賢者の仕事、賢者の健康

Vol.23インスタのミニチュア写真が"職業"になるまで
田中達也氏 インタビュー(前編)

ミニチュアと育児と会社。ひとつ切るんなら会社だなと

− ミニチュア写真が仕事になっていくなんて思いもしなかったでしょうね。

田中ええ、始めたのは2010年なんですけど、最初の頃は手応えというか反響もなかったです。でも、それはそれで楽しくて。まあ、趣味みたいなものですよね。毎日やり始めたのが2011年の4月です。

− ミニチュアあるいはその写真の面白さや魅力ってどのあたりだと思いますか。

田中なんでしょうね?ミニチュアがなんでいいかといったら、やっぱり手軽に自分が思った世界が作れるところ。例えばブロッコリーが木に見える風景を作りたいとしても、実際にやるのは無理なんです。ミニチュアならそれがぱぱっとできてしまう。思った風景を簡単に作れるというか。

僕、イラストも描けると言えば描けるんですけれど、それだとやっぱり時間と労力が今以上にかかりますからね。ミニチュア写真だとイメージを形にするプロセスをもうちょっと簡略化して、アイデアだけをひたすら突き詰めることができます。

− SNSで求められるスピード感なども考えると、やはり「毎日新しいのができる」ってポイントが大事なのかもしれません。ちなみに、これが職業になってきたのはいつくらいからですか。

田中始めて2年くらいたった頃、2013年に写真集を出すんです。最初はクラウドファンディングで資金を集めて、自費出版みたいな形で出そうと思っていたんですけど、その途中で出版社の方から声がかかって。

その写真集がきっかけで、今度はテレビに紹介されたりするようになり、そしたら今度はそれを見た方から、仕事の依頼が殺到するようになって、そっちの収入が会社の月収を超えちゃったんですよ。

その後独立したんですが、会社を辞める決意をしたのは、子供が小さかったというのがありますね。会社の仕事をしてミニチュアもやって、子供の面倒も見るというのはなかなか厳しいなと思って、ひとつ切るのなら会社だなと思ったのが直接のきっかけですかね。

− 田中さんはイクメンなんですね。ところでユーチューバーもそうですが、今はSNSでの発信が職業になっていく人も増えています。

田中そうですね、会社を辞めるまでの人はそんなに多くないと思いますけど、それなりの収入を得ている人は結構います。多くはサービスが始まった当初からやってる人なんですけど。

− 独立したとはいえ、やっぱりデザイナーを感じさせる写真になってますね。なんとなく趣味でやってる感じではなくて、アイデアや企画も含めて明らかにプロで。こうなると肩書き、迷いません?(笑)

田中迷います。一番説明がわかりやすいのが、「ミニチュア写真家」なんですけど、確かに構図の作り方や色のトーンの合わせ方などはデザインの仕事に近くて。

そう考えると、本当はアートディレクターと名乗るのがいいんでしょうけど、世間的には「それって何なの?」ってなるんですね。それで"ミニチュア写真家"と言ったり、あとは"見立て作家"とか。