賢者の仕事、賢者の健康

Vol.12大事なのは「この人のために作るんだよ」と思えるかどうか
陳建一氏 インタビュー(前編)

仕事だけが人生だなんて思ってないから

− 陳さんはゴルフがお好きなんですね。

自分のゴルフ仲間にはカテゴリーが3つあって、ひとつ目はどこまでもやるヤツ。つまりゴルフバカ。ようするに僕みたいな人(笑)。日が暮れるまでずっとやってる。それはカテゴリー1なの。2はふつうに楽しむ人。3は雨降ったらやめる人。その3タイプがあるんですけどね。で、僕が年間200ラウンド以上やれる理由は、カテゴリー1の友だちがいっぱいいるから。

− えっ? そんなにやってらっしゃるんですか。

去年(2015年)は248ラウンドやってるの。今年もすでに200ラウンド超えてるんだ。僕は仕事だけが人生だなんて思ってないから、人生豊かに生きたいわけですよ。どっちかと言うと、調理場だけに籠ってね、ガッーとやるタイプじゃなくて、いろんなところを飛び回る料理人なんです。で、何が大事かと言うと、自分が幸せでいること。

でも、会社やってますからね。ちゃんと会社が動かなかったら、みんな生活できないよね? 僕がゴルフばかりしてたら(笑)。そのためにうちの息子が社長を継いだんです。弟子もちゃんと育てたわけです。わかります?(誇らしげな表情になる)

− いま、顔で妙に納得してしまいました(笑)。ところで実は取材前に今日初めて「赤坂四川飯店」の麻婆豆腐をいただいたんですけど、陳さんを前にしてうまくは言えないんですが、美味しいものですね。感動なレベルというか。

いや、いいんですよ、それで。専門家じゃないんだから。単純に「おいしっ!」っていうのが大事ですよね。で、美味しいと思ったということは、合ったんですよ、うちの料理に。合わない人だっているんだから。100パーセントの料理なんて絶対できない。誰が食べても美味しい料理なんてこの世に存在しないの。あったら気持ち悪いですよね?

だからパーフェクトは目指さない。そんなことしてたら人間疲れちゃうしね。ミスしていいわけじゃないんだけど、「えっ?」っていう部分もあっていいと思う。そうしないと長続きしないですよ。

で、長く続けるためには、やっぱりファンを増やしていくことが大事で。食べて気にいってくれた人がまた来てくださるわけ。そうなるとなおさら「自分が大事な人に作る気持ち」でやらないとダメだよね。それがプロなんだよ。僕たちは調理場に一歩入ればスイッチオンですから。

そりゃイヤなことだってありますよ、僕だって。例えばの話、どこか仕事先に行くわけじゃないですか。ホテルに呼ばれたりして。それでね、「おはようございまーすっ!」て入っていきますよ? その時調理場からの挨拶が全然なかったりさ。テンション下がりますよね。そう思いません? でも、お客さんに罪はないですから。陳建一の食事を楽しみに来てくださってるわけじゃないですか? だったら一生懸命やるしかないですよね。

− どんな仕事でもそうかもしれないですが、元気っていうのはポイントかもしれないですね。

絶対元気あったほうがいいと思うんですよ。電話一本のやり取りも大事なんですよね。例えば調理場に電話がかかってくるとするじゃないですか? その時に、(ダルそうな声で)「は〜い…赤坂四川飯店調理場で〜す」みたいな。もうそっからダメなんですよ、自分ところの店は。自分がされてイヤなことはしないのが僕のポリシーだから。

うちの店は3食付きなんですよ。朝昼晩と食べるの、全員で

− さっきおっしゃったように、お客さんのほうを見なきゃというのも大事なことですよね。

もちろんですよ。ただ、注意しないといけないのは、十人十色なんです、お客さんも。例えば料理を楽しむことは二の次で、商談とか情報交換が目的でいらっしゃる方だっていますよね? そういうお客さんにいちいち「今日のこちらのお料理は」なんて説明する必要ないし、しちゃったら逆に迷惑なんですよ。でも、家族連れでね、遠方から食べに来るお客さんもいらっしゃるわけじゃないですか。その時はちゃんと説明しないとね。

だから僕、マニュアルって好きじゃなくて。好みの味が人それぞれであるように、お客さんの性格や目的も全部違うんだから。でも、マニュアルがないと人間って動けないですよね? 交通ルールみたいなものがないと大変なことになっちゃう。

− 臨機応変に動けと言われても難しいところもありますね。

うん、優秀な人が臨機応変に動けば、何の問題もないですよ。でも、そうじゃないヤツもいるわけですよ。でも、そこが面白いんですよ、世の中っていうのは。だから色んな経験したほうがいいよね。例えば海外へ行ってごらんなさいよ。日本では考えられないような面白いことがいっぱい起こるから。僕もイベントとかゴルフの合宿でしょっちゅう行ってるんだけどさ。

− 作るじゃなく食べるほうも色んな経験をされてきたと思うのですが、好き嫌いはないんでしょうか。

なんでも大丈夫。僕にとって「食べる」ってことはすごく大事なの。

− よく「医食同源」なんて言って「中華料理はからだにいい」みたいなイメージもありますが。

いや、からだにいいっていうか、料理なんていうものはさ、どれがからだにいい、悪いなんて言えないと思いますよ。確かに「糖尿病の方にはこういう食事」っていうのはありますよ。でも、基本的に一番大事なのは、楽しく美味しく食べること。そりゃ暴飲暴食すれば誰だって病気になるわな、と。そんなの昔からわかってることであって。

健康にいいのはさ、やっぱり3食きちんと食べるってことでしょ? で、よく働きよく遊ぶ。食事するのも楽しく食べるのとイヤイヤ食べるのでは全然違いますからね。何事でもそうなんだけど、常に「ありがとう」とかそういう気持ちを持って接しないと。ちなみにうちの店は3食付きなんですよ。朝昼晩と食べるの、全員で。

− まかないですね。3食なんですか?

当たり前でしょう? 1日3食なんだから。実際には1食の店も多いんだけどね。

− 赤坂四川飯店の皆さんはどんなものを食べてるんでしょう?

うちは朝は味噌汁とお野菜の炒め物と納豆。昼は中華以外だね。中華作っちゃいけないの昼間は。勉強のために中華以外のものを作る。夜は中華料理。余った材料をうまく工夫して、店で出す味付けの料理を食べる。そしたらチェックできるじゃん、僕たちで。「もうちょっとこうしたほうがいいよ」とか。ちゃんとシステムができてるんですよ。