賢者の仕事、賢者の健康

Vol.25アナリストだからこそ熱い思いを胸に
渡辺啓太氏 インタビュー(後編)

今回の賢者

PROFILE
バレーボールアナリスト渡辺啓太

バレーボールアナリスト。専修大学ネットワーク情報学部在学中に、柳本晶一監督率いるバレーボール全日本女子チームのアナリストに抜擢。世界で初めてiPadを用いた情報分析システムを考案・導入。2012年ロンドンオリンピックでは、眞鍋政義監督のもと、28年ぶりの銅メダル獲得に貢献。情報戦略マネジメントのエキスパートであり、現在は一般社団法人日本スポーツアナリスト協会代表理事としても活躍している。

各界の一線で活躍するキーパーソンが、「仕事と健康」について語るインタビュー連載「賢者の仕事、賢者の健康」。バレーボールアナリストの渡辺啓太さんのお話、後編です。仕事に主観を挟まない"クールな職業"と思われがちのアナリストが胸に秘める熱い思いとは?ハードなスケジュールの合間に行うリフレッシュ法についても聞いてみました。
(聞き手:河尻亨一)

アナリストは選手の課題を"見える化"する

− 渡辺さんが学生時代からほぼ独学でスキルを身につけ、バレーボールアナリストとして活躍するようになるまでのお話うかがってきました(前編)。

ここで素人質問で恐縮なんですが、アナリストの方々は具体例にはデータをどのように分析して結果に結びつけていくんでしょう?私のような文系でもわかるように(笑)、わかりやすい例を教えていただけるとうれしいんですが。

渡辺(啓太氏 ※以下、渡辺)そうですね。アタックの成績でお話してみましょうか。アタックに関しても色んな物差しがあるんですが、バレー界ではずっと"決定率"が重視されていたんです。

これは「どれだけアタックを決めたか?」を測る数字なんですけど、現行のルールだとこの数字ではちょっと心もとない。というのも、今はアタックをミスしてアウトにしてしまったら、相手に得点を与えることになりますから、アタックが決まった比率だけでなく失点率もふまえた"効果率"で考える必要があるんです。

− "効果率"はどうやって上げていくんですか。

渡辺まずは選手に、その数字が何を示しているのか?を説明します。比喩を使ったりしながら。例えば企業だったら売上げがありコストがありといろんな数字がありつつも、結局利益が一番大事ですよね?

つまり、たとえ売上げが良くても赤字続きだと結局ダメだと。「それと同じで生産性の高さみたいなものが重要なんですよ」という話をして、効果率への意識をチームに浸透させていくんです。

− 説明することもアナリストの重要な仕事なわけですね?

渡辺ええ、数字について選手が理解していないと、何のためのデータかわかりませんから。それがあるからこそ、それぞれの選手やチームのパフォーマンスを数値化することが活きてきます。

例えば、いいパスが入った後でのアタックの成績、あるいは相手のブロックがたくさん付く不利な状況でのアタックの成績など、数字の比較を細分化して行うことで、「この状況でのアタックは問題ないですけど、ちょっと崩れたところから上がってくる時には改善できるところがありますね」と。そうやって課題を見えるようにしていくんです。

アタック以外のプレーも様々にデータ化することで、世界のトッププレーヤーとの差も見えてきますし、目標に対してどんな練習が必要なのか?といったことも見えやすくなるわけです。