賢者の仕事、賢者の健康

Vol.11最後の最後に大切なのは「諦めない」ということ
北村晴男氏 インタビュー(後編)

今回の賢者

PROFILE
弁護士北村晴男

1956年3月10日生まれ、長野県出身。早稲田大学法学部卒業。3年間の勤務弁護士を経て1992年に北村法律事務所を開設し(現、弁護士法人北村・加藤・佐野法律事務所)、一般民事(保険法・交通事故・会社法務・相続・医療過誤)などを専門に弁護士業務を行っている。また人気TV番組「行列のできる法律相談所」に出演し活躍している。
>弁護士法人 北村・加藤・佐野 法律事務所 公式サイト
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各界の一線で活躍するキーパーソンが、「仕事と健康」について語るインタビュー連載「賢者の仕事、賢者の健康」。今回のゲストは弁護士の北村晴男さん。後編では「仕事を受けた以上、負けるわけにはいかない」弁護士という仕事について、事務所の経営や若手育成についてうかがってみました。仕事にかける北村弁護士の“執念”はどこから湧いてくるのでしょう?
(聞き手:河尻亨一)

私は真面目な弁護士です

− ここまでは主に北村先生のストレス解消法についておうかがいしました(前編)。ここからは弁護士という仕事のお話も。先生、Twitterの自己紹介欄に「真面目な弁護士です」って書いてらっしゃいますね。

北村(晴男氏 ※以下、北村)そりゃ真面目ですよ。仕事だけは本当に真面目です。

− 仕事に野球、ゴルフ、お酒にいたるまで、すべて“真面目”に取り組んでこられたのではないかと?

北村いや、お酒はそこに入るかどうかわかりませんけど(笑)、なんでそう書いたかというと、テレビに出ているから不真面目だと思われちゃうといけないなと。そう思ってる人が何割かは確実にいるんです。

− 専門性が高く、とっつきにくいイメージもある法律という領域のことを親しみやすく語る役割も大事だと思うのですが。

北村「わかりやすかった」と言われるとうれしいですよね。自分の存在意義があると思えます。でも、難しいんですよ、法律をエンターテインメントにするのは。私も最初はそのあたりの温度感がわからなくて、一から十まで理由を並べ立てて説明しようとしたんですけど、それはまったくテレビには向いてないと気づきましてね。なぜかというと編集でカットされてしまいますから。

つまり、テレビ番組というのは、正しいことを正しくいうだけでは面白くならないので、正しさと面白さの絶妙なバランスみたいなものが求められるんです。だったら「どう言えばいいんだ?」というのは、自分なりに色々工夫しました。あまりに行き過ぎると単なる感情論になってしまいますから、感情を入れながらも本質的な理由をひとつだけ入れるようにするとかね。

まあ、あの番組(「行列のできる法律相談所」)がこんなに長く続くとは思いませんでしたよね。それはスタッフの努力の賜物で、私は与えられた範囲の中で頑張るだけなんですが。

淡白な態度では仕事で結果なんて出せませんよ

− そもそもの話になってしまいますが、法律というのは面白いものなんでしょうか?

北村うーーーん、面白いところもありますよ。なんていうかな? 例えばバランスの面白さですね。法解釈というのはバランスなんですけど、その前提となる法律もバランスを考えて作られてるんです。そういうことがわかってくると楽しいですけど、わからない時はそりゃ面白くないですよね(笑)。書かれている言葉も難しいし、何が言いたいのかもよくわからない。私も勉強し始めた頃は「なんで、こんなこと書いてるんだよ?」なんて思ってましたから。

− では、その法律を扱う弁護士という仕事の面白さとは?

北村世の中って犯罪者だけが悪いんじゃなくて、民事の世界には犯罪には当たらないがとんでもなく悪いことしてるやつっていっぱいいるんですよ。そういう相手と戦って勝つのが、一番わかりやすい弁護士のやりがいです。

いい解決をした時は喜びも大きいです。「やったー」って感じですね。逆に負けた時は非常に辛い。死ぬまで頭から完全には抜けないでしょう。勝とうと思えない事件はそもそも引き受けませんから、どれも負けちゃいけない仕事なんです。でも稀に地裁で負けて高裁でもひっくり返らず、最高裁でもダメというケースもあります。これはもう「なぜだ?」ってやつですよ。

− その意味では結果がすべてとさえ思いますが、仕事で結果を出すには何が必要ですか。

北村まず論理的思考力がいりますよね。もちろん法律や判例の知識や検討能力もないといけない。あと、依頼者の話をきちんと引き出すコミュニケーション能力もなくちゃダメ。でも、最後の最後に大切なのは「諦めない」ということです。いろんな前提があった上で、最後は執念ですよ。「何か突破口があるんじゃないか?」ってとことん追求しなかったら、いい結果は出せません。

事件をやってる弁護士であれば、だれもが実感してることだと思います。「素朴な正義感からすれば相手に非があってこっちが正しい」と思っていても、「どうも勝ち筋が見えてこない」ことだっていっぱいあるんですよね。その場合に、「法律はこうなってるから無理だよね」という淡白な態度ではダメですよ。