久住昌之の突撃!男の仕事飯

Vol.1寒い日のホカホカランチ
日本橋 お多幸本店「とうめし定食」

ボクは57歳の今までサラリーマンというものをしたことがない。たまたま新橋などで昼に牛丼屋に入ると、客のほとんどがスーツ姿で、首から社員証(?)みたいのぶら下げていて、自分だけ浮いているような、邪魔してるような気がしてしまうことがある。でも、年配の客が牛丼に小さなサラダつけているのを見ると「あ、あの人も栄養を気にしているんだな」とか思ったりするわけです。

ボクはグルメと名がつくマンガを描いているけれど、実は味そのものより、自分を含めて、「黙って食べている人の心の中」が面白いのだ。だから「孤独のグルメ」でも圧倒的にモノローグが多い。

今回、日本橋の老舗おでん店「お多幸」のランチを食べに行った。おでん屋には、夜酒を飲みに行ったことしか無い。驚いたことに、ランチ時は近隣のサラリーマンで行列ができているという!私の知らない世界。

この時は遅めで行列は無かったが、ガラリと引き戸を開けると、カウンターだけの1階は満員。猛烈にうまそうなおでんの匂いにガツンとやられる。階段で上がると2階も満員。3階も満員。4階のテーブル席で食べた。すごい。OLさんなど女性客も半分ぐらいいる。多くの人がごはんにおでんの豆腐がのったようなものを食べている。これが今回のテーマの「とうめし」だった。

この定食は茶飯におでんの味が沁みた豆腐がそのままのり、おでんの汁がかけてある。これが、とうめしか。豆腐に辛子をちょいとつけて、飯と一緒に頬張ると、ウマイ!おかずに、大根と牛すじと煮物と煮玉子。大根と茎わかめのサラダ。そしてタクワンのつぼ漬け。大根づくしではありませんか。味噌汁がシジミなのが嬉しい。

刻みネギが付いているので、それをちょいと豆腐にのせて、今度は一味をかけて食べてみる。うん、おでんの汁が効いている。これもうまい。少し硬くなった煮玉子がおいしい。大根サラダがサワヤカです。

これで670円は安い!そしてボリュームはあるのにいかにもヘルシーだ。これは近くにあったら通う。とうめしというのは初めて食べた。煮玉子やネギや薬味の「使い方」にまだまだ研究の余地がありそうだ。頭の中で「ここで味噌汁をすすることによって、とうめしの淡白さに変化をつける」などと言いながら食べたい。お昼のこれを食べて午後の仕事にのぞむ人々が羨ましくなった。

今回ご紹介したお店はコチラ!

おでんの名店
日本橋 お多幸本店

住所 東京都中央区日本橋2-2-3 お多幸ビル
TEL 03-3243-8282
営業時間 [月〜金]
11:30〜14:00(L.O.13:30)
17:00〜23:00(L.O.22:15)

[土・祝]
16:00〜22:30(L.O.21:45)
※ランチ営業、夜10時以降入店可

マンガ家/ミュージシャン 久住 昌之

PROFILE

マンガ家/ミュージシャン久住 昌之(くすみ・まさゆき)
1958年7月15日 東京・三鷹生まれ
法政大学社会学部卒。美學校・絵文字工房で、赤瀬川原平に師事。
1981年、泉晴紀と組んで「泉昌之」名でマンガ家としてデビュー。谷口ジローと組んで描いたマンガ「孤独のグルメ」は、各国で翻訳出版、2012年にTVドラマ化され、season6まで放送。劇中全ての音楽の制作演奏、脚本監修、最後にレポーターとして出演もしている。最新作は生まれ育った東京三多摩地区を散歩して綴った自伝的エッセイ集「東京都三多摩原人」(朝日新聞出版)1月20日発売。
  • カメラマン 稲垣純也
  • 更新日 2016.02.01