胃薬の種類と、正しい胃薬の選び方
2026.7.10 更新
胃の不調といっても、胃痛や胸焼け、胃もたれなど、その症状はさまざまです。薬局やドラッグストアには、いろいろな種類の胃薬が並び、どの薬が自分の症状に合っているかよくわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。胃の不調に対処できる市販薬(OTC医薬品)にはどんなものがあり、どのような作用で効果を発揮するのか、市販薬(OTC医薬品)を選ぶ際のポイントと正しく使うための情報を紹介します。
胃痛や胸焼け、胃もたれなど、胃の不調が起こったとき、頼りになるのが市販薬(OTC医薬品)です。ドラッグストアに並ぶ胃薬にはいろいろな種類があり、自分の症状に合った薬を選ぶことが重要です。その際の目安になるのが、胃の症状を起こす原因です。「胃酸過多」による症状なのか、「胃の働きの低下」による症状なのかで、選ぶ薬が違ってきます。
胃酸過多が原因の胃痛、胸焼けなどの症状に対して効果が高いのが、胃酸分泌抑制薬の「H2受容体拮抗薬(以下、H2ブロッカー)」と「プロトンポンプ阻害薬(以下、PPI)」です。
いずれも医療用で使われてきた有効成分を市販薬(OTC医薬品)に転用した「スイッチOTC医薬品」です。
薬剤師の児島悠史先生は、「H2ブロッカーは、いち早く痛みを取り除きたい人におすすめです。
一方、PPIは、しっかり効かせたい人に向いています」と説明します。このほか「胃粘膜保護薬」や「制酸剤」なども、胃酸過多による症状に効果があります。
また、食べ過ぎや飲み過ぎなどによる胃の働きの低下からくる胃もたれやむかつきなどの症状に対しては、「消化酵素薬」や各種の生薬を配合した「総合胃腸薬」などが向いています。胃薬は選択肢が多いので、症状に合ったものを正しく使い、不調を改善しましょう。
胃が痛い、胸焼けがする、胃がもたれる…。そんな胃の不調に見舞われたとき、どんな対策をとる人が多いのでしょうか。第一三共ヘルスケアが2025年9月に20〜60代の働く男女800人の胃痛経験者を対象に行ったアンケート調査では、仕事中に胃痛を感じたときの対処法として最も多かったのが市販薬(OTC医薬品)の使用で、約半数(47.8%)を占めていました。その一方、市販薬(OTC医薬品)を買う際にどの薬を選んだらいいか迷ったことがあるという人は約6割(59.6%)に上りました。
数ある市販薬(OTC医薬品)の中から最も適したものを選ぶには、胃の不調がどのような原因で起こっているかをまず確認する必要があります。市販薬(OTC医薬品)の作用や使い分けなどに詳しい薬剤師の児島悠史先生は次のように話します。
「胃の薬を求めて薬局やドラッグストアを訪れる人はとても多く、そうした人には、まずどんな症状に困っているかを伺います。その上で、不調の原因が“胃酸の出過ぎ(胃酸過多)”によるものなのか、胃が十分に動いていないなどの“胃の働きの低下”によるものかを推測します」
では、「胃酸過多」と「胃の働きの低下」では、それぞれどんな症状が見られるのでしょうか。

胃酸過多の場合は、みぞおちのあたりが痛む「胃痛」が代表的です。「シクシク」「キリキリ」「キューッ」など、その人ごとに感じ方には差がありますが、胃酸が過剰に分泌されることで胃粘膜が刺激され、胃痛が引き起こされている可能性があります。また、みぞおちの上のあたりが「ジリジリ」「ヒリヒリ」と焼けるように痛む「胸焼け」の症状も、胃酸過多が原因で起こります。さらに、「むかつき」も胃酸が多すぎることで起こりますが、ときに酸っぱいものが上がってくることもあります。このような胃酸過多が原因と思われる症状に対しては、胃酸の分泌を抑えたり、胃の粘膜を保護したり、胃酸を中和したりする薬を選びます。
一方、胃の働きが低下している場合の代表的な症状は、食後や食事と食事の間に胃が重く感じたり、食べたものが胃の中に残っているように感じたりする「胃もたれ」です。このような胃の働きの低下が原因と思われる症状に対しては、胃の働きを良くしたり、消化を助けたりする薬が適しています。同じ「ムカムカ感」でも、食べ過ぎが原因のものはこちらに当てはまることが多いです。
このように、まずは大きくどちらのタイプに当てはまるのかを確かめ、さらに個別の症状に合わせて、より効果的な市販薬(OTC医薬品)を選んでいきます。

このように、胃酸過多が原因で起こる胃痛に対しては、胃酸の分泌を抑える「胃酸分泌抑制薬」をはじめ、「胃粘膜保護薬」や「制酸剤」などが用いられます。それぞれについて説明しましょう。

胃酸分泌抑制薬の代表が、「H2ブロッカー」と「PPI」です。
どちらも医療用医薬品(処方薬)として長年使われてきた薬で、その有効成分を市販薬(OTC医薬品)に転用した「スイッチOTC医薬品」です。
H2ブロッカーは1997年にスイッチOTC医薬品として登場した薬です。現在では、薬局やドラッグストアだけでなく、ネット通販でも購入できます。一方でPPIは2025年にスイッチOTC医薬品になったところで、現在は薬剤師との対面相談が必須の「要指導医薬品」であり、店頭でのみ購入できます。
では、この2つの薬にはどんな特徴があり、どのように使い分けるといいでしょうか。
児島先生は、「H2ブロッカーは服用してから胃の中の酸度が下がるまでの時間がやや短いという特徴があります。一方、PPIは効果を発揮するまえに胃酸で活性化される必要があるため、薬が効き始めるまでに少し時間がかかりますが、胃酸を抑える作用が強力です」と説明します。
一般に、H2ブロッカーは服用してから1~3時間後に最大効果が現われ、PPIは連続服用して数日後に最大効果が現われるとされています。
| H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー) | プロトンポンプ阻害薬(PPI) |
|---|---|
| ヒスタミンH2受容体にヒスタミンが結合するのをブロックしてプロトンポンプへの刺激を抑えて胃酸分泌を抑える | 胃酸の出口にあたるプロトンポンプを阻害して胃酸分泌を抑える |
| 服用後1〜3時間で最大効果が現れる | 効果を発揮するまでにやや時間がかかるが症状を強く抑える |
| ピロリ菌検査前には服用できない |
(監修:児島悠史先生)
「PPIとH2ブロッカーでは作用の仕組みや効果発揮の特性に違いがあります。一般に、H2ブロッカーは服用後の比較的早い段階から胃酸分泌を抑えるとされており、一方でPPIは酸分泌抑制作用が持続することが特徴とされています。このように、それぞれ異なる作用特性を有しているため、症状の現れ方や使用状況に応じて選択されます」
こうした違いは、薬の作用メカニズムが異なるために生じます。
胃粘膜の壁細胞には、「アセチルコリン」、「ヒスタミン」、「ガストリン」という物質がそれぞれ結合するための受容体があります。ここに各物質が結合すると、その刺激がプロトンポンプに伝わり、胃酸が分泌されます。
H2ブロッカーは、この壁細胞にある「ヒスタミン」が結合するヒスタミンH2受容体をブロックすることで、プロトンポンプへの刺激を抑え、胃酸の分泌を抑制します。一方、PPIは胃酸で活性化された後、胃酸分泌の最終段階であるプロトンポンプを直接阻害することで、胃酸分泌を抑制します。「PPIは、胃酸を分泌するプロトンポンプにダイレクトに作用するので、胃酸を抑える効果がより強くなります」(児島先生)

服用回数は、H2ブロッカーは1日2回まで、PPIは1日1回と定められています。
「H2ブロッカー(ファモチジン、ニザチジンなど)の場合は、胃が痛い時に頓服で利用することが多く、その後、症状がまだ残っていたら、1日の間にもう1回飲むことができます(8時間以上の間隔をあけて)。夜間も症状が出るようなら、日中に加え、寝る前に飲んでもかまいません。PPIの場合は1日1回なので、症状が出やすいタイミングに合わせて服用時間を決めるといいでしょう」(児島先生)
H2ブロッカーもPPIも市販薬(OTC医薬品)の場合、続けて使用できるのは2週間までです。もし2週間飲んでも症状が改善しない場合は、胃痛の背後に胃潰瘍や胃がんなどの重篤な病気が隠れている可能性もあるので、医療機関を受診することが重要です。
「市販薬(OTC医薬品)で症状が落ち着いたものの、しばらくしたらまた症状がぶり返すという方も、受診するのがいいでしょう。胃痛を繰り返す方の中には、ピロリ菌に感染しているケースが少なくありません。医療機関を受診してピロリ菌の検査を受け、もし感染していたら除菌治療を受けるなど、医師と相談しましょう。ピロリ菌の除菌治療は症状の根本的な解決につながります」と児島先生はアドバイスします。
ピロリ菌の検査を受ける場合には、PPIを服用していると、ピロリ菌に感染していてもそれが検出されない“偽陰性”になることがあります。「検査を受ける際は、2週間前から服用を中止する必要があります。PPIを服用している方がピロリ菌検査を受ける場合は、その旨を医療機関に伝えるようにしてください」(児島先生)。
なお、80歳以上の高齢者はH2ブロッカーを使えません。服用によって、一時的に意識状態が混乱する「せん妄」が起こる可能性があるとされています。
また、PPIは長期間の連用によって腎機能の悪化や骨密度の低下、ビタミンB12の吸収低下などが起こる可能性があるとされています。
このような注意点も含め、どちらの薬が自分に適しているか迷う場合は、薬剤師に相談しましょう。
胃粘液の分泌を促したり、胃粘膜の修復を助けたりして、胃を守ります。ストレスなどで胃粘膜が荒れて胃が痛むといったケースに向いています。
「比較的軽い痛み症状の場合には、胃粘膜保護薬をお勧めすることもあります。効き目がマイルドな分、副作用や他の薬との飲み合わせの心配が少なく、幅広い年齢で服用できるものもあります」と児島先生。
過剰に分泌された胃酸を中和して、胃の中の酸度を下げ、胃粘膜を保護する薬です。有効成分には炭酸水素ナトリウム(重曹)や酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどがあります。
「制酸剤に含まれるアルミニウムやマグネシウムは、ほかの薬の吸収や効果に影響することがあります。もしほかの薬を服用している場合は、飲み合わせに注意が必要なので薬剤師や登録販売者に相談してください」(児島先生)
突然、キューッと刺し込むように胃が痛む、そんな胃の過度な緊張やけいれんによって起こる胃痛の可能性があります。その場合、ブチルスコポラミン臭化物が有効成分の鎮痛鎮痙薬があります。
「締め付けるような痛みがつらいとき、頓服で用います。ただし、急を要する場合の対症療法に使う薬なので、激しい痛みを何度も繰り返す場合には放置せず、医療機関を受診してください」と児島先生。
| くすりの種類 | こんな症状に | ポイント |
|---|---|---|
| 胃酸分泌抑制薬 (H2ブロッカー) |
胃痛、胸焼け、胃もたれ、むかつきなど | 胃酸の分泌を抑制することで胃の粘膜が傷づくことを防ぐ。ファチモジンなどがある。胃酸の基礎分泌を抑え、効果は数時間続く。ファチモジンは胃粘膜の修復を助ける作用もある。 |
| PPI(プロトンポンプ阻害薬) | 胃酸の分泌を抑制することで胃の粘膜が傷づくことを防ぐ。エソメウイラゾールなどがある。胃の壁細胞にあるプロトンポンプの働きを阻害し、強力に胃酸の分泌を抑制する。 | |
| 制酸剤 | 胃痛、胸焼けなど | 胃酸を中和する。炭酸水素ナトリウム(重曹)や合成ヒドロタルサイト、沈降炭酸カルシウムなどがある。胃酸を中和することにより胃粘膜への刺激を緩和する。 |
| 胃粘膜保護薬 | 胃痛、むかつきなど | 胃粘液の分泌を促したり胃粘膜の再生力を高める。セトラキサートや銅クロロフィリンナトリウムなどがある。カンゾウ末などの生薬も胃粘膜の荒れを修復する。効果が出るまでに時間がかかる。 |
| 鎮痛鎮痙薬 | 急な胃の痛み、キリキリする痛み | 副交感神経を亢進させるアセチルコリンの働きを抑えることで、胃のけいれんや過度の緊張による胃痛を抑える。ブチルスコポラミン臭化物などがある。 |
胃の動きや消化機能など、胃の働きが低下すると、胃もたれやむかつき、吐き気、膨満感などの症状が出てきます。このような症状の改善には、胃の働きを良くしたり、消化を助けたりする「消化酵素薬」や「漢方薬」、「総合胃腸薬」などがあります。
消化酵素は、炭水化物やたんぱく質、脂質などを分解して消化を助ける成分です。例えば炭水化物の消化酵素にはジアスターゼ、たんぱく質の消化酵素にはペプシン、脂質の消化酵素にはリパーゼ、などがあります。消化酵素が効果的なのは、食べ過ぎによる胃もたれや胸焼け、吐き気、膨満感、食欲不振などの症状です。
「例えば油の摂りすぎで胃がもたれているときは、リパーゼなど脂質の消化酵素を含む薬を選ぶのが基本です。どんな消化酵素が含まれているか、パッケージの説明を確認するといいでしょう。各種の消化酵素をまんべんなく配合した市販薬(OTC医薬品)も多く出ています。特に、忘年会などで一時的に食べ過ぎたり飲み過ぎたりしたときに適しています。常に胃が持たれるなどの症状がある場合は、医療機関の受診をお勧めします」と児島先生は話します。
漢方薬も選択肢の一つです。「六君子湯」は胃腸が弱く、消化不良や胃もたれ、吐き気、食欲不振、胸焼け、胃痛などのある人におすすめです。
「胃の運動機能改善などが認められており、機能性ディスペプシアの診療ガイドライン※1でも、使用が推奨されています。胃の動きや消化機能など、胃の働き全般を良くする作用が期待できます。様子を見ながら服用をしてください」(児島先生)
「六君子湯」のほかにも、生薬が入った総合胃腸薬も選択肢になります。具体的には、香りや苦みなど、嗅覚と味覚を刺激することで、胃の働きを促す健胃薬のことで、苦みの強い生薬としてはセンブリやオオバク、オウレン、香りのよい生薬としてはハッカやサンショウ、ケイヒ(シナモン)、チンピ(乾燥させたミカンの皮)、ショウキョウ(生姜)などがよく用いられます。
「香りをかいだり、苦みを味わったりすることで唾液や消化酵素などの分泌が促され、弱った胃の働きが改善します。生薬を希望する方にお勧めすることが多いです。用法用量を確認し、様子を見ながら服用してください」(児島先生)
胃粘膜保護成分や消化酵素、生薬など、多様な成分を配合しているのが、総合胃腸薬の特徴です。胃もたれ、むかつき、胃の不快感、胃痛など、程度はあまりひどくないものの、いろいろな症状がある場合に向いています。

「薬局やドラッグストアでは、複数の症状があって胃の調子がなんとなく悪いという相談がよくあり、その際には総合胃腸薬をおすすめすることが少なくありません。ただ、いろいろな成分が配合されている分、その方にとって必要のない成分や副作用のリスクが高い成分が入っていることもあります。薬剤師や登録販売者に相談し、ご自分の症状や服薬状況に合ったものを選ぶようにしてください」と児島先生は助言します。
胃の不調を改善する市販薬(OTC医薬品)の選択肢はたくさんあります。使用する際は、できるだけ薬剤師や登録販売者に相談し、飲み合わせを確認した上で、症状に合ったものを選ぶようにしましょう。
「お薬手帳を持参すると、薬の飲み合わせをチェックできるので安心です。また、胃の症状を薬剤師や登録販売者に伝える際には、薬を飲んだ後にどうしたいかまで話していただけると、より適した薬を選ぶことができます。例えば、症状を改善して仕事をしたいのか、家に帰って休みたいのか、それによっても選ぶ薬が変わってきます」と児島先生は話します。
上手に市販薬(OTC医薬品)を使い、慢性的な胃の悩みを抱えない生活をおくりましょう。