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Vol.5知っているようで意外と知らない「漢方」
特長を理解して上手にお付き合いを

古くから伝えられ、今もなお注目を集めている「漢方」。でも、漢方について誰もがくわしいわけではありません。正確な情報を知らない方も多いのでは? 漢方には、正しく活用すれば有用な効果が得られるものがたくさんあります。うまく付き合うためにも、漢方についてあらためて知っておきましょう。

漢方って? 生薬って?
そもそも一体どんなもの?

漢方は東洋医学のひとつで、中国から伝えられた医学理論を基礎として日本で独自に発達したものです。
西洋医学が病気の原因に対して治療を行うのに対して、漢方では身体を一つの体系とみなし、生じる不調はそのバランスの崩れによるものと考えます。そこで、過不足を補い、巡りをよくし、本来あるべき身体の状態に戻していくのです。

そして、漢方をはじめ世界各地の伝統医学で多く用いられているのが「生薬」です。生薬は、薬効成分を含んだ植物・動物・鉱物などを乾燥させたり、加工したりしたもの。これらの複数の生薬を組み合わせてつくられるのが「漢方薬」です。
漢方薬には煎じ薬・丸薬・散剤など、さまざまな剤形がありますが、煎じ薬を忙しい現代人にも手軽に飲めるようにしたエキス剤というものもあります。「漢方は苦くてまずい」という印象を抱くかもしれませんが、剤形が違えば、飲みやすくなるかもしれませんね。

漢方薬と、合成成分が配合された西洋薬。
どこが違う? どう使い分ける?

内服薬においては、合成成分が配合された西洋薬は錠剤になっているものが多く、飲みやすさも特長の一つです。
一方、多種の自然原料に由来する漢方薬(エキス剤、内服液など)は、飲みにくくても、その苦みや辛み、甘みなどの味覚刺激もまた治療のひとつである、と考えられています。

西洋薬に比べて漢方薬は「効くまでに時間がかかる」とか「副作用がない」などと思われがちですが、実際には、漢方薬にも即効性を持つものもありますし、もちろん、漢方処方によっては身体に合わないこともあります。
たとえばそれは、西洋ハーブのサプリメントなどについても同様です。西洋ハーブのサプリメントは医薬品ではなく、その効果については厚生労働省が認めたものではありません。しかしながら西洋ハーブの種類によっては欧州では医薬品として使われているものもあります。「漢方薬は西洋薬より安全だ」「ハーブのサプリメントは漢方薬より効き目がゆるい」といったことは、根拠に乏しいイメージにすぎません。自分に必要なものは何か、しっかりとしたエビデンスと自分との相性をもとに薬を選ぶことが、セルフメディケーションでは大切です。

西洋薬と漢方薬に優劣はないので、薬剤師と相談の上で、自分に合ったものをお好みで選んでください。西洋薬を試したけれどあまり効果を感じられない、という方が漢方薬を選ぶケースもたくさんあります。ちなみに、冷えや不定愁訴などは漢方の得意領域です。
東洋医学には未病という考え方があり病気にならない体質を目指すことも含めるのに対し、病気の治療のソリューションを薬が果たすという西洋医学の視点の違いも面白いですね。るため、西洋医学と漢方では治療へのアプローチが異なりますから、選択肢として西洋薬もあるし漢方薬もある……と考えておくのがよいかもしれませんね。

ドラッグストアでも入手できる漢方薬。
西洋薬と併用しても大丈夫?

生薬は、専門薬局以外ではなかなか目にする機会がありません。一方で漢方薬は、普通の薬局やドラッグストアにもたくさん置かれています。それだけに身近な存在ですが、使用するにあたっては注意しなければならない点があります。それは、漢方では主訴(患者が最も強く訴える症状)が同じでも、体質(虚実)、病気の進行具合(三陰三陽)、気血水と呼ばれるバランスの状態によって、選ぶべき処方が異なってくることです。自分がどの状態にあるかを確認した上で、処方を選ばなければなりません。

そのほかにも、同じようにドラッグストアで売られている漢方薬と西洋薬、この併用は可能かどうか? が気になる方も多いでしょう。

結論から言えば、漢方薬と西洋薬は併用できます。ただし、市販の風邪薬に関しては、西洋薬に分類されるものでも生薬成分、または漢方生薬同様の有効成分が含まれていることがあるので、それらの重複には注意が必要です。その点に気をつければ、2時間ほど時間をずらして服用することで、併用が可能になります。

すべての薬剤師が漢方に詳しいとは限りませんので、より細やかなアドバイスを受けたい場合には「漢方認定薬剤師」に相談するのも一つの方法です。1人だけでなく、何人もの信頼できる薬剤師に相談することは、あなたのセルフメディケーションをいっそう確かなものにしてくれるでしょう。

PROFILE

村上 綾さん
ドラッグストア勤務、総合病院勤務を経て、現在漢方薬局に勤務の現役薬剤師。
OTC 薬、処方せん医薬品、漢方に関わってきた知識を活かし、セルフメディケーションを広めるべく活動している。
  • イラスト 水口アツコ
  • 更新日 2017.03.01

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