男性更年期障害って何?症状と治療法とは?【前編】

2025年11月17日
女性の閉経前後の約10年間を「更年期」と呼ぶことは広く知られていますが、実は男性にも更年期障害があり、更年期特有の症状(医学的にはLOH症候群)があることをご存知ですか?男性更年期(※1)についての認知が広がってきたのがまだ数年ということもあり、なんとなく不調が続いても、男性自身でその症状に気づきにくいケースも。今回はパートナー目線で男性更年期障害(※2)について学びつつ、お互いが心もからだも健やかに過ごせるような、パートナーへの接し方についても一緒に考えていきましょう。
※1 男性更年期:加齢変化やストレスによってテストステロンという男性ホルモンが低下し、心身に悪影響がある状態のこと。※2 男性更年期障害:男性更年期によって自覚することのある症状を包括的に指し示す言葉。
[お話を聞いたのは…]

男性更年期とは、加齢変化やストレスによってテストステロンという男性ホルモンが低下し、心身に悪影響がある状態のこと

―女性の更年期障害と同じように、男性更年期障害には定義がありますか?
明比:男性更年期障害の定義は国ごとに異なります。日本独自の定義としては、加齢変化やストレスに伴い、テストステロンという男性ホルモンが低下することで起こる症候群、またテストステロン(男性ホルモン)低下に伴う多臓器の機能障害をきたす病態のことを言います。ストレスが原因であることも多いため、誰にでも起こりうる可能性があります。
―主な原因は加齢とストレスということですが、飲酒や肥満などの生活習慣は男性更年期障害と関係がありますか?
明比:アルコールの過剰摂取はテストステロンの低下を招くため、飲酒は適量を!楽しく飲む程度で、それによってストレスが発散できるならば問題ありません。また、肥満になると、テストステロン(男性ホルモン)の分泌が低下します。男性更年期障害のことを考えるならば、肥満にならないように、生活を管理するのが望ましいでしょう。
―男性更年期について認知が広がってきたのはいつ頃からですか?
明比:一般の方々へより認知が広がってきたのは、メディアが取り上げるようになった、ここ5〜6年くらい(2020年前後以降)だと思います。日本では2007年に初めて、男性更年期の診断の手引きが作成されており、その時点では加齢が主な原因とされていました。そこから2022年の手引きの改訂(※)で初めて、ストレスも男性更年期障害の原因になることが加筆されました。
※出典:日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会・LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き作成委員会 編『LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き』
―先生のもとへ男性更年期について相談に来る男性には、どのような人が多いですか?
明比:ネットを通じてご自身で症状を調べて受診される方や、ご本人ではなくパートナーが予約を取られるケースもあります。実際に診てみると、その原因の多くは加齢よりもストレスという人の方が多い印象です。一方で、テストステロン(男性ホルモン)を生成・分泌する精巣そのものの働きが落ちている場合は、加齢が原因であることがほとんどです。
―男性更年期症状が生じやすい年齢層はありますか?
明比:基本的には30代から60代です。特に多いのは40代、50代の方ですが、30代の方でもストレスが原因で男性更年期障害の症状が出ることもあります。
男性更年期の症状はテストステロン(男性ホルモン)の低下に伴い起こる

―テストステロン(男性ホルモン)が低下することで、男性の更年期障害が起こるということでしたが、その自覚する症状にはどんなものがありますか?
明比:女性の更年期と似ている症状もありますが、性欲や筋力の低下については男性更年期ならではと言えます。テストステロン(男性ホルモン)の低下は、朝勃ちが起こらないことやED(勃起障害)、性行為の回数などとの相関が強いと言われています。
―なんとなく不調が続いていても、自身が男性更年期の状態であると気付かず、放置してしまうとどうなりますか?
明比:一過性のストレスが原因の場合は、ストレスのもとが解決すれば自然と良くなる可能性があります。一方で、職場や家庭など慢性的なストレスや加齢が原因の場合は、症状はずっと続いてしまうことになります。
実際に医療機関で行われている男性更年期の問診や治療方法とは?

―男性の更年期障害が疑われる場合、医療機関では何科を受診したら良いでしょうか?
明比:泌尿器科、または男性更年期外来をしている内科を受診しましょう。
―具体的にはどのような問診や治療が行われますか?
明比:当院ではAMSスコア(※)(男性更年期障害質問票)という17項目の質問と、うつスコアの問診を行っています。ただし、AMSスコアは診断の補助として参考に使用しますが、確定診断は医師の判断となります。他の疾患(うつ病、甲状腺疾患など)との鑑別が大切です。さらに、採血で男性ホルモン値の測定を行い、治療適応は年齢・血液検査値・症状から総合的に判断します。
※出典1)Heinemann LA, et al. Aging Male 2:105-114, 19992)小林皇 他:Aging males’ symptoms (AMS) スコアの因子分析. 泌尿器科紀要 55: 475-478, 2009
―男性更年期にはどのような治療が考えられますか?
明比:症状と男性ホルモン値から男性更年期障害の疑いがあれば、男性ホルモンの補充療法や漢方薬を処方します。男性ホルモンの補充に関して現在日本で保険適用があるのは、筋肉注射のみです。自由診療であれば、男性ホルモンのジェル製剤を塗布するという選択肢もあります。男性ホルモンを補充する目的の市販薬もありますが、投与は専門医指示のもと慎重に行うようにしてください。
―実際に治療を受けた人で、どのような変化が見られましたか?
明比:明らかにテストステロン(男性ホルモン)が低下している人には、効用が高いようです。男性ホルモンの補充療法として一回筋肉注射を打っただけで、二週間後の診察時には本人も効果を実感される方もいます。当院では、二回ほど打ってみてあまり効果がない人はそこでやめて、男性更年期障害以外の原因を疑います。
後編では、パートナー目線で行う男性更年期障害のチェックリストや、パートナーが男性更年期かもしれないと思った時の接し方について詳しくお聞きします。
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