賢者の仕事、賢者の健康

Vol.10私の書くものって、本当にラブストーリーなんですかね?
北川悦吏子氏 インタビュー(前編)

今回の賢者

PROFILE
脚本家、映画監督北川悦吏子

1961年12月24日生まれ、岐阜県出身。大学卒業後、プロットライターや製作アシスタントなどの制作に携わり、1989年に脚本家デビュー。1992年、「素顔のままで」(フジテレビ系)で連続ドラマの脚本デビューを果たす。その後、「あすなろ白書」(フジテレビ系)、「ロングバケーション」(フジテレビ系)や、「ビューティフルライフ」(TBS系)、「オレンジデイズ」(TBS系)など、数々のヒット作を手がける。活動は多岐に渡り、作詞やエッセイでも人気を集める。
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各界の一線で活躍するキーパーソンが、「仕事と健康」について語るインタビュー連載「賢者の仕事、賢者の健康」。今回のゲストは脚本家の北川悦吏子さんです。現在放送中の連続ドラマ「運命に、似た恋」の脚本も手がけている北川さん(NHK ※9月23日から毎週金曜22時。全8話)。「あすなろ白書」「ロングバケーション」など数々のヒット作で知られる“ラブストーリーの神様”の仕事スタイルとは?
(聞き手:河尻亨一)

一番大事なのは自分の中の納得度と完成度です

− NHKの「ドラマ10」で放送中の「運命に、似た恋」、1話目を拝見しました(取材は2016年9月に行われた)。この先どう展開していくんだろう? とハラハラしているわけですが(笑)、たとえばこのドラマの脚本だと、どれくらいの期間で書かれるんでしょう?

北川(悦吏子氏 ※以下、北川)取材期間も入れて1年くらいかかってます。全8話ですから短いんですけど。

− 「原田知世×斎藤工で贈る、大人の純愛物語」というキャッチフレーズがついているように、40代の女性と20代の男性の恋愛ドラマですね。北川さんも出席していた記者会見のVTRも拝見したんですけど、「考えに考えて書きました」とおっしゃってました。

北川今回のはね、なかなか大変だったんです。「彼は結局、運命の人なのか?」ということを8回に分けて見せていくわけなんですよ。オチはまだ言えませんけど(笑)、ちょっとサスペンスに似ているというか、ストーリー展開で見せていく部分が重要ですから、8話の構成の中の「どこでどのカードを切れば、一番面白く見てもらえるだろう?」というところに一番頭を使いましたね。で、何回も何回も書き直しをして。

− 「考えに考えて」というのは、今回に限らない北川さんのスタイルなのでは? 「脚本を書く」という仕事で大切なことは何でしょう。やはり視聴者に楽しんでほしいという思いでしょうか。

北川もちろん、最終的にはそこに届くわけですから、そのためにやっていますが、書いてる時はひとりです。孤独。だから、一番大事なのは自分の中の納得度と完成度です。プロとして何年もやってきてますから、自分の中のハードルも上げていかなきゃいけないし、結局「自分で自分にOK出せる」ところまで行けるか? ってことに尽きますね。

でも、自分の中にいつも“グラグラ”があるんです。「これってダメなんじゃない?」「いや、やっぱりいいよね」みたいな葛藤っていうのか、自分の中でも評価が変わる。するとやっぱり支えてくださる方が大事で、視聴者の方の「このお話好きです。何度もリピートして見てます」とか言ってもらえると嬉しいし、それがモチベーションになってまた書き始めるんですね。でも、書く時はやっぱり自分の中の作業になるので、自分が納得いくものを出していくのを一番に心がけていて。その繰り返しかな。

もうちょっと気楽にっていうか、作品と自分の距離を置いて達観できてればいいんですけど、私の場合、それがすごく難しいタイプみたいで。デビュー当初からずっとそういうスタンスですから、これはもう変わらないかなと。そういう意味では、もう仕方ないなと思ってます(笑)。