基本はストレッチ、痛みが出たら鎮痛消炎薬を
2025.6.30 更新
筋肉をつけるには、適切な運動が必要です。しかし、日ごろ運動をしない人が急に運動を始めたり、筋肉や関節のコンディショニングを行わずに運動したりするとケガや不調の原因にもなります。ここでは筋肉や関節を健やかに保ちながら、筋力や柔軟性(可動域)、持久力を上げるための基本的な運動と運動前後のセルフケア、筋肉痛への対処法を紹介します。
前編で紹介したように、「心(メンタル)・技(スキル)・体(フィジカル)」をバランスよく整えることをコンディショニングといいます。これを行なうには、まず“技”に当たる体の正しい使い方を身につけることが大切です。そこで早稲田大学教授の金岡恒治先生が勧めるのが、筋肉や関節、神経が協調して動くことで体に負担をかけずに動けるようになる「モーターコントロールエクササイズ」。具体的には、四つ這いになって片脚と片手を上げる「ハンドニー」や、骨盤を前傾・後傾させる「キャット&カウ」などが効果的だといいます。ある自治体では、住民がこれらのエクササイズを3カ月間続けた結果、体の使い方が良くなり、腰痛改善やプレゼンティーイズム(仕事の生産性)向上などの効果が認められました。
このほか、筋肉を意識して行うラジオ体操や、全身を使って歩くウォーキング、筋肉で関節を最大可動域まで動かすエクササイズなどもお勧めです。
また、筋肉や関節を守り、運動効果を高めるには、運動前に筋肉や関節を温める、運動後には汗冷えを防ぐ、マッサージをするなどのケアも大切です。
筋肉痛は、運動により筋線維に傷ができ、それを修復する作用がある炎症成分が出ることで痛みが生じると考えられています。筋肉はこのような傷と修復を繰り返すことで大きくなっていきます。ただし痛みが強い場合は、湿布薬や塗るタイプの鎮痛消炎薬などを使って上手に痛みを抑えて運動を続けるのも一つの手段です。
健康にとって大切な運動ですが、体の使い方が正しくないと運動の効果を得られないばかりか、痛みやケガを招くこともあります。そこで重要になるのが、筋肉や関節などをより良い状態に整えておく「コンディショニング」です。
コンディショニングの基本は前回ご紹介したように、“心(メンタル)・技(スキル)・体(フィジカル)”の3つです。これらがバランスよく整って初めて、ベストなパフォーマンスを発揮できるようになります。
それを踏まえ、具体的にどんなことを実践すればいいでしょうか。早稲田大学教授の金岡恒治先生は次のように話します。
「コンディショニングの3本柱の中の“技”から始めることをお勧めします。これは体の正しい使い方、つまり筋肉の正しい使い方を身に着けることを目的とするものです。例えば、有酸素運動の代表であるウォーキングやジョギングなどを行う場合、骨盤がグラグラ揺れたり、体幹の筋肉をうまく使えていなかったりすると、腰に余計な負担がかかって腰痛が出てしまいます。そういうことが起こらないよう、まずは体幹の筋肉と骨盤の正しい使い方を体に覚えさせましょう」
そこで金岡先生が勧めるのが、「モーターコントロールエクササイズ」です。このエクササイズの目的は、筋肉や関節、神経を互いに協調させて動かすことで、体に負担をかけない、しなやかな体の動きができるようになることです。モーターコントロールエクササイズの中で、始めやすく、効果を実感しやすい基本的なエクササイズが、「ハンドニー」と「キャット&カウ」です。
「ハンドニーは、インナーマッスル(深層筋)を鍛える体幹トレーニングの一つです。四つ這いになって、片脚と片手を挙げるエクササイズで、ヨガやピラティスなどでもよく行われるポーズです。以下の要領で行なってみましょう。
「このエクササイズで重要なのは、手と脚を上げたときに、骨盤が傾いたり、体の中心軸が左右にずれたりしないようにすることです。やってみると案外難しく感じる人も少なくないでしょう。骨盤がぐらついてしまう人は、背骨を立てるために必要な脊柱起立筋という筋肉や、お尻の筋肉(臀筋)の活動が歩行時に過剰になり、腰痛や歩行時の痛みなどを伴うことがあります。そうした方こそぜひこのエクササイズを続けください。お腹に力を入れるのが、骨盤を動かさないコツです」(金岡先生)
右は正しい姿勢、左は骨盤が傾いた姿勢
自分では真っすぐ伸ばしているつもりでも、骨盤や体が傾いていることもあります。骨盤が傾いているかどうかを確認するには、家族などに後ろから見てもらうといいでしょう。一人で行う場合には、腰の上にティッシュペーパーなどの軽い箱を載せ、エクササイズでそれが落ちてしまうかどうかでもわかります。また壁際で行なって、体が壁に触れたり、大きく壁から離れたりしていないかチェックするのもお勧めです。
「10年来の腰痛を訴えて受診した70代の女性は、当初、この動きをすると骨盤がぐらついて体をまっすぐに保つことができませんでしたが、3カ月間続けたところ、骨盤をまっすぐにした状態で脚を上げられるようになりました。そして、長年悩まされた歩行時の腰痛も改善しました。体の使い方が改善されたことで、筋肉への余計な負担がなくなり、痛みが消えたわけです。
あまり運動をしていない人がこのエクササイズを続ければ、以前より階段を楽に上がることができる、歩くスピードが早くなった、歩ける距離が伸びたなどの効果も実感できるはず」と金岡先生は話します。
もうひとつ、骨盤の動きをよくするエクササイズも紹介しましょう。
背骨を中心に、肩甲骨や骨盤周りの筋肉や関節の動きを良くするためには「キャット&カウ」というエクササイズがおすすめです。背中の柔軟性を高めることができるとともに、意識して骨盤を動かすトレーニングとしても適しています。やり方は次の通りです
「下半身の筋力アップのためにスクワットをする方も多いでしょう。これらのエクササイズは正しくスクワットを行うためにも役立ちます。スクワットでは、背中をしっかり反って骨盤を前傾させることが重要です。これらのエクササイズで自分の骨盤の位置を意識する練習をするといいでしょう。ちなみに、スクワットは日常動作の中でも行えます。例えば椅子に座るときや、洋式トイレに座るときなどです。こうした動作を行う際に、腰を途中まで下げ、そのままの姿勢を5秒ほどキープして立ち上がることを1日2、3回行うだけでも、かなりの運動量になります。日常の動作をエクササイズにするという意識も大切です」(金岡先生)
週に2、3回、「ハンドニー」や「キャット&カウ」を行い、正しい体の動かし方を身につつ、「体(フィジカル)」に当たるウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を行えばその効果が高まります。そして、スムーズかつ快適に動けるようになると「心」も安定。こうしてコンディショニングの3本柱が整っていくのです。
北海道東川町では、スポーツ庁の委託事業として、地域住民76人(平均年齢51歳)を対象に「運動機能低下に対する地域における効果的な運動療法のあり方に関する研究」を行いました。運動の内容は、先に紹介した「ハンドニー」や「キャット&カウ」などのエクササイズです。これらを3カ月間続けた結果、運動実施前に比べ、腰痛の指標は3.6から1.6に改善したほか、プレゼンティーイズム(仕事の生産性)向上などの効果が認められました。
「3カ月間という限られた期間のため、柔軟性にまでは変化が表れませんでしたが、体幹筋の使い方が良くなったことで骨盤をうまく動かせるようになり、可動域が改善しました。その結果、腰痛が改善し、仕事の能率や生産性向上にもつながったものと考えられます。正しい体の使い方という“技(スキル)”を身に着けたことで、体が本来持つ機能を発揮できるようになった。いわば眠っていた能力が目覚めたと言っても過言ではありません」と、この調査研究実行委員会のひとりである金岡先生は話します。
「これまであまり運動をしてこなかった人には、お馴染みのラジオ体操もお勧めです」と京都大学大学院医学研究科人間健康科学専攻の青山朋樹先生は話します。
「全身の筋肉のストレッチ、筋力やバランス力の強化など、ラジオ体操は様々な筋肉や関節を動かせる複合運動として優れています。朝一番にラジオ体操で体を動かすと体も温まり、1日の始まりに体を整えるコンディショニングになります。体操の効果をさらに高めるコツは、“意識して行うこと”です。例えば、今この筋肉を動かしている、ここが柔軟になっている、深呼吸をして胸郭が広がっているなど、動きごとに自分の体のパーツを意識しながら行うことでより効果が高まります。たかがラジオ体操と侮らず、真剣に行えば汗ばむことまちがいなし。全身をくまなくコンディショニングできます」
ウォーキングや水泳などの有酸素運動は「体(フィジカル)」のコンディショニングとして取り組みやすくお勧めです。血流を促進し、筋肉や関節など運動器全般の代謝が上がる作用があります。
歩くときのポイントは、腕をしっかり振り、全身で歩くという意識を持つことです。ウォーキングの前に前述の「ハンドニー」をやっておくことでバランス良くコンディショニングができます。
「続けるコツは無理をしないことです。いきなり7,000歩や8,000歩を目指すのではなく、少しずつ歩数を増やすようにしてください。例えばスマートフォンなどの機能で1週間の歩数の平均値を確認し、次の週にはその10%増の歩数を歩く方法なら無理なく続けることができます」(青山先生)
肩関節や肘関節、膝関節、股関節、指関節など、体にはたくさんの関節があります。
「関節は年齢とともに固くなって動きが悪くなりますが、その変化に少しでも抗うため、1日1回でも、関節を最大可動域まで動かしてみましょう。ポイントは、自分の筋肉を使って関節を動かすことです。例えば足の指でグー、チョキ、パーとじゃんけんをしたり、タオルを足の指でたぐり寄せる“タオルギャザー”のエクササイズをしたりするのがお勧め。筋肉を精一杯動かすことで、関節が最大限に動くことがよくわかります。ただし、無理は禁物です。痛みが出るまでは行わないようにしましょう。痛気持ちいいぐらいにとどめてください」(金岡先生)
重いものを持ち上げるときなど、「どっこいしょ」などと声が出ることがありますが、これは理にかなったことだと金岡先生は話します。
「どっこいしょと言うと、横隔膜が動き、それに連動してお腹の深部筋である腹横筋も動きます。深部筋が働くことで骨盤の動きも良くなるのです。声を出さなくても、息を吐くだけでも同じ効果が期待できます」
運動を始める前と運動をした後のケアも、コンディショニングの一つです。具体的にどんなケアをするといいでしょうか。
運動前のケアとして大切なのが、筋肉や関節を温めることだと青山先生は話します。
「十分に温めておくと、筋肉が動きやすくなります。医療機関で行うリハビリテーションでも、関節や筋肉を動かす前準備として、温熱治療器などでまず筋肉を温めるようにしています」
温める方法としては、マッサージをする、さする、パンパンと叩くなど、いくつかあります。これらの方法では、温めるだけでなく刺激を与えることで筋肉や関節などの感覚を鋭敏にする働きもあるといいます。また、冬場などは保温性に優れたサポーターや衣類も活用するといいでしょう。
一方、運動後のケアで重要なのが、運動でかいた汗をしっかり拭いて「汗冷え」を防ぐことです。汗をかいたままにしておくと、気化熱で体温が奪われてしまいます。「せっかく運動で柔らかくなった筋肉が、汗冷えによって硬くなってしまいます」と青山先生。夏場でも汗はしっかり拭くようにしましょう。
運動後のマッサージも大切です。よく使った筋肉を重点的にマッサージすると、筋肉の中の疲労物質や発痛物質が血流に乗って分散します。その際には、末梢から心臓に向けて流すようにマッサージするのがポイントです。ローラーやテニスボールなどを使うのも一つの手段です。
激しいスポーツなど、運動強度が高い場合は筋肉を冷やします。
「激しい運動をして筋肉が熱を持っているような場合は、冷たい水や氷などで筋肉を冷やしましょう。炎症を鎮め、筋肉痛がひどくならないようにする効果が期待できます。軽い運動の場合は、そこまでする必要はありません」と青山先生。
誰しも運動後に筋肉痛になった経験はあるでしょう。筋肉痛は、運動によって筋肉を構成する筋線維に小さな傷ができ、その傷を修復する際に炎症成分が集まり、痛みが生じると考えられています。筋肉はこのような傷とその修復を繰り返すことで太くなっていきます。
筋肉痛には運動中や運動直後に起こる「早発性筋肉痛」と、運動後数時間から数日後に起こる「遅発性筋肉痛」があります。「早発性筋肉痛は肉離れなど、すぐに治療が必要なケガのことです。この場合は、すぐに医療機関の受診をお勧めします。一方、遅発性筋肉痛はいわゆる筋肉痛に該当します」(青山先生)
程度の差こそあれ遅発性筋肉痛は筋肉を増やす過程で避けては通れませんが、強い痛みを感じる場合にはどのような対策があるのでしょうか。
「まずは痛む部分の局所に鎮痛消炎作用のある湿布薬を使うといいでしょう。もし関節にも炎症が起きて痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の解熱鎮痛薬を内服してもかまいません。痛いから動かないということなく、上手に薬を利用して痛みをコントロールし、運動を続けることが大切です」と金岡先生は話します。
最近の鎮痛消炎薬は、湿布やテープ剤に加え、ゲルやローションタイプなど手軽に塗れるタイプ、ニオイが無く外出時にも使いやすいタイプなど様々な剤形をシーンに応じて選べますので、ご自身のライフスタイルにあったタイプを探してみるのもいいでしょう。
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正しい体の動かし方を身につけ、運動の効果を最大限に高めてくれるのがコンディショニングです。習慣化すれば、人生100年時代のライフパフォーマンスを向上させる強い味方となります。
今日から早速、取り組んでみてはいかがでしょうか。
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