賢者の仕事、賢者の健康

Vol.7いろんなカタチに姿を変えていく。自分は「水みたいな人」だと思います
藤本隆宏氏 インタビュー(後編)

勝ち負けだけがオリンピックじゃないと思います。

− ご自身では階段を今どれくらい上がった感覚がありますか?

藤本あまり考えないようにしていますね。考えると登るのが苦しくなりそうで。ただ一歩を踏み出していきたいという気持ちだけがあります。

− 将来はこういった仕事がしたいといった未来像などについてはいかがでしょう?

藤本そこも意識してないですね。もちろん自分なりのイメージはありますが、それを口に出して言うことはなんとなくおこがましいような気もして……。もしかすると俳優らしくないのかもしれません(笑)。そもそもスポーツ選手から入っていますから。

− それは俳優とかスポーツ選手というよりも、藤本さんの人柄かもしれませんね。藤本さんとお話している時の言葉にできないこの魅力を読者にシェアしたいのですが、ご自身を例えると、何と表現するのが合うと思われますか?

藤本うーん、なんでしょう……。水ですかね? 「水みたいな人」というか。氷になったり水蒸気になったり、色んな形に変わることができる。ずっと水の中で生きてきたわけですし(笑)。

− そのスタンスが演技を見ている人たちにも伝わっているのではないかと思いました。今オリンピックが盛り上がっていますが、五輪に対して思うこともあるのでしょうか。

藤本自分はスポーツがやっぱり好きなんだなあと改めて思います。水泳を引退した後はほとんど見なかったんですけど、最近またスポーツを見るようになって。このあいだも代々木競技場に体操を見に行ってきました。

オリンピックに関して言うと、「勝つ・負ける」以外の部分にも注目していただきたいですね。オリンピックが平和のための祭典というのは本当にそうだなあと感じているんです。

世界中の人々がしがらみなく集い、競技を通して共感したり勇気をもらったりすることができます。それがスポーツの持っている力なんだと思うんです。自分自身はそこで「勝つ負ける」ということを経験してきましたから、「戦うのはもういいかな?」という思いもあって。

− 『真田丸』の堀田作兵衛みたいですね。ドラマでも「戦はいやなんじゃ」というセリフが出て来る(笑)。それはともかく、確かに「共感」はスポーツと演技に共通する力だと思います。

藤本ありがたいことに僕はその両方に感動することができました。そしてそこに身を委ねることで、今の人生もあるのかな? と思っているんです。

編集者/東北芸術工科大学客員教授 河尻 亨一

PROFILE

編集者/東北芸術工科大学客員教授河尻 亨一
雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心に多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集を手がけ、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。
現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。
  • カメラマン 瀬谷壮士
  • 更新日 2016.08.10