更年期はいつから?高尾美穂先生と聞く、経験者3人の症状と体験談

2026年09月15日
女性なら誰もが迎える更年期。元気に過ごせる人もいる一方で、さまざまな症状に悩まされたり、仕事や日常生活に影響が出たりする人も。プレ更年期とも呼ばれる30代後半から40代のなかには、「更年期って実際どのような症状が出るの?」「どう過ごせばいいの?」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。
今回は、更年期をまさに経験中の3名と、産婦人科専門医の高尾美穂先生を迎えて座談会を実施。更年期の症状のリアルや自分に合うケアの見つけ方など、経験者だからこそ語れる本音をじっくりうかがいました。
不眠、月経過多、ホットフラッシュ……。更年期症状のリアルな悩み
―まずは皆さんが更年期の不調を感じはじめたきっかけや、どのような症状があったかを聞かせてください。
青柳:今年の3月、お店に立っていたら突然ひどいムカつきが起こって。頭痛も腹痛も重なり、「もしかしてこれは……」と思ったことが、更年期の不調を感じたきっかけです。
振り返ってみると、去年の秋ごろから手を伸ばすと肩に痛みが走るようになったのですが、忙しくてずっとごまかしていたんですよね。その痛みに不眠まで加わり始めたので、近所のクリニックにかかったところ、「更年期障害」と言われました。

和:私は30代の終わりに母が亡くなったことをきっかけに、急に太り出したり不調を感じたりすることが多くなったため、その頃からホルモンバランスが崩れてきたのかなと感じていました。
40代半ばごろから不調が本格的になり、不眠やホットフラッシュに悩まされて。一番ひどい時期は、1、2時間おきに滝のような汗で目が覚めてしまい、全く寝られませんでした。メンタル面でも、うつっぽくなって、「私がいてもいなくてもいいんじゃないか」なんて考えるときもありましたね。
関根:私が更年期を意識しはじめたのは40代前半で、生理のときの経血が一気に増えたことがきっかけでした。健康診断の婦人科で相談したところ「大きいナプキンやタンポンで対処を」と言われて。閉経前で生理周期が読めなくなったいまでも生理用品は常に持ち歩くようにしています。ここ何年かは、寝つきが悪かったり、夜中に寝汗をかいて目が覚めたりするのが続いている感じです。

関根:でも更年期が怖かったかっていうと、あんまりそうでもなくて。来るべきものだから仕方ない。それよりも「肌触りのいいナプキンや使いやすいタンポンを探してみよう」と、何か新しいものを試すいい機会というふうにとらえていました。
―関根さんは、とても前向きですね。ほかのお二人はすんなりと、これが更年期の症状だと受け入れられましたか?
青柳:私は医療系のライターをずっとやっていたこともあり、少し知識があったので受け入れやすかったように思います。不調があったときに「これが更年期の症状かな?」と気づくことができたんです。
和:更年期ってパキッと急なタイミングで始まるわけじゃないので、「不調な日が多くなってきたな」というところから、じわじわ突入していくんですよね。私の場合は姉が少し先に経験していたので、気になる症状があれば相談していて。「よくあることだよ」と言ってもらえて安心できました。
更年期の不調は、真面目でちゃんとしている人ほど要注意
―高尾先生、更年期とはどういう時期なのか、あらためて教えていただけますか。
高尾:更年期に対してそんなに身構えるほどでもないよ、というのがこれから言っていきたいことです。
更年期はあくまで、人生のある時期を指す言葉。成長期や思春期と同じで、全ての女性が「更年期」という時期を迎えます。一般的には閉経の前後5年ずつ、おおよそ45歳から55歳ごろ。この時期に卵巣の機能が低下して女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少し、心身にさまざまな変化が生じやすくなります。

―更年期の症状が強く出る人とそうでない人がいるのはなぜなのでしょうか?
高尾:いろいろありますが、その人の性格も関わっていると言われています。時間を守る、約束を守る、仕事をきちんとやる——そういう「真面目でちゃんとしている人」ほど、更年期の不調が重く出やすいとされているんです。
でも、社会人あるいは家庭で役割を持っている方は、みんなちゃんとしていると思うんですよね。仕事が終わっても、家に帰れば夕飯をつくって、洗濯をして、子どものことをして……気づけば自分の時間がほとんど残っていない。日頃の忙しさや睡眠不足が積み重なることで、からだはホルモンの揺らぎに対応しにくくなります。
また、実はPMSが重い人は更年期の症状も重くなりやすいことがわかっています。PMSも、更年期の不調も、その時期だけの問題ではなく、それまでの生活習慣と深くつながっているんです。

―皆さんは、性格や忙しさ、生活習慣など思い当たる節がありますか?
関根:もう、いっぱいあります。結婚してから子育てと仕事がメインの生活で、PMSはそんなに意識していなかったんですが、生理前はイライラするし、お腹が張ったり足がむくんだりもしていました。ただ、家族のことや仕事のことを優先するうちに、自分のからだのことは後回しになって、「生理前だからしょうがない」と流してきた感じでしたね。
青柳:私もすごく思い当たります。仕事の忙しさに加えて、ちょうど親の介護も重なって。楽しくやってはいたものの、気づいたら時間もタスクもギュッと凝縮した毎日を送っていたんだなと。
和:私は46歳でいまの職場に入ったのですが、新しい環境でいろんなことを覚えていく時期と、更年期の症状がひどくなる時期が重なっていたので、それも関係していたのかなと思います。おっとりしているように見られるんですが、自分では物事をきちんと整えたいという気持ちが強くて。そういう性格が影響していたのかもしれないですね。

うつ症状も更年期の影響?多方面につながりを持つのが安定のカギ
―和さんは症状の一つに「うつっぽくなった」とおっしゃっていましたが、更年期はメンタルへの影響もあるのですか?
高尾:更年期にうつの症状が出る人は結構いらっしゃいます。女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンやプロゲステロンには、不安を抑える働きがあります。更年期には、そのホルモンが分泌されにくくなるわけですから、気持ちが落ち込んだり、自分の価値を認識しにくくなったりするのは、ありうることです。
さらにこの時期は、子どもが巣立つ、介護してきた親を見送る、シワやシミの増加や髪が薄くなるといった見た目の変化に直面するなど、これまで自分を支えてきた役割や自信が揺らぎやすい時期でもあります。つらいと感じたら一人で抱え込まず、専門家に相談してくださいね。

―更年期の症状について、皆さんは家族や職場に伝えたり、サポートを求めたりすることはありましたか?
青柳:私は自営業だしお店もあるので、家族には積極的に伝えていました。つらいときは義姉に頼ることもあります。あとは自分の状況をnoteに書いて発信したら、びっくりするほどコメントがついて。同じように悩む人がいるんだと励まされました。
和:私は幸い職場が理解のあるところで、状況を伝えたら柔軟に対応してもらえました。家でも高校生の娘が気遣ってくれて、ずいぶん助けられました。あとはやはり姉の存在が大きかったですね。
関根:私の場合、家族には伝えていなかったです。夫には「年齢的なものなんだからしょうがない」と言われるだろうし、子どもは反抗期だし……。少し体調が悪くても、家事など自分でやったほうが早いかなと。そのぶん、女友達や会社の女性の先輩には話していました。年の近い人同士ならフランクに話せるし、共感してもらえることもあって気持ちが楽になります。
高尾:「自分でやった方が……」という関根さんのような女性はすごく多いと思います。優秀な人ほどそうなんですよ。ただ、しんどいと言える環境があるかどうかはこの時期の安定に大きく関わってくるので、話せる人や場所をつくっておくことはとても大事です。

生活習慣やストレスも更年期の不調につながる。自分なりの対策を見つけて
―更年期症状との向き合い方や、ご自身でされていたケア方法がありましたら聞かせてください。
関根:家族が出かけたあと、香りのいいコーヒーを一杯だけドリップして飲んでから仕事に行っています。その時間があるだけで気持ちがちょっと変わるんです。
あとは大豆製品を積極的に取り入れたり、休肝日をつくったり。更年期のせいだと思っていたけれど、実は食事や飲酒など自分の生活習慣が不調を招いていた部分もあったなと気づいて、見直すようにしました。
青柳:私は趣味の時間を増やすようにしています。写真を撮りに行くのが好きなので、近所にちょっとお花を撮りに行くだけでも、すごく心が楽になりました。それから、朝、豆乳を鍋でコトコト温めて飲むのが楽しみで。豆乳自体も美味しいんですが、その束の間のひとときにホッとするんです。

和:皆さんそれぞれケアをされていたんですね。私は特別なケアをするというより、忙しい日々を過ごしていくなかで、なんとなく嵐が通り過ぎていったくらいの印象で。メンタルを保ちながらなんとか過ごしていくしかないのかな、と思っていました。
高尾:自分に合うリラックス法を見つけて、「これが良さそう」と続けられていることはすごくいいことです。更年期の不調はホルモンの揺らぎによるものがメインですが、生活習慣やストレスが原因の不調も含まれています。
そしてストレスを緩和できるのは、医師ではなく本人。だからお二人がされているような、自分の生活のなかでできるストレスケアはとても大切です。
また、大豆製品は腸内で女性ホルモンに似た働きをする成分に変換され、更年期の症状に効果があると言われているのですが、うまく変換できない方が半数ほどいることもわかっています。「大豆を試したけど変わらない」という方は、そういう理由があるかもしれません。気になる方はかかりつけ医に相談してみてください。

高尾先生おすすめの対策は、睡眠をしっかりとること
―日常で取り入れやすいセルフケアとして、先生がすすめることはありますか?
高尾:まず、ちゃんと寝ることですね。軽視されがちなのですが、睡眠は脳にも肌にも修復作業を行うとても重要な時間です。それなのに、日本の女性の多くは、そもそも睡眠時間自体が足りていない。更年期になるとそれが不調の原因になりえます。睡眠時間を確保するために、いまやっていることを誰かに頼んだり、思い切ってやめてみたり、それぐらいの決意を持って、睡眠時間を最優先にしてほしいです。
また、睡眠の質も大切です。例えば枕を変えてみるとか、寝室の風通しを変えてみるとか、小さなことからぜひ試してみてください。

―セルフケアのほかに、病院にかかることも選択肢の一つですか?
高尾:もちろんです。更年期の不調に対しては、婦人科を受診することも大切な選択肢です。足りなくなったホルモンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」は、更年期の不調に有効な選択肢の一つ。まず試してみて、残る不調があれば今度は生活習慣に目を向けてみる——そうやってふるいにかけながら、体調と向き合っていくのがいいでしょう。
ただ、婦人科のなかでも医師によって専門分野は異なります。たとえば婦人科系の手術やがん治療を専門にしている医師と、更年期のケアや女性のヘルスケアを専門にしている医師(※)とでは、できるアドバイスが異なる場合もあります。ご自身の症状や悩みに合った診療を受けるためにも、事前に医師の専門分野や診療内容を確認したうえで医療機関を選ぶことをおすすめします。
いままでの「当たり前」を変えていい。プレ更年期の女性たちへ伝えたいこと
―プレ更年期の方、いままさに渦中にいる方へ、伝えたいことがあれば聞かせてください。
関根:50歳にもなると、人生で初めてのことなんてないんだろうと思っていたんですけど、健康のことでは「人生初」だらけなんですよね。不安に思うより、「そんなときもあるよね」と思考をちょっと変えてみる。そういう視点を持てたら、楽になるんじゃないかと思います。
青柳:私は自戒も込めて、睡眠の大切さを伝えたいです。今回の座談会を経て、これまで睡眠を軽視してきてしまったなと反省しました。夫が睡眠を削ってでもアクティブに動く人で、それに付き合っていたところがあって。でもちゃんと寝ることで、起きている時間の密度がずいぶん変わるんですよね。睡眠を大切にすることが、更年期の症状を楽にすることにつながると、私も勉強になりました。

和:私がプレ更年期の方に一番伝えたいのは、「終わりはちゃんと来るから大丈夫」ということです。この時期は、いままで当たり前にしてきたことを変えていいと思うんです。たとえば洗濯物が溜まったとき、これまではすぐに洗濯していたところを誰かに頼ったり、明日の自分に託したりしてもいい。そういうことを自分に許してあげてほしいです。
―最後に先生からも、プレ更年期の方やいままさに症状に悩んでいる方へメッセージをお願いします。
高尾:まず、すべての女性が更年期を迎えます。そしてその時期の不調に対して、対処できることがあります。生活習慣を見直すことや専門家に相談することはもちろん、職場でも家庭でも友人でも、周りの人とのつながりのなかで楽に過ごしていける方法を、自分なりに見つけていってほしいと思っています。
そのためにも、更年期という時期について、当事者だけでなく周りの人たちも「目次」くらいは知っている社会になってほしいです。インフルエンザにかかったらしんどい、仕事を休む、治療方法がある——みんながそれを当たり前に知っているように、更年期についても同じくらい当たり前に知っている社会になれば、しんどい思いをしている女性たちが、もっと楽に過ごせるようになるはずです。
更年期は特別なことでも、怖いことでもありません。「変わっていく時期だよね」くらいの感覚でみんなが捉えられるようになることを願っています。

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