賢者の仕事、賢者の健康

Vol.5そもそも「あやしい探検隊」には人事部なんてありませんから
椎名誠氏 インタビュー(前編)

旅は損得勘定でやってはいけない

− その意味ではやっぱり“探検”って大事ですね。必ずしも海外でなくとも。海外に行きたい人が減っているという話も聞いたことあるのですが。

椎名それはね、時代の変遷が大きく影響してると思いますよ。僕らの頃は携帯もなかったし、一般の人はコンピュータなんて触れない時代ですよね。今に比べて情報量が極端に少なくて、外の世界を知るためには歴史書や博物誌のような、ややアカデミックなものから知識を入手せざるえなかったんです。

ところが今じゃ情報が瞬時に手元に来ますから。感覚的には世界がグッと狭くなったような気がする。旅はその情報を確認するために行くというか。でも、実際には世界は同じ大きさで、行かなければわからないことって一杯あるんですけどね。

− と、考えるとあやしい探検隊のような存在は改めて貴重だなと思いました。

椎名貴重ですよね。少なくともこんなことやってる人あまり知りませんからね。日本中に。あとね、わかってきたのは、旅は損得勘定でやってはいけないんですよ。A地点まで行ったらその次のB地点まで行かないと損だというふうにね。

新聞なんかの広告でよく見かけますけど、3カ国くらいを2泊4日で回るとかね。目が回ります(笑)。「こんな疲労する旅にみんななぜ?」って。これはきっと損得の旅なんだな、と思いましたけどね。

今度の本『あやしい探検隊 台湾ニワトリ島乱入』で書いた新しい試みは、どこにも行かないこと。同じ場所から動かないというテーマ。こんな贅沢な旅はないんです。僕は自分の仕事をし、仲間と遊び、自分たちでうまいものを作って食う。約半月でしたが日本にいたらできないですよ。

>>後編に続く

編集者/東北芸術工科大学客員教授 河尻 亨一

PROFILE

編集者/東北芸術工科大学客員教授河尻 亨一
雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心に多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集を手がけ、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。
現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。
  • カメラマン 瀬谷壮士
  • 更新日 2016.06.01