることもあるので、周囲の大人がそのサインに気付くことも大切です。

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