治療

噛み合わせについて

噛み合わせについて

歯周病は、細菌によって歯を支える顎の骨が溶けてしまう感染症です。
この歯周病に、あるものが加わると進行を早めるものがあります。
それは、不正な噛み合わせと食いしばりです。これらは、歯に過度な力を加え、様々な疾患の原因となります。

今回の記事では、歯周病と噛み合わせの関係性について解説していきます。

1.なぜ噛み合わせや食いしばりが歯周病の進行を早めるの?

不正な噛み合わせや食いしばりは、歯に大きなダメージを与え、さらに歯周病の進行を早めてしまいます。理由は、過度な力が常に加わると歯を支える組織が力に耐えきれなくなり損傷します。この状態を歯科では『咬合性外傷こうごうせいがいしょう』とよび、一次的なものと二次的なもので分けられます。

一次性咬合性外傷

健康な歯ぐきをもつ歯に対して損傷が起こる状態です。

二次性咬合性外傷

歯周炎が進行した歯に対して損傷が起こる状態です。

歯周炎によって歯槽骨が減少すると、歯周組織が健康な状態のときと比較して、通常の噛み合わせの力でも組織に大きなダメージを与えるため、歯周病の進行が加速します。

不正な噛み合わせや食いしばりが起こる原因には、

  1. むし歯によって歯の形が変わる
  2. 歯周病によって歯が動く
  3. 遺伝
  4. 子供の頃の癖(指しゃぶりなど)によって歯並びが乱れる
  5. 被せ物の高さの異常
  6. 親知らずにおされて歯並びが乱れる
  7. ストレス

以上のような、理由があげられます。原因をつきとめ、それに対処していくことが大切です。

2.歯周病だけではなく、お口の中に様々な弊害を引き起こす

不正な噛み合わせは歯周病のみならず、その他の疾患の危険因子にもなります。

むし歯

むし歯

噛む力が強くかかり続けると、その歯に目に見えない微細なヒビが入っていきます。そのヒビを通じてむし歯菌が歯の中に侵入し、むし歯を発症するリスクが上がります。

歯が欠ける・折れる

歯が欠ける・折れる

過度な力が歯にかかり続けると、歯の表面であるエナメル質が一部欠けたり、歯にヒビが入って折れた状態(破折)になったりすることがあります。

このような状態になると、欠けたところは知覚を神経に伝える管が露出して冷たいものがしみるようになります。また、ヒビが入ったところの歯周ポケットは深くなるので、細菌が入り込みやすく、さらに歯周病を悪化させる原因となります。破折の進行度によっては、痛みが出たり、そのまま歯を残しておくことが難しいことがあります。そうなると、抜歯の対象となります。

咬耗こうもう

咬耗とは、食いしばりや歯ぎしりによってエナメル質がすり減ることです。エナメル質が減ると、その下にある知覚を神経に伝える管に刺激が伝わりやすくなり、知覚過敏の症状が現れます。さらに悪化すると、神経が見えることもあります。

3.噛み合わせ、歯ぎしりの治療法

実際に歯科医院で行っている治療法について説明していきます。

マウスピース

マウスピース

就寝中に装着するものです。
就寝中の無意識に起こる歯ぎしりや食いしばりによって、自分の体重以上の力が歯にかかリます。マウスピースを装着することで、過剰な負担を軽減することができ、歯のすり減りなどを防止することができます。
素材(硬さ)や厚みには種類があります。お口の状況に合わせて選択します。
保険適用で、3000円~5000円程度で作れます。

咬合調整

咬合調整

咬合紙と呼ばれる折り紙のようなものを噛むと、噛み合わせが強い部分に色がつきます。その部分を少しずつ削っていき、噛み合わせの調整をおこないます。削っても問題ない範囲で調整を行います。保険適用で1回約1000円程度です。

歯列矯正

歯列矯正

基本的に自費診療で、相場は50万~100万円程です。価格は、矯正の種類や歯科医院によって異なります。歯を移動させ根本的な噛み合わせの改善をすること、歯並びを整え歯磨きをしやすくすることを目的とします。

歯列矯正の対象となる噛み合わせ

  1. 叢生(そうせい):歯がガタガタに並んでいる状態
  2. 出っ歯:上顎や前歯が出ていて唇が閉じにくい状態
  3. 反対咬合:受け口。下顎が上の前歯より出ている状態
  4. 開口:奥歯で噛んでも前歯が噛み合わない状態

などがあります。
矯正というと、銀のワイヤーを歯につけるイメージですが、今は、マウスピース矯正や歯の裏側に装置を付ける、目立たない矯正も主流になってきました。
歯並びは噛み合わせと深く関わるものです。治療期間と費用がかかりますが、将来歯を失うリスクを減らすことができます。

4.まとめ

歯は、消耗品と同じです。生活習慣などによって、歳を重ねるごとに少しずつすり減っていき、その度に噛み合わせの状態も変化します。
だから、歯周病予防と同時に、噛み合わせの定期的なチェックは必須です。将来1本でも多くの歯を残していけるように、気になることがあれば定期メインテナンスで相談してみましょう。

Drコメント

  • 中原 維浩

    中原 維浩歯科医師

    噛み合わせについて、日頃から意識してる人は少ないと思いますが、
    記事に書いてあるように最悪な場合は歯が抜けてしまうこともある重大な疾患につながりがちです。
    手には「右利き」「左利き」とあるかもしれませんが、お口は左右両方バランスよく使うこと、
    そして可能な限り噛み合わせの専門医などに定期的にチェックしてもらいましょう。

  • 井上 和

    井上 和歯科衛生士

    歯周病の進行を大きく後押しするのが「力」です。 それは歯周病という病気の人を上や横から殴るようなものですからとても危険です。
    噛み合わせは変化をすることもありますし、
    変化はたいてい少しずつ起こるので気づきにくいため定期的な検査が必要です。
    特に歯周病と診断されたことのある人は、忘れずにチェックをしてもらいましょう。

  • 青木 薫

    青木 薫歯科衛生士

    歯周病に噛み合わせが関係するなんて知らなかった!という方も多いのではないでしょうか。
    歯並びや噛み合わせは見た目だけの問題ではありません。
    トラブルを避けるために、顎や歯を正しい位置で正しく機能させることが大切です。
    自分ではわかりにくい場合も多いので、歯医者さんでチェックしてもらいましょう。

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