スマホ老眼、スマホ内斜視、ドライアイの3タイプ
2026.1.9 更新
スマートフォン(スマホ)やパソコンの使用が欠かせない現代生活では、ディスプレイを見る時間も長く、それに伴って目の不調を訴える人が増えています。デジタルデバイスの過度な使用で起こる不調を「デジタル眼精疲労」といいます。ここでは、デジタルデバイスが視覚機能や健康に及ぼす影響をひもとき、デジタル眼精疲労の3つのタイプと具体的な症状について解説します。
職場や学校、家庭などで日常的に接する機会が増えたスマートフォン(以下、スマホ)やパソコン、タブレットなどのデジタルデバイス。インターネット利用率は1997年から2022年までの25年の間で急増し、84.9%に達しています。その一方で課題になっているのが、デジタルデバイスの長時間使用により起こる「デジタル眼精疲労」です。特に新型コロナ感染症の感染拡大以降、リモートワークやオンライン授業などが普及し、デジタルデバイスの利用が拡大したことに伴い、不調を訴える人が増えていると専門家は話します。
具体的な症状は、目が疲れる、ぼやける、しょぼしょぼする、涙が増える、頭痛がする、などです。デジタル眼精疲労には、主に3つのタイプがあります。一つはピント調節がうまくいかないタイプで、「スマホ老眼」といわれる症状が起こります。二つ目は小さな画面を注視し続けているうちに片方の目が内側に寄ってしまう「スマホ内斜視」。三つ目はまばたきが減ることで起こる「ドライアイ」です。これらは特に成長過程にある子どもへの影響が大きいと指摘されています。今や生活する上でなくてはならない存在になったデジタルデバイス。目や脳への負担が過度にならないよう、上手に付き合っていきましょう。
今や私たちの生活になくてはならないのが、スマホやパソコン、タブレットなどのデジタルデバイス。職場や教育の場はもちろん、家庭や街中どこにいても日常的に接する機会が増えています。総務省の調査によると、2022年のインターネット利用率は84.9%で、この25年で急激に増加しました※1。デジタルデバイスの中でも利用が多いのがスマホです。インターネット利用端末としての利用率は71.2%で、パソコンでの利用率の48.5%を大幅に上回っています(グラフ2)。

このように、私たちは生活のあらゆる場面に情報通信技術(ICT)が浸透した社会に生きています。そうした状況で大きな課題になっているのが、デジタルデバイスの長時間使用による眼精疲労です。厚生労働省が15年以上前に、パソコン利用の急速な広がりに危機感を抱いて実施したVDT(Visual Display Terminal:ビジュアル・ディスプレイ・ターミナルの略で、スマホやパソコンなど画面と入力装置を持つ機器の総称)作業をしている労働者を対象にした調査では、「VDT作業で身体的な疲労や症状がある」と答えた人は68.6%。このうち具体的な症状として最も多かったのが、「目の疲れ・痛み」(90.8%)でした※2。スマホが本格的に普及する前ですら、眼精疲労は深刻な状態になっていたのです。

デジタルデバイスの視覚への影響に詳しい国際医療福祉大学保健医療学部教授の原直人先生は次のように話します。
「現代は子どもから大人まで、誰もがデジタルデバイスに接しながら生きています。その背景にあるのが、スマホの急激な普及、新型コロナ禍以降のリモートワークやオンライン授業の拡大、GIGAスクール構想(注1)など、ICT化社会の加速です。このような状況に伴い、眼精疲労や肩・首のこり、腰痛、めまい、不眠などの不調を抱える人が多くなっているのです」
注1:GIGAスクール構想
全国の児童・生徒に1人1台のパソコンと、高速大容量の通信ネットワーク環境を整備する文部科学省の取り組み。2019年から開始。
また、ドライアイによる眼精疲労に詳しい伊藤医院眼科副院長の有田玲子先生も、昨今の状況をこう話します。
「最近は眼精疲労を訴えて受診する患者さんがとても増えています。以前は40代以降の方に多かったのですが、このところ若い年代でも増えており、10代の方も珍しくありません。この傾向は新型コロナ禍以降、特に顕著です。スマホやパソコンなどデジタルデバイス利用の長時間化が、一番の原因と考えられます」
パソコン作業などで生じる諸症状は、日本では以前から「VDT症候群」と呼ばれてきましたが、原先生によると、米国では目の症状により特化した「デジタル眼精疲労(Degital Eye Strain)」という名称が一般的に使われているそうです。さらに近年は、スマホも含めたデジタルデバイス使用による眼精疲労を中心とした健康障害を「コンピューター・ビジョン・シンドローム(CVS)」と呼ぶことが多くなっているといいます。「年齢に関わらず、スマホやパソコン画面に日常的に接している現代において、CVSは生活習慣病の一つともいえます」(原先生)
CVSでは、目の乾きや痛み、ぼやけ、頭痛などの眼精疲労だけでなく、首や肩こり、背中のだるさ、肩から腕の痛み、手指のしびれなどの筋骨格系症状、めまいやイライラ、抑うつ、不眠などの精神・神経症状も表れてきます。「これは、CVSが目への負担(視覚負担)に加え、筋骨格系負担、精神神経負担が相まって起こるからだと考えられます」(原先生)
「単なる目の疲れと眼精疲労の違いは、一晩しっかり休むと翌日には改善するかどうかです。眼精疲労になると症状が慢性化し、朝起きても目は疲れたままで心身の不調も伴いがちです」と有田先生は話します。

あなたはいかがでしょうか。思い当たる症状がないか、まずはチェックしてみましょう。
当てはまる項目が多いほど、デジタル眼精疲労が進んでいると考えられます。
(監修:伊藤医院、有田玲子先生)
眼精疲労には、いくつか種類があります。その代表的なものが、「調節性眼精疲労」、「筋性眼精疲労」、「症候性眼精疲労」の3つです。それぞれについて説明しましょう。
私たちの目はものを見るとき、その距離に応じて自動的にピントを合わせています。このとき目の中で重要な役割を果たしているのが、カメラのレンズに相当する水晶体と、それを動かす毛様体筋です。例えば手元のものを見るときは、毛様体筋がぎゅっと収縮して水晶体を厚くすることで光の屈折率を変え、近くにピントを合わせています。これを「調節」といいます。
パソコンやスマホを長時間見続けていると、ピント合わせの筋肉である毛様体がずっと収縮し続け、緊張を強いられている状態になります。つまり、近くを見る時間が長くなるほど毛様体は疲れ、眼精疲労につながるのです。ちなみに遠くを見るときは毛様体筋が緩み、水晶体が薄くなります。毛様体は緊張を解かれているので、疲れずにすみます。

デジタルデバイスの長時間使用によって、近年、若い人でも調節力が低下してどこにもピントが合わないケースが多くなっています。これがいわゆる「スマホ老眼」です。そもそも「老眼(正式には老視)」とは、近くにピントを合わせる調節力が加齢によって低下した状態のことで、「スマホ老眼」とは違う症状。「老視」では水晶体が硬くなったり、毛様体筋の働きが弱くなったりして調節力が低下することで、近くが見えにくい、ピントがすぐに合わない、目が疲れるなどの症状が現れます。一般的に「老眼」は40代ごろから始まると言われています。
一方、「スマホ老眼」では加齢による影響はなく、スマホなど近くばかりを見続けているうちに毛様体が疲弊し、一時的にピントが合わなくなってしまうのです。「スマホ老眼の場合は、まだ水晶体が硬くなっていないので、近くを見る時間を減らしたり、なるべく遠くを見たりして生活や環境を変えれば、目の疲れを減らすことができます。老眼やいわゆる「スマホ老眼」の症状は、眼鏡やコンタクトレンズで適切に度数を合わせることで改善します」と原先生はアドバイスします。
スマホ画面などを注視するとき、目は「近見反応」と呼ばれる3つの状態を呈しています。一つは毛様体を緊張させてピント合わせをすること。もう一つは、両目の視線を一点に集めようと寄り目になること(輻湊:ふくそう)です。そしてもう一つが、対象を鮮明に見るために瞳孔が縮む「縮瞳(しゅくどう)」です。これらの反応が同時に起こることで、近くのものをより快適に見ることができるわけです。
「実は、この近見反応が起こっているとき、脳では前頭葉や側頭葉、頭頂後頭連合野など、複数の脳領域が協調して情報処理が行われています。つまり、スマホなどの画面を見過ぎて眼精疲労が起こっている状態は、目だけでなく脳が働きすぎて疲れている状態といえます」と原先生は説明します。
スマホは画面が小さい分、近見視による負担が大きくなりがちです。例えばパソコンを見るときの距離は40~50cmですが、スマホになると約20cmと言われています。またパソコン作業時は画面とキーボード、手元の資料と、視線が行ったり来たりして異なる近見反応を繰り返しますが、スマホの場合は小さな画面と細かい文字を凝視し続けるため、極めて至近距離での近見反応が持続されます。長時間のスマホ使用は、目だけでなく、脳にも負担が大きいわけです。
主に斜視からくる眼精疲労を筋性眼精疲労といいます。斜視とは右目と左目の視線がそれぞれ異なった方向を向いている状態のこと。最近問題視されているのが、スマホなどの長時間使用によって起こる斜視です。
これは、目が内側に寄ったまま戻らなくなり、遠くのものが2つに見えたり、眼精疲労が強くなったりする “内斜視”で、「スマホ内斜視」と呼ばれています。
「韓国で1日4時間以上スマホを過剰に使っていた若者が内斜視になり、使用時間を1時間程度に減らしたら症状が改善された。そんな報告が2016年にありました※3。そのころから、スマホ内斜視と呼ばれるようになり、注意が呼びかけられています。ただ、どうしてそのような状態になるのか、詳しい機序はまだわかっていません。一つの理由としてスマホに限らず、近見視が持続することで、寄り目の状態が固定化してしまうのではないかと考えられます。
内斜視となってしまう可能性がある期間は、だいたい7歳くらいまでと報告されています。この時期までに3D映像や立体的なゲームを長時間見ると、寄り目(内斜視)の傾向が強まることがあります。また、空間の位置関係を認識する脳の頭頂葉は12歳ごろまで成長を続けるため、その前にVRなどの仮想空間を頻繁に見ることは、立体視や両眼視の発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
子どもは目の疲れを「眼精疲労」と自覚したり、言葉で伝えたりすることが難しいものです。そのため、保護者の方がスマートフォンの使用時間が長くなりすぎないように気を配り、屋外で遠くを見る時間を意識的に増やしてあげることが大切です。また、目の寄り目傾向(内斜視)や、目を細める、まばたきが増えるなどのサインに気づいた場合は、眼科を受診するようにしましょう」(原先生)

眼精疲労は、目の病気が原因で起こることもあります。これを「症候性眼精疲労」といいます。目の病気には緑内障や白内障などがありますが、中でも年齢を問わず多くの人に見られるのが「ドライアイ」です。涙の量や質が低下して目の表面の角膜に十分な涙が行き渡らなくなり、目の不快感や疲労、角膜の傷などを引き起こします。ドライアイ研究会によれば、患者数は全国に約2,200万人いるとされ、増加傾向にあります。
涙=水分と思われがちですが、涙には脂も含まれています。その割合は、水分が99%で、脂が1%。わずか1%の脂ですが、目の表面をコーティングすることで涙の水分が留まり、目が乾燥しにくくなります。実はドライアイのほとんどが、この脂が足りないタイプだといいます。
「最近の研究では、脂が足りないタイプのドライアイがドライアイ全体の86%以上を占めると報告されています※4。脂はまつ毛の生え際にあるマイボーム腺から分泌されていますが、この出口が詰まったり、分泌量が減ったりすることで『マイボーム腺機能不全』に陥り、ドライアイを引き起こしているわけです。マイボーム腺機能不全診療ガイドラインによれば、50歳以上の日本人の10〜30%がマイボーム腺機能不全とされています※5」と有田先生は説明します。

まぶたの裏にあるマイボーム腺から脂が出て涙の蒸発を防いでいる。まばたき回数の低下は分泌する脂の質の低下にもつながる。
マイボーム腺機能不全になると、目が疲れやすい、涙目になる、目がゴロゴロする、まつげが汚れやすい、などの症状が出てきます。朝に症状が強く出やすいのも特徴です。
では、なぜマイボーム腺機能不全になるのでしょうか。その大きな原因が、まばたきの減少だといいます。「まばたきをすると、その動きがポンプとなってマイボーム腺から脂が分泌されます。ところが、スマホやパソコンなどのデジタルデバイスを注視していると、まばたきの回数が減少します。また回数が減るだけでなく、まばたきの質も低下しがちです。どういうことかというと、まばたきが浅くなるのです。本来は上まぶたが9割、下まぶたが1割動いてまばたきとなるのですが、上まぶたが半分くらいまで下りたところで、脳がまばたきをしたつもりになり、不完全なまばたきになってしまうのです。つまり、まばたきの回数と質の両方が低下した結果、マイボーム腺の脂の分泌が不十分になります」(有田先生)
子どもの場合、このような状態が続くとマイボーム腺自体が消失してしまう危険もあるといいます。「人の体の機能は使わないと廃れていくものです。まばたきが少なくなると、まばたきをする筋肉の眼輪筋も弱くなってしまいます。また、マイボーム腺の衰えも深刻です。マイボーム腺は全部で100本近くありますが、子どものころからデジタルデバイスに接して、まばたきが少ない生活を送っていると、将来的にマイボーム腺自体が廃用性萎縮を起こして減ってしまうことが危惧されています。消失したマイボーム腺は、現代の医学では元には戻せません。海外の専門家もこの問題に今、警鐘を鳴らしています」(有田先生)
デジタルデバイス使用時のまばたきの減少は、ドライアイを招くだけでなく、子どもたちの将来の健康にも関わっています。スマホ内斜視と同様に、子どもたちがスマホなどに熱中し過ぎないよう、家族をはじめ周囲の大人が気を付けておく必要があるでしょう。
マイボーム腺機能不全は40代以降、有病率が高くなります。その背景にあるのが、メタボリックシンドロームだといいます。「マイボーム腺機能不全は食事などの生活習慣とも関わりがあり、メタボリックシンドロームの方がなりやすいことがわかっています。いわば“目のメタボ”といえるでしょう」と有田先生。額が脂でテカテカしている、肉や揚げ物が好き、悪玉コレステロール値や中性脂肪値が高いという人は要注意。食事や運動など生活習慣を改めて、全身のメタボと目のメタボを同時に改善しましょう。
もう一つマイボーム腺機能不全のリスクになるのが、アイメイクです。「アイメイクをすると、マイボーム腺の出口が塞がれてしまい、脂が出にくくなるからです。メイクはしても大丈夫ですが、夜は必ずきれいに洗い流すようにしましょう」と有田先生は助言します。

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