虫さされはかかずに冷やし、抗炎症作用のある外用薬を

跡を残さないためには保湿や紫外線対策が大事

2026.10.28 更新

蚊やダニなどの虫に刺されたときに、がまんが難しくつらいのが「かゆみ」です。だからといって、かきむしってしまうと跡が残ったり、細菌に感染してしまったりする恐れがあります。ここでは、皮膚をかきむしることのリスクや、かかずにかゆみを抑える対処法、跡を残さないためのセルフケアなどについてご紹介します。

<ポイントのまとめ>

虫に刺された後、避けなければならないのが「かく」ことです。肌をかくと、1. 皮膚が傷つき、さらに炎症が拡大し、虫さされの跡が残りやすくなる、2. メラニンを産生するメラノサイトが刺激され、炎症後色素沈着(シミ)になりやすくなる、3. 皮膚の奥の真皮まで影響が及び、硬く盛り上がった瘢痕(はんこん)ができることがある、4. 傷口から細菌が入り感染し「とびひ」の原因になる——など、皮膚に多様な影響があるからです。

かゆみが生じたら、「かく」のではなくまず「冷やす」ことが大切です。タオルや布に包んだ保冷剤を患部に当てる方法を、ドクターケンクリニック院長の中村健一先生は推奨します。

「冷やす」ことと同様に大事なのが、炎症をなるべく早く抑えることです。それには、かゆみ止めや、抗炎症作用のあるステロイド外用薬を塗布します。また、「かきこわし防止策もかねて、お子さんなどには虫さされパッチを貼るのも有効です」と兵庫医科大学功労教授の夏秋優先生は話します。初期の段階であれば市販薬(OTC医薬品)の外用薬で対処できるので、適切な強さのステロイド外用薬についてドラッグストアや薬局の薬剤師や登録販売者に相談しましょう。

市販薬(OTC医薬品)を数日塗っても改善しない場合や、患部がパンパンに腫れる、発熱するなどの異常がある場合は速やかに皮膚科を受診することが大切です。

皮膚のバリア機能を保ち、乾燥によるかゆみを抑えるためには、保湿も必要です。うるおいを保つことは炎症後色素沈着の予防につながります。跡を残さないためには、患部をこすって刺激しない、患部が直射日光に当たらないようにする、といった対策も必要です。

虫さされ跡の炎症後色素沈着とは

蚊やダニなどの虫に刺されてかゆみが生じると、つい皮膚をかきたくなるものです。かゆいところをかけば一時的にすっきりした気分になります。しかし、「かくことで皮膚が傷つき、虫さされ跡が残りやすくなります。最初の段階でかかないことが重要です」と、夏秋先生は話します。

代表的な虫さされ跡の一つに、刺された部位に茶色いシミや黒ずみができる「炎症後色素沈着」があります。「虫に刺されると、皮膚の中で複雑な免疫反応が起こります。その結果、メラニンを産生するメラノサイトという細胞が刺激され、さらに紫外線の影響が加わることでシミとなって現れやすくなります」と、中村先生は説明します。

虫さされによる炎症後色素沈着の大まかなメカニズムは次の通りです。
まず、虫に刺されると皮膚に炎症が起こります。その結果、アレルギー反応により、免疫細胞から放出される炎症を促す物質により、さらに様々な免疫細胞が患部に集まり、炎症が広がります。炎症の刺激から肌を守るため、真皮の中のメラノサイトという細胞が大量のメラニン(色素)を作ります。通常は炎症が治ると徐々に薄くなりますが、時間がかかることもあります。

炎症後色素沈着が起こる仕組み

「虫さされによる炎症そのものも色素沈着の要因の一つですが、皮膚をかいてしまうとその刺激によって炎症を促す物質や免疫細胞の働きが活発になり、さらにメラノサイトが活性化しやすくなると考えられます」(中村先生)。なお、「蚊に刺されたら爪でバツ印をつけるとかゆみが治まる」という俗説がありますが、「これもかくのと同様に皮膚を傷つけ、傷跡を残す要因になるので避けましょう」と中村先生は助言します。

虫さされ跡の「瘢痕(はんこん)」と「痒疹(ようしん)」とは

かゆみを我慢できずにかき過ぎてしまうと皮膚の奥の真皮まで傷つき、炎症が悪化する恐れがあります。真皮が傷つくと、その傷を埋めて修復するためにコラーゲンが過剰に産生されます。増殖したコラーゲンは不規則に固まり、硬く赤みのある盛り上がった状態になります。これを「瘢痕(はんこん)」といいます。瘢痕にはかゆみや痛みを伴わないことが多いとされています。

一方、虫さされがきっかけで、長くかきむしりを続けると、「痒疹(ようしん)」を発症する場合もあります。痒疹とは、非常に強いかゆみがあり、皮膚がポツポツと赤く盛り上がった状態になる皮膚疾患で、虫に刺されたところだけでなく、周囲の広い部分に見られる場合もありますが、とびひとは異なり、感染するものではありません。

痒疹のイメージイラスト

「虫さされによる痒疹はすねの周囲に生じることが多く、“蚊に刺された跡が全然治らなくてこうなりました”という訴えで受診される患者さんが少なくありません。きっかけは虫さされですが、かいているうちに周囲まで広がるので、ポツポツと赤い皮膚の盛り上がりが出たら受診してください」(中村先生)

虫さされのかきこわしがきっかけで起こる「とびひ」

過度のかきむしりは傷跡の要因になるだけでなく、細菌感染のリスクも高めます。代表的なものが「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」、いわゆる「とびひ」です。
「かきこわしができると、皮膚をかいたときに指や爪の間に付着している細菌が傷口から入り込みます。その細菌が出す毒素が表皮と真皮の接合部に到達すると皮膚がはがれ、ただれてジュクジュクした“びらん”になるのです。大きさは1~2cm前後のものが多く、大きいものは3~4cmに及びます。これが“とびひ”です」(中村先生)

とびひにはいくつかのタイプがあり、虫さされのかきこわしでできることが多いのは「水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)」という水ぶくれができるタイプです。水疱性膿痂疹には次のような特徴があります。

【水疱性膿痂疹の特徴】

  • ■原因となる主な菌:黄色ブドウ球菌
  • ■主な症状:
    • びらん面のまわりに小さな水ぶくれができて、さらにそのまわりが赤くなる
    • 水ぶくれや、水ぶくれの中の膿が破れてただれる
    • 水ぶくれやびらん面からしみ出る液が周囲に広がり、増殖する
    • かゆみがある
  • ■多い季節:夏
  • ■多い年齢:3歳~小学校低学年くらい
    ★運動が活発で、友達同士で触れ合う機会の多い子どもがなりやすい

とびひを予防するには、色素沈着を防ぐのと同様、かかないことです。とはいえ、お子さんの場合かいてしまうことも少なくないでしょう。そのため、感染を起こさないように、手洗いをこまめに行い、手を清潔に保つことが大切です。また、「かいて皮膚を傷つけないよう、爪は短く切っておきましょう」と中村先生。
「多くの場合、とびひは皮膚の浅い部分にとどまるため、適切な治療を行えば早くきれいに治り、瘢痕として残ることは通常ありません。治療は、抗菌薬やかゆみ止めの抗ヒスタミン薬の内服、抗生物質の塗り薬で行います。ただし、虫さされだと思い込み、市販薬(OTC医薬品)の塗り薬を塗布し続けたため、なかなか改善しないケースも見られます。市販薬(OTC医薬品)を数日使用しても水疱ができたり患部がジクジクしてきたら、まずは皮膚科を受診することが大切です」(中村先生)
また、とびひは伝染力が強いので、ほかの子どもにうつさないための対策も重要です。ガーゼなどで患部を覆い、できるだけ他人との接触を避けましょう。プールや水泳は人にうつす可能性が高いので、とびひが完全に治るまで禁止するよう、日本臨床皮膚科医会、日本小児皮膚科学会が共同で統一見解を出しています※1。

小学生の男の子のすねに「とびひ」。30代のお母さんが絆創膏を貼りながら、「プールは治ってからね」と話しかけている。

※1 日本臨床皮膚科医会・日本小児皮膚科学会「学校感染症 第三種 その他の感染症:皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」

(topics)基礎疾患がある人は蜂窩織炎(ほうかしきえん)に要注意

糖尿病や慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣病や、免疫を抑える薬を服用している人は、免疫機能が低下し、細菌に対する抵抗力も弱い状態にあります。そのため、皮膚のかきこわしがあると傷口から細菌が入り込み、急性の炎症を起こしやすくなります。代表的な疾患として、蜂窩織炎(ほうかしきえん)が挙げられます。

蜂窩織炎とは、皮膚内の真皮の下にある皮下脂肪組織に侵入した細菌による感染症です。「かいているうちに、腕やすねがパンパンに腫れて痛みがひどくなってきた、と訴える糖尿病の患者さんが少なくありません」と中村先生が話すように、すねやふくらはぎ、片腕などを中心に次のような症状が現れます。

  • 境界がやや不明瞭な皮膚の赤みが出て、急速に広がることもある
  • 感染部位が腫れてふくれあがる。すねやふくらはぎはパンパンになりやすい
  • 局所が熱を持つ
  • 押すと強く痛む。痛みで歩行が困難になることもある

また、全身症状として高熱や倦怠感、食欲低下、頻脈、血圧低下、リンパ節の腫れなどが現れる場合もあります。放置すると敗血症など重篤な合併症を引き起こす恐れがあるので、患部の腫れや、発熱などがある場合には、速やかに皮膚科を受診しましょう。抗菌薬の内服や点滴による治療が行われます。

椅子に座り、すねを見ている小太りの60代男性。片方のすねが赤く腫れ上がっている。男性も発熱していて顔が赤い。

かゆくなったらまず冷却、虫さされパッチも有効

これまで説明してきた通り、皮膚をかくことには多くのリスクがあります。虫に刺されてかゆみを感じても、かくのはぐっとこらえましょう。かく代わりに行うべきなのが「冷却」です。冷やすことで血管が収縮し、かゆみや腫れが和らぎます。

手軽な方法としては、流水で冷やす、またタオルや布に包んだ保冷剤を患部に当てて冷やすといった方法があります。保冷剤を直接皮膚に当てると、皮膚が冷え過ぎてやけど(凍傷)などを起こす恐れがあるので、必ずタオルなどで包むことが大切です。冷やした濡れタオルや冷たいペットボトルを当てるのもよいでしょう。また、長時間冷やし過ぎるのも、皮膚にダメージを与える要因になります。冷やす時間は1回10~15分程度を目安にしましょう。

ただし、子どもはじっと冷やし続けるのが難しいものです。「その場合には患部に絆創膏を貼ると、かきこわしの予防につながります。抗炎症成分やかゆみを抑える成分が配合された、市販薬(OTC医薬品)のかゆみ止め用のパッチを貼るのもよいでしょう」(夏秋先生)。

中学生の女の子が腕の虫さされにペットボトルをあてて冷やしている。

初期のかゆみには抗ヒスタミン剤配合外用薬を

炎症を速やかに抑えるには、かゆみ止めの外用薬を塗布します。
「即時型反応で、刺されてかゆみが出た直後であれば、ステロイドを含まない抗ヒスタミン剤配合の市販薬(OTC医薬品)の外用薬でも効果を期待できます」(中村先生)
市販薬(OTC医薬品)の外用薬に含まれる抗ヒスタミン成分には次のようなものがあります。

  • ジフェンヒドラミン塩酸塩
  • クロルフェニラミンマレイン酸塩

また、局所麻酔成分のリドカインやアミノ安息香酸エチルといった成分が配合された製品もあり、それらもかゆみを抑える作用があります。

虫さされによる赤みや腫れにはステロイド外用薬

「素早く炎症を抑えるためには、抗炎症作用のあるステロイド外用薬が向いています。早めに使用するのがおすすめですが、特に虫に刺された部位が赤く腫れている場合はステロイド配合の外用薬がいいでしょう」と中村先生。

ステロイド外用薬は強さにより最も強力な「ストロンゲスト」から弱い「ウイーク」の5段階に分けられています。市販薬(OTC医薬品)のステロイド外用薬にはその中の真ん中の強さの「Strong(ストロング):強い」、「Medium(ミディアム):普通」、「Weak(ウイーク):弱い」の3段階のものがあります。「効き目の強いストロングを早い段階から使ったほうが、虫さされによる赤みや腫れがスムーズに治まる可能性があります。副作用を気にされる方も少なくありませんが、短い期間で、用法・用量を守り正しく使えば、子どもに対しても強いタイプの外用薬を使えます」(中村先生)。子どもに使用する場合も、市販薬(OTC医薬品)のステロイド外用薬を購入する際は、薬剤師や登録販売者に相談した上で適切な薬を選び、用法、用量を守ることが大切です。症状に応じてステロイドとともにかゆみ止め成分や抗菌成分が配合されているOTC医薬品外用薬を選ぶこともできます。

ただし、患部がパンパンに腫れたり、ジュクジュクして化膿したり、かきこわしている場合などは皮膚科を受診しましょう。「感染を起こしていたら、ステロイド外用薬の強さの調整に加え、抗菌薬による治療を行います」(中村先生)

虫さされ跡を残さないためのセルフケア3ヵ条

虫さされでは、かかずに冷却し、外用薬で適切な処置を行うことが第一ですが、跡を残さないためにはさらに次の3つも大切です。

1. 皮膚をこすらない・触らない

顔や体をゴシゴシ洗う、タオルで強く拭き取る、といった何気ない行為で皮膚をこすっていることは意外に多いものです。皮膚をこすると摩擦刺激によってバリア機能が低下し、肌荒れや色素沈着を起こす要因になります。「時々、できたシミを消したいからとスクラブ剤でマッサージしたりする人がいますが、かえって悪化させることになりかねないので避けましょう。虫に刺された部位は特にこすらないよう気をつけましょう。また、むやみに手で触るのを避けることが大事です」(中村先生)

2. 紫外線から刺された部位を守る

虫に刺された部位に直射日光が当たると、紫外線による刺激で炎症が悪化したり、メラノサイトが刺激されて色素沈着を引き起こしたりします。刺された部位は衣服やテープ(ばんそうこう)などで覆い、日焼け止めを塗るなど、日光を直接浴びないようにしましょう。

3. 保湿ケアをしっかり行う

「皮膚の乾燥が進むとバリア機能が低下し、表皮がめくれあがりやすくなります。そのためにかゆみを感じやすくなり、かくことでさらに皮膚が傷ついて炎症が進行し、色素沈着もしやすくなる、という悪循環に陥りがちです。こうした状態を防ぐためにも保湿ケアが重要です」(中村先生)
かゆみを抑えるために、症状に合ったステロイド外用薬を塗布した後などは特に、バリア機能を維持するためにも保湿ケアが欠かせません。乾燥を防ぐため、保湿剤などで肌のうるおいを保ちましょう。
保湿剤にはローションやクリーム、乳液、スプレーなど多様なタイプがあるので、自分の好きな使用感のものを選ぶのがおすすめです。

「いずれの保湿剤も、塗布した後、皮膚にティッシュペーパーがペタッとくっついて落ちないくらい、たっぷりの量を使うのがポイントです」(中村先生)乾燥によるかゆみを防ぐ主な保湿成分には次のようなものがあるので、保湿剤を選ぶときの参考にしましょう。

  • ヘパリン類似物質:保湿、血行促進、抗炎症作用がある。皮膚科で処方される保湿剤にも多く用いられる
  • セラミド:皮膚のバリア機能を守り、うるおいを保つ
  • ヒアルロン酸:強い保水力を持ち、うるおいを保持する
  • ワセリン:油分で肌の表面を覆い、水分の蒸発を防ぐ

腕の虫さされのケアをしている40代女性。テーブルの上にはステロイド(ベトネベートクリームSのイメージの色合いhttps://www.daiichisankyo-hc.co.jp/products/details/betnevate_cream/)が置かれ、保湿剤(ミノン全身保湿ミルクのイメージの色合いと形状でにhttps://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_minon-body/product/ds-milk.html )を塗り重ねている。

(topics)虫さされ跡の色素沈着と紫外線によるシミは違うもの?

虫さされ跡の色素沈着は一過性のもので、時間の経過とともに自然と目立たなくなっていきます。一方、紫外線によるシミは医学的には老人性色素斑といわれます。長年にわたって皮膚に蓄積された紫外線のダメージと加齢が原因で生じるもので、一度できると自然には消えません。「適切な対処やケアできれいに治せるのが、虫さされの特徴の一つといえます」と中村先生は強調します。

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専門家プロフィール(2026年9月取材時、あいうえお順)

中村健一先生
ドクターケン クリニック院長
信州大学医学部卒。宇治徳洲会病院、北里大学皮膚科、聖路加国際病院皮膚科を経て、1993年におゆみの皮フ科医院を開業。2018年に移転、現医院名に変更。
夏秋優先生
兵庫医科大学功労教授 (皮膚科学非常勤講師)
カリフォルニア大学サンフランシスコ校皮膚科研究員、大阪府済生会吹田病院皮膚科医長、兵庫医科大学皮膚科学教授などを経て2025年より現職。衛生害虫による皮膚疾患、皮膚疾患の漢方治療に詳しい。自らが実験台になり、様々な虫に刺されて記録した虫と皮膚炎の臨床像が網羅的に記録された著書『ポケット版 Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(Gakken)などを執筆。
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