正しく使い切り、正しく捨てるための11のQ&A

“サステナブルな市販薬との付き合い方”とは?

2021.06.01 更新

SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが進む中、普段使う市販薬でも、環境にとって負担の少ない捨て方を意識したり、間違った管理でまだ使えたはずの薬を捨てたりすることは避けたい、という気持ちが広がってきているのではないでしょうか。ところが実際には、家の中にしばらく放置されて古くなった薬を見つけ、使えるのかどうか迷うこともあるかもしれません。正しく保管し、正しく使い、正しく捨てて、必要な薬は常備してセルフケアに備えておく。そんな市販薬とのサステナブルな付き合い方をご紹介します。合わせて後編では、常備しておきたい薬と正しい使い方をお伝えします。

使用期限切れの薬、使えなくなった薬の正しい捨て方は?

使用期限が切れた薬や、使えなくなった薬はどのように捨てればよいのでしょうか。一般的な、環境にやさしい薬の捨て方を見てみましょう。

Q1.

薬を捨てる時の処理はどうしたらいいの?

A1.

液体や軟膏は紙に吸わせましょう。容器や包装物は各自治体の分別方法で廃棄を

「自治体によりプラスチックゴミなどの分別が必要な場合には、薬をプラスチックの包装・容器から取り出し、薬はビニール袋に包んで封をして燃えるゴミとして、包装は燃えないゴミとして処分します。目薬やシロップといった液体状の薬はキッチンペーパーなどに吸わせ、軟膏は同じくキッチンペーパーなどに取り出してからビニール袋などで包みます。スプレーなどのエアゾール剤や噴霧剤は、説明書にしたがって火気のない屋外で容器に表示してあるガス抜き方法で中身を出し切ってから捨てます。その他、包装物や外箱、容器にはリサイクルのための識別マークが書いてあると思いますので、各自治体が定める分別方法を守って廃棄しましょう」と慶應義塾大学名誉教授の望月眞弓先生。

Q2.

薬はトイレに流してはいけないの?

A2.

薬はトイレに流してはいけないの?

水に流さず、焼却が良いとされています
(ただし各自治体のルールに従ってください)

「医薬品を含む化学物質は、下水に流すことで河川や海に生きる動物に悪影響を与える可能性があり、環境破壊の危険性から廃棄の方法が定められています。持続可能な環境を守る観点から、市販薬についても考え方としては基本的に『燃えるゴミ』に分類するのがいいとされています」と望月先生。ただし、自治体により廃棄の仕方が指定されていることもあるので、その場合はそれに沿って捨てましょう。

また、「調剤薬局では期限の切れた処方薬(医療用医薬品)などを医療廃棄物として処理することになっています。市販薬の廃棄についても、わからないことなどがあれば、かかりつけ薬局や、近所の調剤薬局に相談するのも一法です。薬局によっては、市販薬も医療用医薬品と同じように廃棄してくれるところがあります」と医薬情報研究所の堀美智子先生は話します。

参考:(コラム)薬局・ドラッグストアはもっと身近で相談できる存在へ(薬剤師・医薬品登録販売者~どんな薬のことが相談できるの?)

Q3.

使い捨てマスクを適切に捨てるには?

A3.

使い捨てマスクを適切に捨てるには?

使用済みマスクは「不衛生なもの」です。封をして捨てましょう

使用済みマスクは、原則として不衛生なものです。マスクに付着したウイルスなどから、他の人に感染を広げる可能性もあります。「廃棄業者の手に触れることがないようにする心遣いをしたいものです。マスクを外したらビニール袋に入れて封をして捨てるのが衛生上は望ましいとされています。外で外したマスクは家に持ち帰り、自らの責任で処分することも大切です」と望月先生は助言します。

「より慎重を期すなら、マスク本体には触れずにゴムの部分を持って外したものを袋に入れ、薄めた塩素系漂白剤を吹きかけて封をしてから捨てるといいでしょう」と堀先生。

家庭での正しい薬の保管法

買ってきた市販薬を家で保管する際に、間違った保管の仕方をすると薬の劣化につながり、期待する効果が得られなかったり、薬を正しく使い切れずに捨てたりすることになります。薬を安全かつ効果的に使うには、使用期限を守りましょう。また保管時は子どもや高齢者の誤飲にも注意しましょう。

Q4.

家庭での正しい薬の保管法は?

A4.

家庭での正しい薬の保管法は?

高温・多湿・直射日光を避けましょう

薬は一般的に、高温、多湿、光に弱いものです。「正しく保管しないと、使用期限内であっても効果が得られない可能性もあります。家庭で薬の品質を維持するには、直射日光を避け、湿気の少ない、涼しいところに保管すること。浴室や洗面所、台所、冷蔵庫の上などは高温多湿になりやすいので、保管場所としては避けたほうがいいでしょう」と望月先生。

「実は、薬の保管場所を決めていない家庭も意外に多く見受けられます。冷蔵庫やタンスの引き出し、食卓などに薬をバラバラに置いているケースも少なくありません。それでは、自宅にどんな薬があるのかも把握しにくいですね。お菓子の空き缶などでもよいので、"救急箱"のようなものを用意し、薬をすべて一括して管理することをおすすめします。薬の在庫がわかりやすいだけでなく、缶や箱に入れることで遮光効果も得られます」と堀先生は指摘します。

Q5.

薬は光に弱いの?

A5.

薬全般で、遮光が必要です。特に目薬は添付の袋に入れて保管を

「薬は全般に光に弱く劣化の可能性があるため、光を避けて保管しましょう。特に目薬には遮光を必要とするものがあります。目薬を買った時についている袋を、携帯用の目的だけに使うものと勘違いしている人も少なくありませんが、遮光用に添付されているものもあります。開封後の目薬は、添付の袋に入れて保管しましょう」と堀先生。

Q6.

冷蔵庫で保管したほうがいい薬とその時の注意点は?

A6.

冷蔵庫で保管したほうがいい薬とその時の注意点は?

添付文書に「冷所保管」と書いてあれば冷蔵庫へ。凍結には注意が必要です

多くの市販薬は冷蔵保管の必要はありません。「冷蔵保管しなければならない薬は、パッケージや添付文書に記載されています。例えば坐剤の中には体温で溶けるように作られていて、冷蔵保管するよう指示されているものがあります。これを室温に置くと溶けて形状が変わり、うまく挿入できなくなることもあります。まずは添付文書をよく読み、指示に従いましょう。注意が必要なのが、冷蔵庫内の保管場所です。冷蔵庫によっては、フリーザーでなくても温度が下がりすぎて薬が凍結する場所があります。そうなると薬が劣化して効果が得られなくなることもあるので霜の降りない場所での保管を」と堀先生。

また、「良かれと思い、冷蔵保管する必要のない薬まで冷蔵庫に入れる方がいますが、冷蔵保管すると取り出した時に結露し、薬が湿って劣化につながることもあります。外箱や説明書きに"冷蔵保管"と書かれていないものは、高温・多湿・直射日光を避けた室温での保管を」と望月先生。

Q7.

薬にも使用期限はあるの?どう確認すればいい?

A7.

記載されている使用期限は、あくまでも未開封の場合。開封後は半年を目安に処分を

薬にも使用期限はあります。市販薬の場合、外箱に書かれています。ただし、「外箱などに記載されている使用期限は、あくまでも未開封の時です。開封後は徐々に劣化するので、ボトルなどに入った錠剤や軟膏は開封後半年を目安に処分しましょう。一方、チューブに入った軟膏やクリーム、PTP包装(個々の薬を押し出すタイプの包装)されたカプセルや錠剤、ラミネートフィルムなどで個包装された顆粒や粉薬は、それらを包装から出さない限りは、使用期限は外箱やパッケージに記載された期限まで有効なものもあります」と堀先生。ただしその際、薬がアルミ袋(アルミピロー)に入っている場合は開封後半年を目安に処分しましょう。「薬の数が少ないものや使い切りタイプは割高のように思えても、余って捨てる可能性が低い分経済的ともいえますね」(堀先生)。

一方、使用期限内であっても使用してはいけないケースもあります。「開封後は、薬の成分は刻々と変化していくと考えてください。使用期限内であっても、最初に開封した時と比べて色が違う、手触りが変化しているといったことがあれば廃棄しましょう。判断に迷う時には薬剤師や登録販売者に相談してください」と望月先生。

こうした変化は薬の保管や使い方が原因になることも。「湿気の多いところで保管すると、ボトル入りの糖衣錠などにはカビが生える恐れもあります。汗などで濡れた手で触れた錠剤を、再度薬の入っていたボトルの中に戻すことなどが原因と考えられます。ボトル入りの薬を使う時には、一度薬をキャップに出し、出すぎた分は手で触れずに戻しましょう」(堀先生)。

Q8.

使用期限を過ぎた薬をうっかり飲まないための薬の管理法は?

A8.

使用期限を過ぎた薬をうっかり飲まないための薬の管理法は?

薬は外箱ごと保管。開封日もしっかり記載を。常備薬は年1回の棚卸しをしましょう

「薬を安全に、効果的に使用するには、使用期限を守ることが大切です。そのためには、薬を開封した時に外箱や瓶に開封した年月日を書いておきましょう。個包装されている薬は別ですが、瓶入りの錠剤などでは開封後半年、目薬は1~2カ月が使用できる目安です。未開封でも使用期限が過ぎたら廃棄しましょう」(望月先生)。

正しく管理し、無駄をなくすには、定期的な薬の"棚卸し"も大切です。「年末の大掃除の時など、少なくとも1年に1回は薬を確認し、期限切れの薬は処分し、足りないものを買い足しましょう」と堀先生。上手な管理法として堀先生がすすめるのが、チェックリストを救急箱に入れておくことです。「チェックリストには、(1)医薬品名、(2)使用期限、(3)開封年月日、((4)開封後の使用期限:記載がある場合)、(5)1年間の使用量を記入します。このリストを確認すればその家庭ごとに必要な薬の種類や量が把握できるので、次に薬を購入する際の量の目安になります。廃棄を減らすことにもつながりますよ」と堀先生。

使わないまま使用期限が切れた薬を処分するのはもったいないと思いがちですが、安全かつ効果的に薬を使うには必要なこと。「常備薬は"備えあれば憂いなし"のためのもの。使わずに済んだのはありがたいこと、と考えましょう」(望月先生)。

救急箱チェックリスト

救急箱チェックリスト

"触れる"薬の使い方、保管法

塗り薬や点鼻薬など、使用時に手や患部に触れる薬は、どのように使えば清潔に使えるか教えてもらいました。

Q9.

軟膏や点鼻薬など、肌や粘膜に触れる薬を清潔に使うにはどうしたらいい?

A9.

繰り返し指で触れないように工夫をしましょう

「軟膏は何度も繰り返し指で触れるため、雑菌が混入する機会が多くなります。まず重要なのが、使用前には手をきれいに洗うこと。そして、少しずつ何度も取るのではなく、使用する量を一度にまとめて取るようにします。チューブタイプの軟膏は、入り口付近の薬剤が清潔かどうか気になる人もいるでしょう。その際は最初に出たところを少しだけティッシュでぬぐい捨てます。点鼻薬は、まず鼻をかんでから使い、ノズルの先が鼻粘膜に触れないように噴霧します。粘膜に触れると傷がつき鼻出血の原因にもなります。点鼻薬は使用後、ティッシュでノズル部分を拭きとりましょう」と堀先生。

「口内炎のように特定の小さい部分では、綿棒は患部にピンポイントで塗りやすいというメリットもあります」(望月先生)。

"触れる"タイプの薬は変質しやすいことを踏まえ、1回使い切りタイプや小容量タイプを選ぶことも、品質保持のための賢い選択となります。

Q10.

目薬の正しい使い方は?

A10.

目薬の正しい使い方は?

目や肌に触れず、清潔に使いましょう。家族内でもほかの人との共用は避けましょう

「目薬を正しくさすには、まつ毛や目の粘膜、皮膚に触れないようにする必要があります。とはいえ、誤って触れてしまうこともあるでしょう。そうなると、ウイルスや細菌など感染源となる可能性もあります。点眼前はしっかり手を洗い、点眼薬の先端が目の粘膜やまぶた、まつ毛に触れないように注意しながらさします。そして、家族間であっても目薬の共用は避けましょう。さしたあと目からあふれた点眼液はティッシュでそっと押さえて拭きとります。また、子どもに目薬をさすのは難しいもの。嫌がって暴れると、点眼薬の先端が目の周囲に触れたり、涙で成分が流れて効果が得られなかったりすることも。そうした子どもに目薬を使う際は、眠っている時に目じりから点眼するとうまくいきますので、試してみてください」と堀先生。

Q11.

子どもやお年寄りが間違って飲みやすい薬はある?

A11.

シロップ薬をジュースと間違えて飲むことも。手の届かない場所に保管を

「甘い味のついているシロップやキャンディのように見えるトローチ剤などは子どもが間違えて口にする恐れがあります。また、普通の錠剤や軟膏でも子どもは好奇心から口に入れてしまうこともあります。薬は子どもの手の届かないところに保管することが大切です。最近は、子どもが開けづらい容器に入っている、チャイルドプルーフ包装が施されたものもあります」と望月先生。

「認知機能が低下しているお年寄りが、間違って薬を飲んでしまったという報告もあります。アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)、コデインやコデインリン酸塩(鎮咳去痰薬の成分)などは大量に飲むと命にかかわることもあります。ご家族の健康状態に応じて、不必要な薬は手に取りにくいよう保管する工夫や、大量包装のものの購入は避けたほうがよいものもあります」(堀先生)。

専門家プロフィール(あいうえお順)

堀美智子先生
医薬情報研究所、エス・アイ・シー取締役・医薬情報部門責任者。日本薬業研修センター医薬研究所所長。薬剤師。名城大学薬学部卒業、同大学薬学部医薬情報室、帝京大学薬学部医薬情報室勤務を経て、1998~2002年日本薬剤師会常務理事。98年より現職。薬局経営を行いながら、そこから得た情報をもとに一般生活者や薬剤師などへの情報提供を行う。
望月眞弓先生
慶應義塾大学名誉教授。医学博士。千葉大学薬学部卒業。日本ロシュ学術部、北里大学病院薬剤部、千葉大学大学院薬学研究科助教授、北里大学薬学部教授、共立薬科大学教授、慶應義塾大学薬学部教授・慶應義塾大学病院薬剤部長などを経て現職。
TOPへ