賢者の仕事、賢者の健康

Vol.1マンネリを打破する発想。それを選ぶのがリーダーの仕事
スタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサー インタビュー(後編)

今回の賢者

PROFILE
映画プロデューサー鈴木敏夫

1948年、名古屋市生まれ。72年慶応義塾大学文学部卒業後、徳間書店に入社。『週刊アサヒ芸能』を経て、78年アニメーション雑誌『アニメージュ』の創刊に参加。副編集長、編集長を務めるかたわら、『風の谷のナウシカ』(84年)、『火垂るの墓』『となりのトトロ』(88年)などの高畑勲・宮崎駿作品の製作に関わる。85年にはスタジオジブリの設立に参加、89年からスタジオジブリの専従に。以後『風立ちぬ』(13年)までの全劇場作品及び、三鷹の森ジブリ美術館(01年開館)のプロデュースを手がける。現・株式会社スタジオジブリ代表取締役プロデューサー。スタジオジブリ最新作に「レッドタートル」(9月公開予定)、プロダクションI.G作品の「ガルム・ウォーズ」(5月公開予定)では日本語吹替版プロデューサーを務める。

各界の一線で活躍するキーパーソンが、「仕事と健康」について語るインタビュー連載「賢者の仕事、賢者の健康」。第一回目のゲストには、スタジオジブリの鈴木敏夫さんをお迎えしました。後編では仕事の話を中心に。映画プロデューサーとしていまも一線で活躍を続ける鈴木さんの仕事の秘訣とは?
(聞き手:河尻亨一)

人を率いる立場の人は「オレはこれがやりたい」なんて言っちゃいけない

前編では、鈴木さんオリジナルの体調管理法と仕事を“健康的”にこなす秘訣をうかがいました。「サラリーマンは素晴らしい」というお話でしたが、鈴木さんは出版社から独立して会社(スタジオジブリ)の立ち上げにも関わり、経営者としてもご活躍されてきました。

鈴木(敏夫プロデューサー ※以下、鈴木)そんなこともうやらないですよ。ジブリだけで十分です(笑)。僕ね、雑誌やってたときも一記者の頃のほうがよっぽど面白かった。編集長なんてつまらないもの。だって、みんなのまとめ役でしょう? 編集長に限らないでしょうけど、人を率いていかなきゃいけない立場っていうのは、それなりのプレッシャーですよね。そしたら体調崩しちゃマズい、そんな気持ちもあったんじゃないかな? と思うんですけど。

− 鈴木さんの「リーダー論」もうかがってみたいのですが。人を率いる立場で大切なことというのは?

鈴木ひと口で言うのは難しいですけど。自分の経験で言うなら、僕は最初、週刊誌の記者になったんですよ。その週刊誌は1週間ごとに部員が集まって、編集長の前で企画案を出さなきゃいけないんですけど、毎週毎週その様子を見ててね、ひとつ勉強したことがあるんです。

週刊誌時代に歴代で3人の編集長についたと思うんですが、どの編集長にもひとつ共通の不文律があって、それは何かと言うと、みんなはネタを出すでしょ? でも編集長は出さない。あとどの編集長も必ずやってたのは、その週のネタはその場で決める。週刊誌だから急ぐ必要があったんでしょうが、みんなから出て来た案を見て「これとこれで行こう!」って即決なんです。

つまり、人を率いる立場の人は、みんなから色んな案が出たけど、「オレはこれがやりたい」って言っちゃいけない。そうじゃなくて、「これをメインでやろう」という選択の権利に徹する。まあ、あくまで僕がいた週刊誌に特有のことであって、一般に当てはまるのかはわからないんですけど、それは勉強になったんですよね。

だから自分がアニメ誌の編集長になってからも、自分からは絶対案を出しませんでした。本当のところを言うとストレスだったんですけど、そこは我慢しましたよ。