賢者の仕事、賢者の健康 賢者の仕事、賢者の健康

Vol.1マンネリを打破する発想。それを選ぶのがリーダーの仕事
スタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサー インタビュー(後編)

一回使った手はもうやりたくないですね

− プロデューサーや編集者は、作家にその人自身気づいていないことに気づいてもらうことも仕事なんでしょうね。それにしても興味深いお話です。リーダーはみんなの意見を集約して選び役に徹する場合もあれば、ときには大胆な方向性を示す必要もあると。

鈴木基本はほっとけばある程度みんなの方向性って決まってくるものなんですけどね。雑誌でも編集長が志向するものってわかるじゃないですか。毎回選ぶ企画におおよその傾向が出るから。でも、そこにはむしろ問題も含まれるんですよ。それで固まってしまうと新しい発想が出てこなくなりかねない。

その意味では、僕の志向とは違う企画を出してもらうことが重要で、本当は違うんだけれど、あえてそっちも採用するとかね。雑誌のときも、そういうことってよくやりましたよ。

色々工夫したんです。たとえば「アニメージュ」って雑誌をやっていたときは、読者欄を充実させようってことで、16ページも取ってました。これはたぶん僕らが、深夜ラジオを熱心に聴いてた世代だということと関係あると思うんですけど、読者の意見をもっと誌面に反映させようってことでね。

でもね、毎号やってると読者投稿ページでもある傾向が強くなってくる。マンネリズムになるんです。それで極端な場合、僕なんかは読者が送ってくる意見とは違う傾向のものを意図的に作って載せる、なんてことまでやってましたね。すると次に読者からそっちの傾向の投稿が来るようになるんですよ。

つまり、人ってある意味では保守的だから、どうしてもある範囲の中でやろうとしちゃう。でも、その傾向が強くなると面白くなくなるんですよね。それを打破するためには、こちらから仕かけないと。その意味では僕、自分が映画の宣伝にタッチするようになってからも、一回使った手はもうやりたくないですね。マンネリズムでやらなきゃいけない部分もあるとはわかってるんですけど、それだとやっぱり飽きちゃうから。