賢者の仕事、賢者の健康

Vol.5みんなもっと本気で仕事を面白がったほうがいい
椎名誠氏 インタビュー(後編)

人には自分の欲望や志向に素直になれる時期がある

− あやしい探検隊が“編集部”でもあるんですね?

椎名編集部でもあるんです。あそこの中にはカメラマンもいるし、デザイナーもいるし、広告代理店や取次の人も。つまり人材揃ってるんですよ(笑)。もう会社ですよね。外注することないですから。DTPをやってるヤツもいて、コンピュータの編集を知らない僕にとっては魔法のように本ができていきます。

− なんだか楽しそうですね。今日、最初のほうでしてくださったお話と絡んできますが、椎名さんが実践しているような遊びと仕事の境目がないような働き方の話を聞きたい読者も多いと思うのですが。最後にそのお話をうかがってみたいと。

椎名50代ってまだ大丈夫だと思うんですけど、20〜40代の人たちってものすごく不安定で迷ってるでしょう? 「生き甲斐とは何か?」とかね。

で、僕が思うのはもっと本気で面白がったほうがいいんじゃないかってこと。何かを真剣にやっている人たちが楽しいって思う世界はいっぱいあるじゃないですか。プロレスでもサッカーでも野球でも、もっと文化性のあるものでも。エンターテイメントってそうですよね。

また、それを見て楽しんでいる人がいっぱいいるから、それが仕事になってるわけですけど、そのためにはまずやってる本人たちが楽しくないとそのマーケットなりビジネスは成立しないと思うんです。まずは本気で面白がることからビジネスになっていきますよね。

それもね、他人から見ると「何が面白いんだろう?」みたいなものがいいんですよ。たとえば僕自身は全然興味ないけど、「鉄ちゃん」っているじゃない? 鉄道写真を撮るマニアの人たち。

前に一度、そういう写真コンテストの選考委員を引き受けたことあるんですけど、僕にとってはつまらなかった。本人たちは「この角度がいい!」「いや、こっちの角度だ!」みたいな激論をしていて楽しそうに仕事をしている。そういうものなんじゃないかな。それでマーケットが成立してるじゃないですか。そういう領域って無数にあると思う。ベンチャービジネスなんかは、その新しい鉱脈を探すってことなんでしょうね。

そうやって自分の欲望や志向に忠実というか、素直になれるというか、人にはそういう時期が何回もあるんですよね。僕も奥さんからよく言われます。「あなたはね、何かを思いつくと、たちまちアチコチの人を大勢集めて巻きこんでね、でも10年くらいで飽きて放り投げちゃう」って(笑)。