喉の乾燥を防いで風邪を予防。医師が教える、家族でできる喉ケア方法

2025年12月01日
寒くなると、大人だけでなく子どもたちのあいだでも流行り始める風邪やインフルエンザ。子どもの体調が悪くなる前に、できれば家庭で対策をしておきたいですよね。
家庭における対策方法といえば「手洗い・うがい」が定番ですが、特に喉のケア(以下、“喉ケア”)は症状の悪化も防ぐため重要です。とはいえ、具体的にどんな方法で喉を守れば良いかわからないという親御さんもいるのではないでしょうか。
そこで今回は、耳鼻科医の吉越彬先生に、喉の不調が出る仕組みや喉が痛くなった際の対処法に加え、普段からできる喉の乾燥対策についてお話をうかがいました。子どもの健康を気遣う子育て世帯に向けて、親子で実践できる“喉ケア”の方法をお届けします。
寒い季節こそ、喉の乾燥対策が重要
――風邪やインフルエンザの予防として、“喉ケア”が重要と聞いたことがあります。その理由は何なのでしょうか。
吉越:“喉ケア”が重要とされているのは、喉がウイルスの感染経路の一つであるためです。
喉が乾燥すると、粘膜が持つウイルスを外に流す働きが弱まり、風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。とくに冬は空気が乾燥しやすいので、喉の潤いを保つことがとても大切なんです。

吉越:ただ、喉が乾燥しやすい人は、鼻に問題を抱えていることも少なくありません。たとえば鼻呼吸ができないと、口のなかが乾燥しやすかったり、ウイルスが体内に入るのを食い止める鼻の“フィルター機能”を活用できなかったりするため、いわゆる“喉風邪”を引きやすくなります。
喉に症状があると、どうしても喉そのものに意識が向きがちですが、原因を正しく見極める必要があるんです。
――子どもは大人よりも風邪やインフルエンザにかかりやすいと感じている親御さんも多いかと思います。子どもと大人とでかかりやすさに違いはあるのでしょうか。
吉越:大人と比べてからだの小さい子どもは、免疫が十分にできあがっておらず、風邪やインフルエンザに限らず、体調を崩しやすいです。また、小学校や保育園に通っていると集団行動が多いので、風邪をもらいやすいという環境的な要因もあります。ただし年齢に関係なく、日常的な“喉ケア”を行うことが大切です。
――風邪やインフルエンザにかかったとき、喉の痛みはどうして起こるのでしょうか。
吉越:喉の痛みは、ウイルスが粘膜に付着し、その部分を傷つけることでからだが防御反応を起こし、炎症物質を出すことで生じます。こうして炎症が起こると、腫れや痛み、声のかすれといった症状が出てくるんです。
家庭でできる喉の乾燥対策とは?
――風邪やインフルエンザの予防として、効果的な“喉ケア”方法を教えてください。
吉越:喉が乾燥していると、口の中のバリア機能が低下し、ウイルスが感染しやすくなります。したがって、喉の乾燥を防ぐためにマスク(※)やうがい、部屋の加湿は“喉ケア”の基本です。
とくにうがいには乾燥を防ぐだけでなく、口の中にいる菌やウイルスを外に出す役割もあるのでおすすめです。
※厚生労働省は2歳未満の子どもにはマスクの着用を推奨しておらず、2歳以上の就学前の子どもに関してもマスク着用を一律には求めていません。※マスク使用時には、ご利用になる製品の使用上の注意を必ずあらかじめご確認ください。

――“喉ケア”をちゃんとしていても、痛みや腫れなどの不調が出てしまったときに、家庭ではどのような対処ができるでしょうか。
吉越:マスクやうがいには予防だけでなく、さらなる症状の悪化を防ぐはたらきもあります。
また、鼻水が出ている場合は鼻水を出して鼻の通りを良くし、口呼吸を防ぐことも大切です。状況に応じて喉の痛み止めや鼻づまりを緩和する市販薬を使うことも、家庭でできるケアの一つです。
――マスクやうがいをするのが難しい、乳幼児の場合はどのように対処すると良いでしょうか。
吉越:積極的に水分を摂ってもらうことが大切です。水分や食事をきちんと摂れるかどうかは、体調のバロメーターにもなります。
もしも水分や食事を摂れない場合は家庭でのケアにも限界があるので、ぜひ医療機関を受診していただけたらと思います。
――親子ともに“喉ケア”に役立てられる飲み物・食べ物には、どんなものがあるのでしょうか。
吉越:意外に思われるかもしれませんが、“喉ケア”に適した食べ物の一つとしてガムをおすすめしています。ガムを噛むと唾液が分泌されて喉が潤うためです。
一方、甘いガムや飴を口にすると一時的に唾液の量が減り、かえって口の中が乾燥してしまうことにもなりかねません。そのため、“喉ケア”を主な目的としてガムを嚙む場合には、なるべく無糖のものを選んでいただきたいですね。
――“喉ケア”をしていても痛みが出てしまった場合、医療機関に連れて行くかどうか迷う場面もあるかと思いますが、判断の目安はありますか。
吉越:熱がなくてもぐったりしている場合、ご飯を食べられないくらいに喉を痛がる場合は、医療機関に行くことをおすすめします。受診して原因がはっきりすれば親御さんも安心できますし、少しでも「心配だな」と思ったら医療機関に行っていただけたらと思いますね。
それでも、医療機関に連れて行きたくてもお仕事やお住まいなどの事情ですぐに行けないこともあるでしょうから、ご家庭で対処できる方法も知っておいていただきたいですね。
家庭内で誰かが風邪を引いたら?
――冬に暖房をつけていると、部屋が乾燥して風邪やインフルエンザのリスクを高めてしまうのではないかと思います。暖房をつけるときに気をつけるべきポイントはありますか。
吉越:暖房を使うときは、水分を含んだタオルをベッドの近くに干したり、加湿器を活用したりして、部屋の湿度を保つようにしましょう。
寝るときにマスクをつけて、喉の保湿をするのもおすすめです。

――家族の誰かが風邪やインフルエンザにかかった場合、家庭内感染を防ぐために気をつけるべきポイントがあれば教えてください。
吉越:家族の誰かが風邪やインフルエンザに感染したことがわかった時点で、すでにほかの家族も罹患している可能性があります。
少しでも感染のリスクを下げる方法として、部屋の隔離や定期的な換気、つねにマスクを使用するなどの方法が有効ですが、家庭内感染を完全に防ぐのは難しいといえます。
だからこそ、家族が体調を崩したときは、まずはその人の症状が悪化しないようしっかりサポートしましょう。万が一、家庭内感染で自分も体調を崩してしまっても、自分を責める必要はありません。それは「しっかり子どもに寄り添ってケアしていた証拠」だと前向きに受け止めてほしいですね。
――子どもの“喉ケア”を習慣化させるために、親はどのような声がけや手助けをすると良いでしょうか。
吉越:「外から帰ってきたら手を洗ってうがいをしようね」などと地道に声をかけていくのが良いと思います。そのときに、子どもに言って聞かせるだけだと説得力がないので、まずは親御さんが実践して見せることが大切です。
風邪やインフルエンザは年齢に関係なくかかるものですから、親子で一緒に、日常から“喉ケア”を実践していただきたいですね。
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