シニアが気をつけたい症状と対策

風邪(かぜ)や腰痛などよくみられる症状に対するセルフケアについて、特にシニアで注意したい点をご紹介します。

風邪

シニアになると、風邪にかかっても症状がはっきり現れにくいことがあります。重症化して肺炎などを起こすこともあるので注意が必要です。まずは日頃から風邪の予防に努めることが大切です。(風邪の予防
市販の風邪薬には、風邪の数々の症状をやわらげるためにさまざまな成分が複合的に配合されています。購入するときは、気をつけることや副作用などをあらかじめ店頭で確認するようにしましょう。また、市販の風邪薬の副作用として、まれに間質性肺炎が起こることがあります。間質性肺炎では空せき、発熱などが急に現れたり続いたりしますが、風邪の症状と区別がつきにくいため、薬を飲んで症状が悪化した場合は、服用をやめて受診してください。

薬剤師に相談

胃痛・胃もたれ

胃痛や胃もたれは、暴飲暴食やストレスなどさまざまな要因で起こりますが、シニアの場合は、加齢による胃の消化機能の低下も要因となります。胃は主にぜん動運動によって、消化した食べ物を十二指腸に送り出しますが、シニアになるとこの働きが衰え、消化に時間がかかって長く胃に留まるために、胃もたれが起こりやすくなります。また、シニアになると胃の粘膜を守る血流が弱くなります。そうすると胃の防御機能が低下し、粘膜が傷づきやすくなって胃痛が起こりやすくなります。
市販薬を選ぶ際は、具体的な症状を薬剤師に伝えて一緒に選んでもらうなどし、添付文書をよく読んでから服用するようにしましょう。胃粘膜が荒れて胃もたれを引き起こしているときには胃粘膜の血流を改善する成分、胃酸が出過ぎの胃もたれやむかつきには胃酸の分泌を抑制・中和する成分、食べ過ぎによる胃もたれなら消化不良を助ける消化酵素など、症状によって効果を発揮する成分が変わってきます。
特に後期高齢者と呼ばれる75歳以降になると使用を控えた方がよい成分もあるので注意しましょう。例えばH2ブロッカーのひとつであるファモチジンという成分は、腎臓で排泄されるため、腎機能が低下しやすい80歳以上のシニアは作用が強く現れたり副作用を起こすおそれがあることから、医師に相談して服用することが望ましい※と思われます。(※市販薬では80歳以上の方は服用できないこととされています。)
胃痛や胃もたれの予防のためには、普段から食べる内容や量に気をつけ、ゆっくり噛む、深酒を控えるなどを心がけましょう。

シニアの胃痛・胃もたれ

肩こり・腰痛

肩こり・腰痛に対しては、ビタミン剤などの内服による緩和と、湿布や塗り薬など外用の消炎鎮痛薬による対策があります。
湿布には、メント-ルなどの成分によって「冷たくなるタイプ」と、トウガラシエキスなどの成分によって「温かくなるタイプ」がありますが、認められている効能・効果はどちらも同じです。そのため使用する人の好みで選択されればよいのですが、打撲や捻挫などの痛みには冷感タイプが、肩こりや筋肉疲労などには温感タイプが一般的にはよく使われます。
また、腰痛予防や再発防止には、腰の安定性を高めるサポーターなどの装具を利用して負担を軽減してみましょう。
最近の消炎鎮痛薬には、痛みや炎症を抑える効果の高い非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)という種類の成分が配合されているものもあります。つらい痛みへの高い効果が期待できますが、高齢者の場合は皮膚の状態によって発疹やかゆみが現れやすかったり、副作用が出やすいことから、使用前に医師・薬剤師へ相談する必要があるものもあります。添付文書を確認しましょう。
なお、シニアの腰痛は、腰部脊柱管狭窄症、骨粗しょう症による圧迫骨折など病気が原因となっていることがあります。脊椎の腫瘍や感染症、膵臓や腎臓など背中に近いところにある内臓の病気、解離性大動脈瘤などの危険な病気でも腰に痛みを感じることがあるため、まずは受診して原因となる病気を診断することが大切です。

シニアの肩こり・腰痛

頭痛

シニアになると、一般的に頭痛の現れ方が変わり、片頭痛などでは症状がやや軽くなることが知られています。目の前がチカチカするなどの前兆が現れてから片頭痛が起こっていた人では、前兆のみで頭痛を伴わなくなることが多いようです。また睡眠時に頭痛が起こるようになる人もいます。シニアの頭痛は、潜在する病気による可能性もあるため、早めに受診するようにしましょう。
軽い片頭痛や緊張型頭痛に対して、NSAIDsが配合された市販の解熱鎮痛薬を使う機会も多いと思います。高い効果で速く効くなどの特長がありますが、高齢になると胃を荒らしたり腎機能を低下させるなどの副作用が出やすくなるため、使用前には医師・薬剤師に相談してください。シニアには、NSAIDsとは異なる鎮痛成分であるアセトアミノフェンが使いやすいとされていますが、副作用として肝障害に注意する必要があります。薬の種類に限らず、市販薬を選ぶときは薬剤師に相談するとよいでしょう。
頭痛は規則正しい生活を送ること、ストレスをためないようにすることで、ある程度予防できます。適度な睡眠と十分な休息をとりましょう。

シニアの頭痛

歯周病

シニアは歯ぐきがやせて、免疫力の低下も加わるため、歯周病になりやすいので注意が必要です。歯周病によって歯を失い、十分に食事が摂れなくなると、全身の健康にも影響します。さらにシニアの場合、歯周病菌や菌の出す毒素が血流に乗って全身に運ばれたり、食べ物と一緒に肺に入ってしまう誤嚥性肺炎を起こすと、死に至る危険性もあります。
歯周病は軽症のうちに治すことが大切です。毎日の歯みがきで、歯と歯ぐきの境目もくまなくブラッシングして歯の健康を保ちましょう。歯周病予防のための薬用成分を配合した歯みがき剤を使うのもよいでしょう。入れ歯(義歯)を入れている方は、衛生的に扱い、装具が歯ぐきを傷つけることがないよう定期的にメンテナンスも行いましょう。
歯石の除去などを含む歯の衛生管理や、歯周病を悪化させないためにも、定期的に歯科検診を受けましょう。

シニアの歯周病

不眠

シニアになると、寝つきが悪くなる、眠りが浅くなる、体内時計が前進して早起きになるなどの睡眠障害の症状が現れる人がいます。うつ病などの精神疾患や、かゆみ・痛み、息苦しさ、頻尿など眠りを妨げる症状のある病気が不眠につながっていることもあるため、気になる人は医療機関を受診して、原因となる病気がないか診断をうけましょう。
こうした病気が背景にない場合は、運動不足、昼寝のし過ぎ、騒音など、不眠につながる生活習慣や環境の改善に努めましょう。それでも改善が難しい場合、病院で睡眠薬の処方が考慮されることがあります。シニアは副作用が出やすいため、安易な睡眠薬の使用は控え、医師とよく相談の上使用してください。
一時的な不眠で困るときには、おだやかな眠気を誘う作用のある市販薬を利用することもできます。市販薬に配合されているジフェンヒドラミン塩酸塩は病院で処方されるものとは種類が異なり、風邪薬などにも入っている抗ヒスタミン薬の眠くなる副作用を利用して、一時的に睡眠を改善するお薬です。シニアの場合は眠気が強く現れたり、反対に神経が高ぶるなどの症状が現れることがあるので、使う場合は注意が必要です。薬剤師とよく相談の上、長期間使用しないよう心がけましょう。

シニアの不眠

シミ

年を重ねると、誰しも紫外線の影響によるシミが出てくるものです。紫外線はシミだけでなくがんや白内障の原因になるともいわれていますので、日焼け止めやサングラスによるUV対策は年齢に関わらずしっかりと行うことが大切です。ただし、カルシウムの吸収に関わるビタミンDの合成には紫外線が必要であるため、過度な対策は骨粗鬆症を助長する危険性もありますので注意が必要です。
シミの対策としてビタミンCの効果はよく知られていますが、ビタミン剤を選ぶときは、あわせて配合される成分に着目することもおすすめです。例えばL-システインが配合されている場合、L-システインとビタミンCがメラニンの生成を抑え、ビタミンCがメラニンを無色化していくなどの複合的なアプローチで効果が期待できます。また、血行をよくする効果のあるビタミンEが配合されていれば、シミの元(メラニン)を排出する効果が期待できます。購入の際には配合成分や効能効果もチェックしてみてください。
ただし、ビタミン剤の使用に際しても添付文書は事前に必ず読み、かかりつけ医にはビタミン剤を服用していることを伝えておきましょう。
なお、女性ホルモンも原因の一つと考えられるシミ「肝斑(かんぱん)」の改善薬については、55歳以上の方が服用する場合、医師や薬剤師への相談が必要です。肝斑の改善薬に配合されている成分トラネキサム酸は主として腎臓で排泄されることから、一般的に腎機能低下が予想される高齢者では注意が必要なこと、また血栓を溶けにくくする成分を含んでいるため、血栓症を発症するリスクが増加するとされる50歳代後半では注意が必要なことが理由とされています。そもそも肝斑というシミは、閉経とともに発生が減少することも知られているので、55歳を過ぎた方は、別のシミも疑ってみましょう。

シニアのシミ

その他皮膚の薬・塗って使う薬

一般的な市販の塗り薬で高齢者の注意事項が書かれているものはあまりありませんが、配合成分によっては注意が必要な場合があります。添付文書はあらかじめよく読んでから使用しましょう。またステロイドを配合した点鼻薬は、高齢者の使用に注意が必要ですので、薬剤師やかかりつけ医に相談しましょう。
継続的に使用する薬(例:発毛促進薬)で、高齢者では使用量を減らすよう添付文書に記載されている場合もあります。シニアになると薬の効き目が出過ぎてしまうためです。成分だけでなく用法用量も確認して正しく利用すること、使用後の様子を確認することも大切です。

本文監修:国立長寿医療研究センター 老年内科医長 佐竹 昭介 先生

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