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新年こそ「くすり箱」の見直しを。家族のかたちに合ったくすり箱と収納のコツとは

December 26, 2023

  • 取材・執筆:石澤萌(sou)
  • 撮影:有坂政晴(STUH)
  • 編集:服部桃子(CINRA, Inc.)
  • 監修薬剤師:高垣育
  • 収納術監修:清水幸子

更新日:2023年12月22日

急な怪我や病気の備えとして、一家に1つは持っておきたいくすり箱。健康美塾では2023年6月、3つの家庭にくすり箱に関するインタビューを実施しました。そこから見えてきたのは、くすり箱のあり方は家族構成やライフスタイルによってさまざまで、それぞれの家庭にあった中身と収納方法を考える必要があるということでした。

では、実際にくすり箱をつくる際にどのようなポイントに気をつけるべきなのでしょうか? 今回はいくつかの家族構成を想定し、薬剤師の高垣育さんに具体的なくすり箱の中身についてうかがい、整理収納アドバイザーである清水幸子さんに収納方法のポイントを教えてもらいました。年の変わり目、気持ち新たにくすり箱をつくってみてはいかがでしょう?

くすり箱をつくったらそのまま放置はNG。定期的な見直しを

― くすり箱を用意するにあたって、これだけは守らなくてはならないことはありますか?

まず、どんな家族構成であっても共通して大事にしたい点が3つあります。

1つ目は定期的に中身を見直すこと。一度くすり箱をつくったらそのままという人もいますが、くすりの期限切れを防ぐためにも適宜確認が必要です。年末の大掃除のタイミングや9月の防災月間など、年に1〜2回チェックするとよいと思います。

2つ目はなるべく小ロット(少量)のくすりを買うこと。ストックしすぎるとこちらも期限切れを招いてしまうので、3日分くらいの小箱を購入するように心がけたいところです。ただ、大家族などでたくさんくすりを使う場合などは大容量タイプを買っておくのもひとつの選択肢になるでしょう。

最後の3つ目は、ローリングストックを心がけること。古いものを先に使い、なくなってきたらその分買い足していただくことで、いざというときにくすりがない、期限切れのくすりを使っていいのか悩んでしまう状況を防ぐことができます。

― 緊急時でも、普段どおりくすりを使えるよう整えておくことが重要なのですね。

【未就学児の子どもがいる家庭のくすり箱】処方薬に加えて、急な発熱に解熱鎮痛薬などを備えておく

― では、各家族構成に合わせたくすり箱のつくり方についてうかがいたいと思います。まず、未就学児の小さなお子さんがいらっしゃるご家庭では、どのような点に気をつけるべきでしょうか?

高垣:未就学児、つまり0〜6歳くらいのお子さんがいるご家庭では、基本的には市販薬を使うよりも医療機関の受診を優先したいです。ただ、急な病気や怪我は夜間・休日に起こることも少なくありません。そんなとき、くすり箱の中身が充実していればすぐに応急処置できるので安心ですよね。予想される事態としては、急な発熱や怪我、やけど、虫刺され、赤ちゃんがいるならあせもやおむつかぶれなどが考えられます。

くすり箱に用意するアイテムは、内服薬、外用薬、衛生用品にカテゴリー分けできます。まず内服薬で必須なのは解熱鎮痛剤です。アセトアミノフェンが入っているものは、剤形によりますが、比較的どの年代の方にもお飲みいただけるのでストックしておくことをおすすめします。急な便秘や下痢に効く整腸剤もお子さんのお腹をやさしく守ってくれます。

そして、子どもは体調を崩しやすいので頻繁に病院にかかることもあると思います。そんなときは「同じ症状が出たら余った処方薬を再度使ってもいいですか?いつまで使えますか?」と聞いておくと、安心材料のひとつになりますよ。

― 小さな子どもは肌トラブルや怪我も多いと思うので、外用薬や衛生用品を揃えることも重要になりそうです。

高垣:そうですね。皮膚を刺激から守れるワセリン入りの塗り薬は、冬場のちょっとした乾燥に対処できておすすめです。また、怪我のときはキズ薬も欠かせません。夏の季節には虫除けスプレー、痒み止めのくすりもあるとよいですね。

そして衛生用品ですが、どの世帯にも備えておきたいのは体温計と絆創膏です。ガーゼや細かい傷にくすりを塗るときの綿棒、経口補水液も状況によっては使えます。内服薬を飲むのを嫌がるお子さんには、粉薬を水で溶いたものを吸い取るスポイトや服薬補助ゼリーもあると便利です。

あとは、意外と使えるのがオリブ油(医療用オリーブオイル)。おむつかぶれでお尻に塗った外用薬がぺったりしてしまったときなんかに、クレンジングシートの要領でつるんと拭き取ることができますし、熱冷ましの坐薬を使うときにも潤滑油として活躍します。薬局で購入できるほか、お医者さんに相談すれば10〜50mLなど少量を処方してもらえることもあります。

― くすり箱の保管場所はいかがでしょう?

高垣:これはすべてのご家庭に共通することですが、まずは「高温・多湿・直射日光を避ける」ことを守ってもらえたらと思います。くすりの適正使用協議会では、冷蔵保存が必要な一部のくすりを除いて、室温(15〜30度程度)を保つことを推奨しています。お風呂場の近くや家電製品の上など暖かい場所でなければ、リビングなどで問題ありません。小さいお子さんがいる場合はいたずらを防ぐため、子どもの手の届かない棚の上などに置きましょう。

●収納のポイント:いたずらされにくい収納を選ぶ

清水:ご家庭に未就学児のお子さんがいらっしゃる場合、まずは安全を第一に考えたいもの。棚や引き出しに、この引き出し型のボックスをそのまま入れることを想定しています。収納している場所を開けて、さらに引き出すアクションが加わるため、小さい子どもがいたずらにくすりを取り出せないように工夫しました。

清水:このボックスは2つに分かれているタイプですので、片方は外用薬、もう片方は内服薬と分類できます。また、くすりなどを立てて収納し、何がどこに入っているかラベルをつけることで、上からみて何がどこに入っているか、またどこに戻せばいいかぱっとわかるようにしました。こうすることで、くすりやスポイトなどの下にほかのものが紛れ込むということもなくなります。使いたかったときにくすりの期限が切れていた、なんてことも防げますよ。

【小学生以上の子どもがいる家庭のくすり箱】身体や体力の変化に合わせて鎮痛消炎薬や生理痛用薬を

― 中高生含む小学生以上のお子さんがいるご家庭についてはいかがでしょうか?

高垣:未就学児と比較するとより動きが活発になり、お友達との遊び方も変わってくる頃ですよね。夜間・休日の急な怪我や発熱には引き続き対処できるようにしつつ、病院にかかるほどじゃない軽い症状へのセルフケアとして市販薬を使うことも想定します。ポイントとしては、お子さんの性別や年齢、部活動などのライフスタイルにあわせてどんなくすりを用意すべきか考えることです。

― 内服薬・外用薬・衛生用品それぞれ用意しておくべきものを教えてください。

高垣:内服薬は未就学児のご家庭と一緒でアセトアミノフェン配合の解熱鎮痛薬、そして整腸薬。頭痛や歯の痛み、女の子なら生理痛もあるでしょうから、もしお子さんが15歳以上ならロキソプロフェンが主成分のくすりもいい選択肢になるんじゃないでしょうか。風邪の症状は、喉・鼻・咳とさまざまですが、喉の痛みであれば7歳以上から服用できるトラネキサム酸が配合されたくすりもあります。

外用薬は、先ほど未就学児のご家庭の項目で挙げたアイテムのほか、ご家庭の特徴に合わせてご用意いただくのがいいと思います。たとえば、運動部に所属しているお子さんがいるなら外用鎮痛消炎薬などが役立ちます。湿布やスプレー、塗り薬などたくさん選択肢があるので、ご家庭に合うものを選んでください。衛生用品は絆創膏、ガーゼなど基本グッズを揃えておきましょう。

― 年齢が上がると、自分ひとりでくすりを使うお子さんもいるかと思います。保管場所も、未就学児のいるご家庭と変わってきますか?

高垣:いたずらの危険性がないのであれば使いやすい位置で大丈夫です。また、たとえば女の子と男の子両方がいる家庭だと、くすり箱自体を分けてしまってもいいと思います。女の子なら生理用品や生理痛用のくすりを入れたいということもあるでしょうから。

最近は小学校でおくすり教室を開いているところもあります。正しいくすりの飲み方を教えてくれるんですね。それによって、お子さんが主体的に「このくすりはこういうふうに飲めばいいんだ」と判断できるようになったらいいですよね。最近は若い世代のオーバードーズ(過剰摂取)も問題になっていますが、それを防ぐためにもご家庭でくすりの服用方法や使い方について情報共有していただけたら嬉しいです。

●収納のポイント:子どもの自立、親子のコミュニケーションにつながるように

清水:小学生以上は持ち運びできるボックスにしました。取っ手がついているので、怪我をしたとき「手当てしてほしい」と親の元に自分で持ってくることができます。自立にもつながりますし、親子のコミュニケーションも図れるのではないでしょうか。また、これも二つに分かれているので、外用薬と内服薬に分けました。膝を擦りむいたらこっち、お腹が痛かったらこっち、とすぐに判断できますよ。

清水:小学生以上となると、成長に伴い必要なくすりも変わってくる時期。ですから、あえてシンプルな収納で、中身の入れ替えをしやすくしました。箱に一緒に入っている添付文書は捨てずに一緒に収納しておきましょう。何錠飲めばいいか、いつ飲めばいいか迷ったときに便利ですから。

【高齢の両親と同居している家族のくすり箱】市販薬と処方薬の飲み合わせに気をつけて

― ここからはご両親、特に高齢に差しかかってきた方と同居するご家庭についてもうかがいます。まず、どんな事態が想定できますか?

高垣:急な怪我や発熱、ちょっとした症状へのセルフケアというのは先ほどと一緒です。大人になるにつれ、どんな症状が出やすいか傾向が掴めてくるはずなので、それに合わせたくすりを用意しておくべきでしょう。ご家族で1つのくすり箱を共有しているなら、まずは誰でも使える解熱鎮痛薬、胃薬などのアイテムを取り揃えること。そこに加えて、その人特有の症状があればご用意いただくのがいいと思います。外用薬、衛生用品も考え方は変わりません。

特筆すべきは、年齢を重ねたことで持病が出てきた方ですね。心臓・肝臓・腎臓の病気、緑内障や排尿障害などの治療を行っている方は、市販薬を選ぶ際に注意が必要です。病院やクリニック、医療機関からもらう処方薬との飲み合わせなどを確認したうえで購入してほしいので、定期的に病院に通っている方はお医者さんに、それが難しいなら薬局で薬剤師に尋ねてみてください。

― いわゆる「併用禁忌」と呼ばれるものですね。あまり意識したことがない方も多そうです。

高垣:「子どもの頃から使っているから」と、昔から選んでいる市販薬をそのまま買い続ける方もいますが、大人になってからかかった病気によって、使うくすりが変わることは多々あります。飲み合わせの観点では、複数の成分が入っているくすりではなく1つの有効成分のみのくすりを選ぶことも大切です。安心してくすりを飲んでいただきたいので、ぜひまわりに相談しながら購入いただけたらと思います。

― そのほかに気をつけることはありますか? 認知症などによる飲み忘れも考えられます。

高垣:自分自身でくすりを飲んだかどうかわからなくなるなら、同居しているご家族が管理したほうが大量服用や重複服用を避けられます。ただ、難しいのが「自分でくすりを飲める」という意思がある場合、当事者の自尊心を傷つけかねないこと。気持ちの面でも配慮できたらベターですね。あとは、同じくすり箱を使うご家庭だと、持病のくすりをほかの家族が取り間違えないよう注意したいです。ぱっと見全部白くて丸い錠剤なんてこともありますから、目印をつけるなど工夫するのをおすすめします。

●収納のポイント:視力が落ちていてもパッとわかる工夫を

清水:ご高齢の方は、くすり箱といえば木のボックス、というイメージを持っている方が多いと思います。ですから、一目で「これはくすり箱だ」とわかるよう、木製のものを選びました。たとえばリビングなど、いざとなったときもすぐ手に届く場所に置いておくと安心ですね。

清水:収納ポイントとしては、黄色など目立つ色のシールにくすりの名前を書いて蓋などに貼ったこと。ちょっと視力が落ちている方でも、箱を開ければ何がどこにあるかすぐにわかります。また、処方薬をもらっている方は、外出時も飲まなければいけないこともありますよね。そんなときは、中身が見えるメッシュ素材のポーチに小分けに入れて持ち歩くのがおすすめです。中身に何が入っているか、名札をつけるとより安心ですね。

離れて暮らす高齢の両親がいる場合、帰省した際にくすりの有効期限や種類をチェック

― 同居ではなく、離れて暮らすご両親のくすり事情はどのようにケアすべきでしょうか。年末年始に帰省する方に向けて、チェックすべきポイントがあれば教えてください。

高垣:最初にお伝えしたくすりの有効期限や処方されているくすりの種類を確認していただくほか、「ちゃんと飲めてる?」と聞いてみてください。もし飲み残しがあるならくすりの種類が多い、もしくは管理が難しくなっている可能性があります。また、高齢者の方のなかには「とりあえず冷蔵庫に入れて保存しておけばいい」と考えている方もいるのですが、出し入れすることで結露が発生し、それによってくすりが湿気ってしまうことがあるので「冷所保存必須でなければ常温でいいんだよ」とお伝えいただけたらと思います。

― 離れて暮らすからこそ、くすり箱に入れておきたい要素はありますか?

高垣:急な怪我や病気に備えて、家族や医療機関の緊急連絡先メモを入れておくといいかもしれません。それと、緊急時はくすりを探すのも大変だと思うので、持ち出し用のくすりをポーチなどにまとめておくと災害時・入院時にも便利です。

― 最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

高垣:くすり箱はなにかあったときの「安心」のためにつくるもの。症状が出てから慌てて買いに行くのではなく、普段から準備することを心がけてもらえたら嬉しいです。市販薬のなかには、薬剤師がいないと購入できないものもあります。それこそ年末年始などお休みの日に買いに走っても、薬局が閉まっていた……なんてことも。いいお正月を迎えるためにも、ぜひくすり箱の中身を確認してみてくださいね。

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