久住昌之の突撃!男の仕事飯

Vol.3大人食い中華ランチ
経堂 蜀彩「麻婆豆腐定食&季節の薬膳スープ」

経堂は、二十歳ぐらいの頃、年上の友達が住んでいたので時々行った。その頃から、これほど様変わりした街も、少ないのではないか。昔は小田急線沿線の地味な駅のひとつだった。今はすっかりお洒落な街だ。駅が高架になってさらにグッと変わった。

しかし最近の「駅前再開発」というのは、「全国駅前を同じ景観にする」というマニュアルがあるんじゃないかと思うくらい、同じ大きなチェーン店が並んでいる。

でも経堂は少し違う。昔ながらの店も残り、さらに新しい個人店が年々開店している。それが個性的で、志が高くおいしいという噂も耳に届く。

そんな経堂の中華料理店「蜀彩」のランチを食べに行った。三国志の「蜀」に「食」を掛け『食の軍師』というマンガを描いているボクとしては看板を見ただけで「ムムッ!」と、食べる戦の構えになってしまう。

ランチが数種あるが、ここはオーソドックスに「麻婆豆腐定食」で敵のお手並み拝見と行こう。この店、経堂でも人気店だそうだ。週末の夜は予約した方がよく、ランチも近所の住人やサラリーマンで賑わっていると聞く。今回、時間外に寄らせてもらったのは役得。しかし、本来は一般客に混じってその活況、つまり蜀の戦場を視察した上、食の陣立をしたいところだった。

麻婆豆腐ランチと決めた後も、さらにメニューを見ていると単品で450円の「季節の薬膳スープ」が、ランチと頼むと350円になるとある。それだ!ランチカスタマイズの法。普通のランチについているスープが、それに代わって出てくる。こうなると、もう一歩攻め込みたい。そこで小籠包2個で648円を付ける。こんなランチの大人食いも、たまにはよかろう。

さて、壺的な器に入ってお出ましになった薬膳スープ。これが、ウマイ!舌に、喉に、胃袋にしみとおるような味。あー、よかった。と、なんに対してかわからない感謝の気持ちが湧く。やさしいけど、深い味。

麻婆豆腐も、意外にあっさりした軽い味。もっとガツンとくるかと思った。店の人に聞くと、昼は夜より唐辛子と山椒をぐっと抑えているという。昼のランチではそういう要望が多かったのだそうだ。こんなところにも、昼の客が遠方から来たのではなく、近隣の働く人や住民の年配者が普段使いのランチとして、この店を利用しているのを感じた。確かにご飯とバクバク食べられる麻婆豆腐だ。

そう聞くと、今度は是非夜、紹興酒など傍に侍(はべ)らせて、本気を出した麻婆豆腐と一戦交えてみたくなる。

小籠包もやや厚みのある皮で、スープジュルジュル舌火傷、とはまたちょっと違う、地に足の付いた味だった。これが付いていることで、ランチ攻めにバリエーションが生まれる。軍師(ボク)も、局面局面で食べ進む策を練りながら、このセットを楽しんで攻略。大満足、満腹の大勝利でランチ終戦。経堂人がちょっと羨ましくなる店だった。

今回ご紹介したお店はコチラ!

大人食い中華ランチ
蜀彩

住所 東京都世田谷区経堂1-12-10 松原ビル2F
TEL 03-3425-1668
営業時間 11:30〜15:00(L.O.14:30)
17:30〜22:30(L.O.21:30)ランチ営業、日曜営業

※月曜定休、火曜不定休、年末年始休

マンガ家/ミュージシャン 久住 昌之

PROFILE

マンガ家/ミュージシャン久住 昌之(くすみ・まさゆき)
1958年7月15日 東京・三鷹生まれ
法政大学社会学部卒。美學校・絵文字工房で、赤瀬川原平に師事。
1981年、泉晴紀と組んで「泉昌之」名でマンガ家としてデビュー。谷口ジローと組んで描いたマンガ「孤独のグルメ」は、各国で翻訳出版、2012年にTVドラマ化され、season6まで放送。劇中全ての音楽の制作演奏、脚本監修、最後にレポーターとして出演もしている。最新作は生まれ育った東京三多摩地区を散歩して綴った自伝的エッセイ集「東京都三多摩原人」(朝日新聞出版)1月20日発売。
  • カメラマン 瀬谷壮士
  • 更新日 2016.04.01