賢者の仕事、賢者の健康

Vol.9サラダは毎日作るようにしています
谷原章介氏 インタビュー(後編)

体調が万全でないと、いい仕事はできませんから

− 谷原さんも長年の修行を積み、今も続けてらっしゃるんだと思います。では、このあたりで健康のお話も。そうやって修行を続けるためには、健康でいることが大切だと思うのですが、体調管理なども気を配ってらっしゃるでしょうね。

谷原気をつけますね。体調が万全の状態で行かないといい仕事ができませんから。いい仕事ができなかったら二度と呼んでもらえない世界です。監督だけでなくスタッフさんたちも見てるわけですから、だらしない仕事をするわけにはいかない。気は抜けないです。自分のベストの仕事をするために、健康管理はやっぱり気をつけますし、役に合わせて体重の増減もします。

そういえばこの十何年、体調不良で仕事は一回も休んだことないですね。「これ風邪かな?」と思う程度のことであれば、「現場に行けば治るかな?」っていうくらいの気持ちでやってます。

− 具体的には、どんな風に体調コントロールをされてますか。運動だったり栄養面で気をつけてらっしゃることがあれば。

谷原寝る前に腕立てふせとストレッチはやってますね。食べ物で言うと好き嫌いはないですけど、トロやカルビのような油っぽいものはあまり好みません。まあ、中年だったら当たり前ですけどね(笑)。むしろ野菜がすごく好きで、よく摂ります。

− ミーハーなご質問になってしまうんですけど、どんな野菜がお好きなんでしょう?

谷原まあ野菜全般ですけどね。もやしが好きで、わかめも。あと、なんでしょうね? クレソンとか(笑)。毎食絶対サラダは作るようにしてますから。料理はストレス解消になっていいですね。

さっき言ったことと矛盾するかもしれないんですけど、ドラマや映画の撮影は1日で終わるものではなく、ずっと作り続けていくものですから、「早く完成しないかな?」というフラストレーションが時々溜まることはあるんですよ。でも料理って、すぐ完成して結果もわかるじゃないですか? 「今日は失敗したな」とか「お、うまくいったぞ。シリーズ化してみようかな?」なんて。そこがいいんですね。

もっと知りたいんです、世の中の素敵なことや面白いことを

− 谷原さんは色んなジャンルのことに関心を持ってらっしゃると思いますが、料理以外で最近、凝ってることってありますか? いわゆる趣味というんでしょうか。

谷原趣味ですか。なんでしょうね? 最近だとオークションですかね?(笑) 海外のオークションサイトを使っているんですけど、説明ややり取りを英語でやりますから、これがすごく英語の勉強になります。

英語はそもそも、高校生くらいの時に、近所に住んでいたアイルランドの方々と仲良くなったことがきっかけで話すようになったんです。彼らの中に一人ヘビーメタルが好きな人がいて、「このアルバムいいよね」みたいな会話を毎日のように交わしてるうちに覚えました。そういう趣味の仲間を作ることはとっても大事で、英語も共通の趣味から入っていったほうがスムースに身につきますよね。

その話で言うと、僕、周りにいる魅力的な人に近づいて行っていろんなことを教わるのが得意かもしれません。今の音楽の話もそうですし、古着にすごく興味があった時は、古着に詳しい人と親しくなって、「教えて教えて」なんてことやってました。僕はある意味、究極のアマチュアみたいなもので、自分が尊敬できたりカッコいいと思うスペシャリストの人と仲良くするということを、ずっと小さい頃からやってきたのかも。

− 今のお話は今日冒頭(前編)で出た、相手のリアクションを見計らいながら「探る」ということに、もしかしたら近いのかもしれませんね。仕事でも趣味でも、相手に近づいていって吸収し、自分の立ち位置や動き方を定めていくスタイルというか。谷原さんにとって、その原動力となるものはなんですか?

谷原単純に知りたいんです、いろんなことを。世の中にはもっと素敵なことや面白いことがいっぱいあるはずだと思ってますから。

− 好奇心が原動力なのかもしれませんね。時代小説がお好きという話も聞いたことがあるのですが、最後にこの記事を読んでくださっているビジネスパーソンへのオススメなどありましたら。

谷原仕事の一環で読むこともあるんですけど、時代小説はもともと大好きでこれは僕の中では一種の「精神的な遊園地」なんです(笑)。現実の世界からその世界に入ると、本当に素敵だなと思える理想の日本がそこにあって心洗われます。いろんな精神的ストレスだったり、せせこましいことを忘れて物語に没頭できる。

オススメですか? なんでしょうね。色んな作家さんの小説を読んでるんですけど、オーソドックスに軍記物などがお好きなようであれば、やっぱり司馬遼太郎さんとか絶対面白いと思いますし、あと僕、藤沢周平さんの作品も結構好きで。坂本龍馬みたいな偉人ではなく、その時代を生きた市井の男女にフォーカスを当てているところにグッとくるんですよね。

こうやって挙げていくとキリがないんですけど(笑)、佐伯泰英さんの「酔いどれ小籐次留書」シリーズとか宮部みゆきさんの時代小説もすっごい好きです。おススメします。

− 桂小五郎から初代文部大臣の森有礼、白洲次郎などいろんな歴史上の人物を演じてらっしゃいますが、時代小説から吸収されている部分も大きいのかもしれませんね。

谷原言葉だったり時代背景だったり、もちろんすごく勉強になります。台本の中に「三和土」って言葉が出てきて「『さんわど』ってなんだ?」なんて聞いてたら現場で恥ずかしいですからね(笑)。

編集者/東北芸術工科大学客員教授 河尻 亨一

PROFILE

編集者/東北芸術工科大学客員教授河尻 亨一
雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心に多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集を手がけ、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。
現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。
  • カメラマン 稲垣純也
  • 更新日 2016.10.21