賢者の仕事、賢者の健康

Vol.3ビートルズもダウンタウンも“口に苦い良薬”
倉本美津留氏 インタビュー(後編)

もう壁だらけですよ、世の中思い通りにならないことばっかりですから

− ただ、歳を経るにつれて、そういう初期衝動も薄れていくものだと思うんです。仕事の上ではガッツやエネルギーだけではなんともならないシーンもあって、スキルなども必要でしょうし、壁もありますよね?

倉本いや、もう壁だらけですよ。世の中思い通りにならないことばっかりですから。でも、「もうアカンのちゃうかな? 無理ちゃうかな?」と思ったときこそ、初心に戻るのが大事だと思ってるんです。ヤバいときこそ冷静に「自分ってどんな人間やったっけ?」と考えてみる。

当然、一人では戦えません。芸術家が一人で黙々と作る類いの仕事ではないから、色んな人とコミュニケーションをとりながら作っていきます。壁を乗り越えて行くためには、自分を振り返ると同時に「困ったときに、どんな人の力を借りればいいのか」を考えるようにしています。

− 自分にとっての“薬”になる人を探すということですね。

倉本そうです。だからこそ日頃から、そういう人たちとの出会いの機会をたくさん持つべきだと思うんです。仕事を続けていると、なんとなく一人で何でもできるような気がしてきて、自分が不得意なことまで抱えこんでしまいがち。そういうときに「ウソウソ、自分こんなことできへんかったやん!」って素直に思えるかどうかって大事ですよね。

どんな壁でもそうなんですけど、それを突破するにはやっぱり「閃き」が必要ですよね。実は、「閃」って字の中に答えが書いてあるんですよ。これは閉まってる「門」のところに「人」がやって来て開いてくれるっていう字なんじゃないかと思ってるんです。人によって門の鍵穴のカタチが違うから、それを開けられる人とそうでない人がいる。だから重要なのは、自分の門の鍵穴をガチャンと開けられる人に、どれだけ出会えるかということなんですよ。

クラスでも職場でも一人くらいはいますよね。しゃべっていてメッチャ盛り上がれる人。何も言ってないのに、「えーっ!? オレが今言おうと思ってたこと、なんで先言うの?」みたいな。そういう人は鍵を開けてくれる可能性が高いから、大事にしたほうがいいと思います。まったく逆の噛み合わないタイプの人もいますから。丁寧に時間かけて説明しても「全然通じてない…」みたいな。