久住昌之の突撃!男の仕事飯

Vol.21旬の食材を食す
中野 パスタキッチン「トマトソース(ベーコンとナス・しめじ)」

スパゲティ、結構好きだ。
若い頃は麺類をよく食べる順位は、

1位 ラーメン
2位 蕎麦(立ち食いを含む)
3位 うどん(きしめんを含む)
4位 スパゲティ(パスタ)

だった。

今現在は、
1位 蕎麦(立ち食いを含まない)
2位 パスタ(スパゲティを含む)
3位 ラーメン
4位 うどん(きしめんを含む)

だ。ラーメンの順位が下がっているのが年齢だ。
昔はよく飲んだあと深夜にラーメンを食べて、翌朝後悔したものだが、今は胃袋にそんなラーメン力がなくなってしまった。健康のためには都合いいけど、少しさびしい。
心の中では2位うどんなのだが、残念ながら東京にあまり食べたいと思ううどんが無い。ボクはうどんでは讃岐より、九州とかの麺がゆるめの、そんなに太くないうどんが最近好きになった。汁が味付け薄めで、でも出汁がしっかり効いてるやつ。香川の隣の徳島のうどんもそうで、おいしかったなぁ。

パスタが2位になったのは、最近パスタの種類がすごく増えたせいもあると思う。そして最近は「パスタ」と呼ぶ店の方が多くなった。呼び方はどうでもよい。
昔もスパゲティ専門店に行けば、色々なのがあったが、専門店以外の例えば喫茶店ではナポリタンとミートソースと、せいぜい和風醤油味ぐらいしかなかった。
この頃は町のカフェでも「メランザーネ(ナスとベーコンのトマトソース)」なんてのがあったりする。「シラスと長ネギのペペロンチーノ」なんてのもある。この二つは仕事場の近所の店で、昼によく食べるパスタだ。
アサリのボンゴレもいい。キノコのパスタもいい。
「ジェノベーゼ」なんて洒落たのも、もはや普通になった。
「タコとルッコラのガーリックソース」もおいしい。そういえば取材で、どこかの飲み屋に行った時、イワナのパスタが出て、これがすごくおいしくてビックリした。
タラコスパも、いつの間にかずいぶん洗練されているじゃないか。昔はもう少しどんくさい一品だった気がする。気のせいか。
そして、今は味付けも油もあっさりした店が増えた。時代だろう。麺もその茹で具合も、平均的においしくなったと思う。そういうせいで、ボクもよく食べるようになったのだろう。
ただし、唯一いわゆるカルボナーラは、今でも苦手だ。食べ物全体でも苦手な方かもしれない。これは昔から。味が嫌いとかマズイのではないのだけど、一口か二口食べるともうたくさん、となってしまう。これはしかたがない。

昔は、柔らかめ太めの麺が露骨にケチャップ色したナポリタンに、何も考えず、タバスコをガンガンかけて、粉チーズをバンバン振って食べていた。今思うと、ちょっと無神経だった。
でも反動で、たまに昔ながらの真っ赤なナポリタンが、食べてくてたまらなくなる時もあるのだが。先日もそうなって、たまたま入った喫茶店で「スペシャルナポリタン」てのを頼んだら、生クリームとかが入ってて、変にまろやかでコクがあってがっかりした。あとでメニューをよく見たら蜂蜜も加えてあるとあった。蜂蜜いらない。まろやか、甘み、ナポリタンに求めてない。タバスコが似合わないナポリタンなんて、つまらない。

さてそんなボクが今回仕事の合間の午後、腹をすかせてやってきたのは、中野南口駅前の地下にあるスパゲティ専門店、その名も「パスタキッチン」。人気店ということだ。
なんと100種類以上のメニューがある。

この日は残暑がぶり返したような暑い日だった。午前中に一仕事終えてやってきたボクは、メニューを迷っているうちに喉が乾いてきて、水でなく生ビールを飲みたくなってしまった。恐る恐るスタッフにいうと「それは飲みましょう!」ということになり、カメラマンも含め4人で乾杯。ウマイ!久しぶりの昼ビールだ。

ボクのチョイスは、メニューの最初にある「トマトソース」から「ベーコンとナス・しめじ」。「しめじ」に秋の要素を入れてみた。
トマトソースを頼むことが多い。次がぺぺロンチーノ系のオリーブオイルとガーリックベースかな。
トマトソースだけでも「魚介類と森のきのこMIX」なんてのをふくめて、11種類もある。
さらにホワイトソース部門、玉子クリーム部門、ガーリック部門、ジェノベーゼ部門、ミートソース部門、和風部門、タラコ・ウニ部門、明太子・納豆部門と続き、その後にスペシャルメニューというコーナーがある。すごいメニュー数だ。
スペシャル部門にある「おみ漬けときのこの和風」というのがとても気になったので、スタッフにそれを注文してもらった。

さて、やってきたボクの「ベーコンとナス・しめじ」トマトソース。かなり赤い。昔のナポリタンを彷彿とさせる。
おいしかった。ナスはなぜかトマトソースに合う。ナスの食感がいいのだ。ベーコンは厚切りで、こちらも歯ごたえがいい。麺の茹で具合もすごくよかった。ペロリと完食。

最後まで食べたら、ボクには少し塩っぱいかなぁという感じが少し残念だったが、これは好みの範疇だろう。
それより、おいしかったのが「おみ漬けときのこの和風」。驚くほどどっさり細切りの海苔がかかっているのだが、これがちょっともらったら、ウマイ!正直言ってこっちにすればよかった、と思った。攻めればよかった。冒険心が足りなかった。おみ漬けのみじん切りがものすごく味になじんでいる。味も薄めで、ボクにはちょうどいい感じ。
おみ漬けは山形の郷土料理で、牛たん「ねぎし」の定食にもちょっと付いている。ボクが好きな漬物のひとつだ。

食べ終わって、ご主人に少し話を伺ったら、やはり山形のご出身だった。
お客さんには結構年配の方も多く、そういうお客さんは、ここに、ここでしか食べられない決まったメニューを食べに来るそうだ。わかるような気がする。
お客さんの好みを反映して、トマトソースは、味濃いめに作っていると言っていた。そうか、やっぱりわざと濃くしていたのか。
夜は一品料理もあるので、ワインを飲んで何かつまんでからパスタを、食べて帰る客も少なくないとか。いいなぁ、帰り道の駅前でワイン一杯とパスタ。
でもこの日はランチ時だったせいか、若い人も多かった。
こんなにメニューがあるにもかかわらず、メニューにないパスタも気軽に作ってくれるそうだ。ボクは今度来たら「おみ漬けと納豆の和風」というのを注文してみようと思う。

今回ご紹介したお店はコチラ!

パスタ キッチン

住所 東京都中野区中野2丁目25-6
TEL 03-5340-3227
営業時間 11:30〜15:00、18:00〜22:00(L.O.21:30)
(日曜日はランチのみ)

マンガ家/ミュージシャン 久住 昌之

PROFILE

マンガ家/ミュージシャン久住 昌之(くすみ・まさゆき)
1958年7月15日 東京・三鷹生まれ
法政大学社会学部卒。美學校・絵文字工房で、赤瀬川原平に師事。
1981年、泉晴紀と組んで「泉昌之」名でマンガ家としてデビュー。谷口ジローと組んで描いたマンガ「孤独のグルメ」は、各国で翻訳出版、2012年にTVドラマ化され、season6まで放送。劇中全ての音楽の制作演奏、脚本監修、最後にレポーターとして出演もしている。最新作は生まれ育った東京三多摩地区を散歩して綴った自伝的エッセイ集「東京都三多摩原人」(朝日新聞出版)1月20日発売。
  • カメラマン 瀬谷壮士
  • 更新日 2017.11.01