薬を購入するためにドラッグストアに足を運んだものの、店頭でさまざまな種類の薬のパッケージを目にするうちにあれこれ悩んで無駄な時間を使ってしまうこと、ありませんか? そんなときは、まず薬剤師にひと声かけてください。あなたにお伝えしたい「私たちだから知っている大切なこと」があるからです。
市販薬は、含有する成分が、使用方法の難しさ、相互作用(のみ合わせ)、副作用などの項目で評価され、大きく要指導医薬品、第1類医薬品・第2類医薬品(・指定第2類医薬品)・第3類医薬品に分類されています。
第2類医薬品・第3類医薬品は登録販売者でも対応できますが、要指導医薬品、第1類医薬品は薬剤師が対応しなければ販売できません。
多くのドラッグストアや薬局には要指導医薬品、第1類医薬品の販売を行う薬剤師がいますが、営業時間内に薬剤師が必ずしもずっといるとは限らないので、その不在時間は対象製品が購入できないため、対象製品の購入時は予め注意が必要です。
ところで皆さんは、ドラッグストアや薬局を訪れた際、何を基準に薬を選んでいますか? 思い込みによる自己判断や知名度、コストパフォーマンスだけで選んではいないでしょうか。
本来、薬を選ぶにあたっては、
① 使用禁忌、使用に際して注意する人
② アレルギー歴
③ 副作用歴
④ 注意すべき職業内容・作業・行為
⑤ 妊娠
⑥ 授乳
⑦ 乳幼児・小児・高齢者
⑧ 医療機関に受診中の疾患
⑨ 併用薬
に関して、まずは自分自身で安全性を考慮しなければなりません。
さらに、配合成分や剤形、用量なども自分に合った薬を選ぶということが、セルフメディケーションの理想であり、大切なことです。
しかし、これだけたくさんの事柄に注意を払いながら適切な判断を下すのは、一般の方にはなかなか難しいと思います。ぜひ、薬剤師にアドバイスを求めていただければと思います。薬剤師に聞くことで、目的にきちんと適った薬を安全に利用しやすくなるのはもちろん、治療へのアプローチのヒントや、市販薬ではなく受診による治療へ切り替えるポイントなども知ることができますよ。
不調を抱える人が自ら選ぶことができる薬、それが市販薬です。一方、処方薬は、医師による診断を受け、その結果をもとに処方されます。
市販薬の中でも、要指導医薬品や第1類医薬品については薬剤師が対応しなければ販売できないと先述しました。それは要指導医薬品や第1類医薬品にはもともと医療用医薬品だったものが多く、かつて医師や薬剤師との間で実施されていた相談や確認を、引き続き行うことでより正しく使うことが求められているからです。
もっとも、要指導医薬品、第1類医薬品に限らず、第2類や第3類であっても、疑問に思う点があれば、直接店員に確認したり、薬剤師による説明を受けたりするべきだと私自身は考えています。
たとえば、アレルギーや副作用は、こうした薬の分類にかかわりなく、起こり得るものです(薬に限らず、ソバや卵のアレルギーの方がいるように、アレルギーは体が異物と判断されたものに起こるので、成分自体の効き目の強さや、もともと医療用成分であることとは関係がありません)。
アレルギー歴や副作用歴をご自身で把握しておくのと同時に、薬剤師にアドバイスを求めることで、自己判断では見過ごしてしまいがちなリスクを避け、より安全かつ有効に市販薬を使用できるようになります。
そこでおすすめしたいのが「お薬手帳」の活用です。
受診後、調剤薬局で処方された薬に関するシールを貼ってもらう人も多いでしょう。それに加えて「お薬手帳」には疾患、アレルギー、副作用などの既往歴を記載するページもあります。このページにしっかりと情報を書き込んでおいて、ドラッグストアや薬局で市販薬を購入する際に薬剤師に見せれば、原疾患に与える影響や処方された薬との相互作用はもちろん、アレルギーや副作用までふまえて薬剤師が総合的に判断できるため、患者さんはご自身にとってより安全で有効な薬を選べるのです。
さらに、購入した市販薬の記録も「お薬手帳」に残すことで、受診時に「お薬手帳」を持参すれば、医師に薬を処方してもらうときにも役立ちます。
そして、市販薬の購入に関係する新しい税制度がスタートしました。
OTC医薬品の購入費用が高額になったとき、一定の条件を満たせば医療費控除の特例として所得控除の対象となる「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」が、2017年1月から始まっています。
「セルフメディケーション」とは、自分自身で健康管理を行い、軽度の体の不調は自分で治療すること。セルフメディケーション税制では、対象となる市販薬を年間1万2000円以上購入した場合、条件を満たしていれば最大10万円購入分まで、確定申告を行えば、税金が一部戻ってきます。
対象となるOTC医薬品は、医療用医薬品でも使われている83成分を含む約1,600品目(2017年1月現在)です。識別マークが目印になっており、解熱鎮痛剤や風邪薬、抗アレルギー薬や湿布などの外用薬などが幅広く含まれます。
この控除を受けるためには、
・所得税、住民税をおさめていること
・健康の維持推進および疾病への予防への取り組みとして予防接種や健康診断などを行っていること
・対象となる医薬品を1万2000円を超えて購入していること(扶養家族分は合算できます)
といった条件が定められています。
確定申告をする際にはレシートや領収書が必要なため、大切に保管しておきましょう。また、医療費控除との併用はできないので、注意が必要です。
「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」についてよりくわしく知りたい方は、こちらのサイトも参考にしてください。
・セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)についてくわしくはこちら
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