賢者の仕事、賢者の健康

Vol.7不器用なんでしょうね。自分がいるのは周りの方々のおかげです
藤本隆宏氏 インタビュー(前編)

自然体でいることの大切さを先輩方から教わりました

− 藤本さんは20代半ばで水泳選手を引退し、1995年に劇団四季のオーディションを受けて俳優の道に入りました。色んなインタビュー等で話されていますが、大変な思いもされたのでは? どのあたりで手応えのようなものをつかまれたのですか。

藤本まだまだ道半ばではありますけど、ちょっと吹っ切れたのはこの数年くらいですかね? 劇団新派に客演で出させていただくようになった頃、座長の水谷八重子さんから「一生懸命練習し過ぎで、逆に人と噛み合わなくなっている」と言われまして。コミュニケーションが大事なんだよ、ということを教わり、そのあたりから楽になれた気がします。まあ、不器用なんでしょうね(笑)。

− お話をうかがっていて、不器用というより謙虚な方という印象を受けます。淡々としているというか。藤本さんのことを書いた『無骨なカッパ 藤本隆宏』(著:松瀬学)という本もありますが、まさにそのタイトルのイメージというか。

藤本いやいや、仕事を与えていただいてますから。事務所のスタッフにもとてもお世話になってますし、自分がいるのは周りの方のおかげだと心底思っていますので。ほんとはもっと自己主張したほうがいいのかもしれませんけど、自分にはこういうスタンスが馴染むんでしょうね。

楽屋でもほかの役者さんらとプライベートの雑談など活発にしないタイプの俳優かもしれません(笑)。

− 主に舞台をやって来られて、テレビドラマでは「坂の上の雲」(NHK/2009〜2011年)の広瀬武夫中佐役が話題になりました。

藤本あの体験も大きかったんですよね。本木雅弘さんと阿部寛さんが近くにいてくださったんですけど、お二人から影響されていると思います。本木さんも阿部さんもほんとに自然体というか、言われたことや相手の要望に対して「どうしよう?」というスタンスで演じていて、「いかにその瞬間に集中できるか?」が大事だということを教えてもらいました。

− 不器用というふうにもおっしゃいましたけど、「ナチュラルな無骨さ」みたいなものが藤本さんの魅力なのでは? 『JIN-仁-』(TBS/2011年)の西郷隆盛も無骨な役だと思うのですが、そういったところも、「ほっこりする」といった感想に結びついているのではないでしょうか。「昔気質の日本の男」みたいな。

藤本そう言っていただけるとうれしいです。まあ、悪役をやってる時は、結構コテンパンに言われたりもするんですけど(笑)。

たとえば『ガラスの家』というドラマで(NHK/2013年)、斎藤工君の父親役をやったことがあるんですね。その父親の再婚相手が井川遥さんで、彼女を息子と取り合う役をやった時はかなりやられました(笑)。

− それは憎まれてなんぼの役なのでは? 「ほっこり」させちゃうとマズいですから(笑)。

藤本それでもそのお父さんが好きといってくださる方もいて、やっぱりうれしいんですけどね。