賢者の仕事、賢者の健康

Vol.15夢があった。目標があった。「オレ、勝たなくちゃいけない」って思ってた
具志堅用高氏 インタビュー(前編)

切り替えがすっごい大変なのよ、ボクシングって

− 世界チャンピオンになったらファイトマネーなども結構入ったりすると思うんですが、それでもそこを出て行こうとは思わず?

具志堅そうですね。大将の気持ちがやっぱり好きだったから。あと僕にとって、食事がすごく大事だったからね。練習が終わると、みんなと一緒に店で食事をとるんですけど、それもすごくいいなあと思って。大将がちゃんとした食事を作って出してくれてたから。

− お話をうかがってると健康的というのか、ストイックを絵に描いたような生活ですね。「トレーニングして食べて寝る」のシンプルな毎日を繰り返すという。

具志堅生活のリズム大事なんですよ。乱しちゃうとダメなのね。あのお店にいたからいい練習ができたんです。どんな強い人でも、私生活が悪ければそこで終わりなんですよ、スポーツ選手は。ロードじゃなくて女に走ったら終わりだね(笑)。私生活をちゃんとして、練習がしっかりできて、初めていい試合ができる。僕はそう思うけど。

− 具志堅さんは7年間の現役生活で、世界王座を13回防衛されて、私生活は乱れなかったんでしょうか?

具志堅乱れない、乱れない。

− それはなぜ?

具志堅夢があって、目標があったから。オレ、勝たなくちゃいけないって思ってたから。あと、遊んだらきついんだもん、練習が。ちゃんと睡眠とらないと、毎朝ロードワークはできないよ。昼間はとんかつ屋の仕事手伝ってまた夕方から練習。それの繰り返しだよね。大将もいいアドバイスくれてましたし。

やっぱり目標大事ですよ。それがあったらどんな苦しみも乗り越えることができるから。それがあるから遊びも楽しいんです。そこは徹底しましたよね。試合が決まると、終わるまで友だちにも会わない。みんなに「会わないでくれ」とか「頼む!誘わないでくれ」なんてお願いしてね。

− その毎日の中で「自分が強くなっていってるなあ」っていう実感はありましたか。

具志堅楽しかったよ。世界チャンピオンになったら、みんなに見られて。こんな楽しいことないっすよ(笑)。

− 注目されるのがお好きなんですか。

具志堅好き。楽しい。うん(笑)。電車の中で、「あっ、チャンピオンですよね?」なんて言われたら、「オレのこと、知ってくれてるんだ」と思ったりしてうれしいね。また頑張ろうって思う。そうなってくるとキツい練習も楽しいよ。

チャンピオンになって「有名人ってそういうもんかな?」ってわかったね。「ああ、みんな寄ってくるな」って思った。いい人も悪い人も。防衛のたびにそれがどんどんふくれあがっていったんですけど、恐ろしいよね、人って。

楽しみっていうことで言うと、試合が終わってから、みんなと喜び合えるっていうのも大きいんですけど、試合が決まったら逆に楽しみなんて1個もないのね。その切り替えがすっごい大変なのよ、ボクシングは。それができないと、プロの人間にはなれないね。

試合に勝つためには、徹底的に自分をコントロールできないと。減量はもちろんだけど、風邪ひいちゃダメだし、ケガしちゃいけない。ましてやサボるなんてありえない。遊ぶのは、やることをやればいくらでも遊べるんだから。そう思ってたね。

− ちなみに遊ぶのもお好きですよね?

具志堅よく銀座に誘われたね。「おいしい飯、食いに行こう」って。スポーツ選手も色んな人いましたよ、「なんで、あの人モテるのかな?」なんて思いつつね(笑)。

− 具志堅さんもモテたでしょう。

具志堅いや、モテましたよ。で、全部、ジムの会長のほうに回したなあ(笑)。まあ、僕は「引退するまでは結婚しない」と決めてたから。それはもうちゃんと頭に入れてましたね。