賢者の仕事、賢者の健康

Vol.3ビートルズもダウンタウンも“口に苦い良薬”
倉本美津留氏 インタビュー(後編)

「苦いけど効く! もう一回!」

− では、閃きでキラメキの人、倉本美津留さんに今日の〆となるご質問を。日本をもっと輝かすにはどうしたらいいと思いますか。倉本さんが今という時代や未来をどう考えてらっしゃるか? という意味合いで捉えていただいてもいいのですが。

倉本面白いところもあるし、面白くないところもある。「両方あるのが面白い!」と思います。世界はカオスに突入していってる気がしてます。ボクがいるメディアの世界も、テレビとインターネットがゴチャゴチャになって何が正解なのか、何が王道で何がマイナーなのか、わからなくなってきている。これって、他の分野でもそうなんじゃないでしょうか。

そういう意味では、昔に比べて将来の見通しが立てづらいところはあるんですけど、でも、それイコール「チャンスがある」ってことでもありますよね。ボクは「明るくしたいという想いが、未来を明るくする」と考えているので、ネガティブな自由よりポジティブな自由のほうが楽しくて価値もあると伝えていきたいですね。

− 先ほどのお話にもありましたが、「楽」や「楽しい」が癒しの力である「薬」に通じるということですね?

倉本はい。ただ、薬って苦いですからね。ボク、「良薬口に苦し」ってすっごくいい言葉だと思うんですよ。ボクの作るものでも、「ええっ!?」「何これ?」って、一瞬引かれることありますから。でも、単に口当たりのいい甘〜いものを作るだけが正解だとは限らないんですよね。ビートルズも最初はみんな「ええ!?」「何この音楽!!」ってなった。「苦いけど効く!もう一回!」みたいな感じで広がっていったんですよね。

お笑いでもそう。ダウンタウンだって、今はお笑いのど真ん中みたいに思われてるかもしれないけど、最初に出て来たとき、みんな「ええ!?」でしたから。口に苦かったんですね。それで、「苦いけど、どうやったら口に入りやすくなるのかな?」と、味わい方を考える周りの人間も必要だったんですよね。

ビートルズにとっては、マネージャーのブライアン・エプスタインがそうやし、つい先日亡くなったプロデューサーのジョージ・マーティンもそうですよね。薬で例えると彼らが“糖衣”を作る役割を果たしたんですよ。ボクらの仕事もそうで、どれくらいの甘さの糖衣にすればいいか、ボクもこの仕事をやりながら少しずつ学んでいってるとこですね。もちろん「効く」ということがどういうことかを考えながら。

薬って「一錠、二錠」で数えるところも面白いですよね。「錠」というのは鍵穴のことでしょう? それが溶けて門が開かれる。そもそも「患う」という字も、心が串刺しになっている状態。それを解放してくれるものが“一錠の薬” なのかもしれないですね――なんて漢字のことを考え出すとどんどん解釈を深めてしまいます。想像していくと面白いですよね。

編集者/東北芸術工科大学客員教授 河尻 亨一

PROFILE

編集者/東北芸術工科大学客員教授河尻 亨一
雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心に多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集を手がけ、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。
現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。
  • カメラマン 瀬谷壮士
  • 更新日 2016.04.15