蚊、ダニに刺された後のかゆみ、個人差がある理由とは
2026.10.28 更新
毎年多くの人が悩まされる蚊やダニによる虫さされ。刺された後のかゆみや赤みに困った経験がある人も多いのではないでしょうか。どうして虫に刺されると皮膚症状が起こるのか、日本で刺されやすい蚊とダニの種類や特徴、刺されないための対策・注意点を解説します。
蚊に刺されたときのかゆみは、蚊の唾液腺物質に対する体のアレルギー反応によって起こります。「アレルギー反応には、刺された直後に症状が出る『即時型』と、刺された翌日以降に症状が出る『遅延型』があり、反応の現れ方は刺された頻度や体質、年齢などによって異なります」と、兵庫医科大学功労教授の夏秋優先生は説明します。初めて蚊に刺された赤ちゃんは症状が出ないことが多く、乳児期から幼児期にかけては遅延型反応、幼児期から青年期にかけては遅延型反応と即時型反応、青年期から壮年期は即時型反応が起こり、老年期は症状が出ないというのが一般的な皮膚の反応です。
日本の夏に多い蚊には、夜間に寝室などで刺されやすい「アカイエカ」と、日中の屋外で刺されやすい「ヒトスジシマカ」があります。蚊に刺されないようにするには、就寝中や屋外での活動時にできるだけ肌の露出を控えることが大切です。寝室では、就寝前に電子蚊取りや空間噴射式殺虫剤で処置を行うのが効果的。屋外では、「ジエチルトルアミド(ディート)」や「イカリジン」が配合された忌避剤の活用が有効です。
一方、ダニは蚊のように頻繁に刺されることはあまりないため、多くの場合、遅延型反応が起こります。つまり、刺された翌日~翌々日に皮膚症状が現れます。ヒトを吸血する「イエダニ」はネズミに寄生します。そのため、ネズミが巣を作りやすい天井裏や床下のある古い一戸建てなどでは、ネズミの巣の駆除やイエダニの室内への侵入ルートに殺虫剤を噴霧するといった対策が良いでしょう。
実は、布団や畳、じゅうたん、カーペットなどにいるコナダニやヒョウヒダニはヒトを刺しません。しかし、まれにこれらのダニを捕食する「ツメダニ類」が偶発的にヒトに触れて刺されることで皮膚症状が現れる場合があります。この連鎖を防ぐには、部屋を乾燥させてしっかり清掃し、コナダニやヒョウヒダニの発生を防ぐことが大切です。また、ダニ用殺虫剤による室内の燻煙処置も効果的です。

虫さされによる皮膚炎には、次の3タイプがあります。
蚊やダニに刺されたときなどのかゆみや腫れは、(1)のアレルギー性の炎症反応によるものです。「蚊やダニは、ヒトの皮膚に口先を突き刺すときに唾液腺物質(抗原、アレルゲン)を注入します。唾液腺物質には血が固まらないようにする物質が含まれているためスムーズに吸血できるのです。一方、体の中に虫の唾液腺物質が入ると初回は何も起こりませんが、免疫細胞がそれを異物(抗原)と認識するようになると、同じ物質が体内に入ってきた時にそれを攻撃して排除しようとして強い免疫反応が起こるのです。その結果、皮膚にかゆみや赤みなどの症状が現れます」と、皮膚症状やアレルギーなどを起こす虫の対策や治療に詳しい夏秋先生は話します。
体には異物から体を守るための免疫機能があります。
体が蚊の唾液腺物質を抗原(アレルゲン)と認識すると、体はそれを排除しようとして免疫反応を起こし、その結果としてかゆみや赤みなどのアレルギー反応を引き起こします。アレルギー反応には、刺されてから5~30分程度で症状が出る「即時型」と、刺された翌日以降(24~72時間後)に症状が出る「遅延型」があります。

「蚊に刺されたときの症状の現れ方は、刺される頻度や体質、年齢などによって異なります。例えば、初めて蚊に刺されたときはアレルギー反応が起こらないので、生まれて初めて蚊に刺された赤ちゃんにはかゆみや赤みなどの皮膚症状は現れません。
その後、乳児期から幼児期にかけて何度か刺されると、体が蚊の唾液腺物質を抗原(アレルゲン)と認識し、遅延型反応が現れるようになります。さらに幼児期から青年期にかけて何度も刺されると、遅延型反応に加えて即時型反応が出現するようになります。青年期から壮年期にかけて蚊に刺されるのを繰り返すうちに即時型反応だけが現れるようになり、老年期には蚊に刺されても症状が出ない状態へと変化していきます」(夏秋先生)
| ステージ | アレルギー反応 | 日本人に認められやすい時期(年齢) |
|---|---|---|
| ステージ1 | 症状が出ない | 新生児期 (生後28日未満) |
| ステージ2 | 遅延型反応のみ (刺された翌日にかゆくなる) |
乳児期~幼児期 (1歳未満~6歳未満ごろ) |
| ステージ3 | 即時型反応および遅延型反応 (刺されてすぐにかゆくなり、一度治まるが、翌日以降にまたかゆくなる) |
幼児期~青年期 (6歳ごろ~20歳代) |
| ステージ4 | 即時型反応のみ (刺されてすぐにかゆくなるだけ) |
青年期~壮年期 (20歳代~60歳ごろ) |
| ステージ5 | 症状が出ない | 老年期 (65歳以上) |
(出典:夏秋優、『ポケット版 Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(Gakken)を元に作成。年齢の表記はおおよその目安)
ただし、「これは毎年夏場に蚊に刺されることが多い日本人の一般的な傾向です。しょっちゅう蚊に刺される人は若くても即時型反応のみのステージ4に進む場合もあります。逆にめったに刺されない人はステージがあまり進まないなど、個人差が大きいのも特徴です」と夏秋先生は指摘します。

刺される蚊の種類によっても、皮膚症状の現れ方に違いがあります。
日本人が刺されやすい代表的な蚊には「アカイエカ」と「ヒトスジシマカ」があります。
それぞれの主な特徴を下表にまとめました。
| 蚊の種類 | アカイエカ | ヒトスジシマカ(ヤブカ) |
|---|---|---|
| 生息場所 | 下水溝、防水用水槽、雨水ますなど。しばしば室内に侵入 | 家の周辺、公園、墓地、雑木林など。 人の出入り時に室内に侵入することもある |
| 出現時期 | 早春~晩秋。屋内では冬に出ることもある(成虫で越冬) | 5~10月。温暖な南西諸島などではさらに長期(卵で越冬) |
| 吸血する時間帯 | 主に夜間 | 主に日中 |
| 刺されやすい部位 | 顔、首、上半身などの、夜間に肌を出している部分
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顔、首、上半身、下半身の肌を出している部分
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| 刺されたときの主な症状 |
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(出典:夏秋優、『ポケット版 Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(Gakken)を元に作成)
「アカイエカとヒトスジシマカの唾液腺物質は異なるため、アカイエカに刺されると即時型反応が出る人でも、ヒトスジシマカでは遅延型反応が出る場合もあります」(夏秋先生)
蚊に刺されないためにはどうしたらよいのでしょうか。アカイエカの多い屋内と、ヒトスジシマカの多い屋外とで、それぞれの対策が必要です。
主に屋内で刺されることが多いアカイエカは夜間に吸血する性質があります。そのため、就寝時は長袖、長ズボンのパジャマなどで手・足・首などの肌をカバーし、なるべく露出しないようにしましょう。加えて、就寝前に電子蚊取りや空間噴射式殺虫剤で寝室の蚊対策を行うことも大切です。
「飛び回っている印象がある蚊ですが、ほとんどの時間を壁などに止まって過ごしています。ワンプッシュタイプの空間噴射式殺虫剤を噴霧しておくと殺虫作用のある成分が寝室全体に広がり、壁に止まっている蚊の駆除に役立ちます。使い方は殺虫剤の説明書に記載されている指示を守ってください」(夏秋先生)
屋外では、肌の露出を控えると同時に虫除け剤である忌避(きひ)剤を活用したり、携帯用の電池式蚊取りや携帯用の蚊取り線香などを活用したりするといいでしょう。
「忌避剤の成分には、「ジエチルトルアミド(ディート)」と「イカリジン」の2種類があります。それぞれの特徴を下の表にまとめました。「ジエチルトルアミド(ディート)」は6カ月未満の乳児には使えず、年齢により使用回数が決められています。お子様の場合には年齢による使用制限がない「イカリジン」が使いやすいでしょう」と夏秋先生。
| 忌避剤の成分 | ジエチルトルアミド (ディート) |
イカリジン |
|---|---|---|
| 忌避剤に配合されている濃度と主な剤形、特徴 |
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| 忌避効果の持続時間(商品による差がある) | 10%で3~4時間、30%では5~8時間 | 5%で3~4時間、15%では5~8時間 |
| 小児に対する使用および回数制限 |
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年齢による使用・回数制限はなし。ただし、製品の使用方法に従う |
| その他 |
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(監修:兵庫医科大学、夏秋優先生)
忌避剤を使用する際には、このほかにも注意点があります。まず、日焼け止め剤を併用する場合は、先に日焼け止め剤を塗り、その上から忌避剤をムラなくしっかり塗りのばします。汗で薬剤が流れ落ちたら、こまめに塗り直しましょう。
「エアゾールやミストの忌避剤は顔や首に直接噴霧すると、目や鼻、のどの粘膜を刺激する可能性があります。直接噴霧は避け、いったん手のひらに噴霧してから手で塗りのばすのがおすすめです。なお、ジエチルトルアミド(ディート)はイカリジンに比べて揮発性が高く、刺激性もあるので目や鼻のまわりへの使用は避けたほうがよいでしょう。個人的には首から上はイカリジン、手足などはジエチルトルアミド(ディート)、と使い分けています」と夏秋先生はアドバイスします。
いずれも製品に記載されている用法・用量を守ることが大切です。

蚊は、人の呼気中の二酸化炭素や汗、体温などを目印に寄ってきます。「汗に含まれる乳酸や、皮膚の常在菌が汗や皮脂を分解するときにつくられる物質が、蚊を強く引き寄せるとされています。特に足の裏では常在菌が繁殖しやすく、蚊を誘引する物質がつくられやすいので、蚊に刺されるリスクが高まります。汗拭き用のボディシートやアルコール配合の除菌用ウエットシートなどで足の裏も含めて汗をしっかり拭き取ると常在菌が一時的に減少し、虫さされ予防につながります。ただし、人が感じるニオイと蚊が好むニオイは別です」(夏秋先生)
また、蚊は視覚的に黒や紺などの暗めの色に引き寄せられる性質があります。なるべく白やベージュなどの明るめの衣服を着るのも対策の一つです。
ダニによる虫さされも、蚊と同じように身近で悩みを抱える人が多い皮膚症状の一つです。ただし、「ダニに刺されている現場を確認することは難しいうえ、皮膚症状を見てもダニによるものかどうか診断の確定が困難な面があります」と夏秋先生は話します。
また、一般に、布団や畳、カーペット、じゅうたんなどに潜んでいるダニに刺されるイメージがありますが、こうした場所にいるダニは主に「コナダニ」や「ヒョウヒダニ」で、ヒトを刺して吸血するダニではありません。コナダニやヒョウヒダニは鼻炎や喘息、皮膚炎などを引き起こすダニアレルギーの原因で、コナダニやヒョウヒダニのフンや死骸が抗原(アレルゲン)となるのです。
家でヒトを刺して吸血するダニは「イエダニ」です。これはネズミに寄生するダニで、天井裏や床下のネズミの巣やその周辺から室内に侵入します。古い一戸建てや、そうした建物が密集する環境で生活している場合には、イエダニに刺されるリスクがあります。逆に、マンションの高層階などでの発生はまれです。
なお、前述のコナダニやヒョウヒダニはヒトを刺しませんが、これらのダニを捕食して生活する「ツメダニ類」が偶発的にヒトに触れて偶発的に刺すことで皮膚症状が現れる場合があります。いずれにしても、虫さされの原因がイエダニなのかツメダニ類なのか自分で見分けるのは難しいものですが、それぞれの主な特徴について知っておくとよいでしょう。
| ダニの種類 | イエダニ | ツメダニ類 |
|---|---|---|
| 生息場所 | 天井裏や床下のネズミの巣やその周辺 | 畳、じゅうたん、カーペット、布団 |
| 出現時期 | 5~10月。高温多湿の6~8月が特に活発 | 春~秋。高温多湿の6~8月が特に活発 |
| 吸血の有無 | 吸血する | 吸血しない。皮膚に触れると偶発的に刺すことがある。 |
| 刺されやすい部位 | 下腹部、わきの周り、腰、太ももの内側など、衣類に覆われた柔らかい部位
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背中や腹部、両腕、太ももなど布団や畳に体が接触する部位
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| 刺されたときの主な症状 |
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(出典:夏秋優、『ポケット版 Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』(Gakken)を元に作成)
日本人の多くは毎年夏がくると蚊に刺されることで、成長する過程で即時型反応が出やすくなります。一方、一般的にダニに刺される機会はそれほど多くありません。このため、「ダニに刺されて即時型反応が起こる人はあまりいません。よほど頻繁にダニに刺されている場合は別ですが、多くの場合は遅延型反応で、刺された翌日や翌々日に皮膚症状が現れます」(夏秋先生)。
ダニ対策の基本は、ダニの発生源を除去することです。

「寝具やソファ、カーペットなどに噴霧するタイプのダニ防除用スプレーは、イエダニだけでなく、コナダニ類やヒョウヒダニ類、ツメダニ類、ノミなどにも有効です」(夏秋先生)
マダニが媒介するウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の国内での患者数が近年増加傾向にあるというニュースを耳にした方も多いのではないでしょうか。SFTSは、SFTSウイルスを保有するマダニを介して感染する感染症です。マダニに直接刺されるほか、感染した犬や猫との接触で感染した症例も報告されています。厚生労働省によれば、SFTSの日本における致死率は20~30%で、その致死率の高さから不安を感じることも多いでしょう。
しかし夏秋先生は、「患者数が増えているといっても、実際にマダニに刺されてSFTSを発症する確率はとても低いと考えられます。また、マダニが生息するのは主に山間部の雑木林や畑です。そうした場所で活動しない人は、マダニに刺される機会はまずありませんから、心配しすぎる必要はないでしょう」と指摘します。
マダニは、登山やキャンプ、畑仕事といった野外での活動中に衣服に付き、衣服のすき間から侵入して皮膚に食いつきます。いったん食いつくとそのまま離れずに数日間にわたり吸血し続け、次第に腹部が大きくなっていきます。「マダニに刺されたときに最も重要なのが、自分で無理に引き抜かないことです。引き抜くとマダニの口が皮膚に残り、炎症や化膿を起こすことがあります。慌てずに皮膚科や形成外科を受診し、医師に取ってもらうのがいいでしょう。また、マダニの除去後1~2週間は急な高熱や腹痛、下痢などの症状に注意し、異変があれば早めに医療機関を受診してください」(夏秋先生)。

マダニに刺されないためには、野外活動時は帽子、長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を避けること、ズボンの裾を靴下の中に入れるなどした上で足元を中心に忌避剤を噴霧することが必要です。また、マダニが付着しているのを発見しやすくするためには、明るい色の衣服を身につけることも役立ちます。家に帰ったら、頭から足の先まで、マダニがついていないか確認するようにしましょう。