賢者の仕事、賢者の健康

Vol.5そもそも「あやしい探検隊」には人事部なんてありませんから
椎名誠氏 インタビュー(前編)

よそへ行くことの醍醐味は他人と自分を両方学べること

− “入隊資格”とかあるんでしょうか。

椎名経歴なんかはあまり見ません。「飲めるか?なんでも食えるか?」とか、そういうのが大事です。尺度が違うんですよ。そもそも私のところは人事部ありませんから(笑)。

− 初期の頃のお話もうかがってみると、椎名さんの一連の屋外活動はどうやって始まったんでしょう?

椎名最初は僕がね、まだサラリーマンの頃だったかなあ。キャンプ自体は中学生くらから友達と一緒に、兄貴のテント借りてあっちこっち行ってましたけどね。だからやってることは変わらないんですけど、本格的にやり始めたのは30代ですね。

30〜40代の頃は月イチどころじゃないんです。テレビのドキュメンタリーや雑誌の取材旅行などで、海外ロケに2ヶ月行って日本に10日間だけ帰って来て、また1ヶ月行くとかね。そういうのも平気でやってた。色んなことができて面白いですから。有り難いことに「ものを書く」ということと「行動する」ということがそこで結びついてね。

− そのお話も興味深いです。先ほども個人の仕事と集団でやることのバランスというお話がありましたけど、「書く」と「行動する」の結びつきもそれに近い何かがある気がします。そういったバランス感覚は作家以外の仕事でも大事なのかな? と思いまして。“外”に出て行動することはなぜ必要なんでしょう?

椎名なんだろう? たとえば、よその国へ行くことの一番の目標というか醍醐味は、やっぱり異文化と出会えることなんですよ。そうすると逆に日本のことを考えるし、思いがけない日本が多方面から見えても来ます。

外から見たら日本はものすごい異文化の国でしょう? つまり、外に行くことで他人と自分の両方を見ることができるということですよね。自分の国を学んで他人の国も学ぶ。それが面白いと思うんです。

その積み重ねによって、さらに興味が深まっていく。たとえば僕の場合、「北極圏ってどんな場所なんだろう?」って思った。で、1カ所行ってみるとひとつの国の北極圏のほかの場所も知りたくなって、行っちゃうんですよね。そうするうちに「北極圏というのは“国境”がないひとつのエリアなんだ」ってことがわかってきたんですよ。北極圏の人たちはみんな同じ音楽や踊りをやってるし、同じもの食べてますからね。こういうのはね、地図を見てたってわからない。外に出て行動しないと。