乳がん検診が怖い人へ。痛み・費用・当日の流れを乳腺専門医が解説

2026年10月01日
「マンモグラフィって痛そう」「検診は40歳からでいいんでしょう?」
乳がん検診に対してそんなイメージ、ありませんか?乳がんは、年間103,424(2023年)もの症例がある、身近な病気の一つです(※)。
多くの人がかかる可能性がある一方で、検診については意外と知られていないことも少なくありません。じつは、この記事を書いているライター・白鳥も、これまで一度も乳がん検診を受けたことがありませんでした。
そこで、今回は乳がん検診初心者の視点で、ピンクリボンブレストケアクリニック表参道院長の島田菜穂子先生にお話をうかがいました。乳がん検診の受け方や頻度など、はじめて受ける人が気になるポイントを一つひとつ丁寧に解説していただきます。
※国立がん研究センターがん情報サービス「乳房」
女性の8人に1人が乳がんに。早期には自覚症状が出にくいからこそ検診が必要
―そもそも乳がんとは、どんな病気なのでしょうか?
島田:乳がんは、乳房にできる悪性腫瘍のことで、女性が最もなりやすいがんです。大きな特徴として、早期の段階では自覚症状が出にくいことが挙げられます。
乳がんは母乳をつくる乳腺という臓器にできるため、日常生活のなかで、違和感に気づくタイミングが少ないんです。ただ、乳房はからだの表面にあるので、気を配り日常的にチェックしていれば自分で発見できる唯一のがんともいえるんです。
国立がん研究センターが発表したデータ(※)によると、日本では女性の8人に1人が乳がんにかかるとされています。約30年前には、日本では30人に1人がかかる病気だといわれていました。残念ながら乳がんはより身近な病気になってきているんです。
※国立がん研究センターがん情報サービス「乳房」内、累積がん罹患リスク表

―何歳ごろから、乳がんを発症しやすくなるのでしょうか?
島田:年代別で見ると、乳がん罹患率は日本では30代後半から増えはじめ、40代後半から60代後半にとくに多い傾向があります(※)。ほかのがんはもっと年齢を重ねてから発症することが多く、発症年齢のピークが比較的若いことも特徴です。ただ、いまお伝えしたことはあくまでも傾向なので、20〜30代でかかる可能性もありえます。
※国立がん研究センターがん情報サービス「乳房」内、年齢階級別罹患率グラフ
―年齢以外に生活習慣などで、乳がんを発症しやすい傾向はありますか?
島田:乳がんの直接的な原因はわかっていませんが、先進国ほど乳がんの確率が上がる傾向が見られています。その背景には、食生活や生活スタイルの変化が関係していると考えられています。たとえば、高脂肪の食べ物や加工食品を摂る機会が増えるなど、生活習慣の変化によって乳がんのリスクが高まりやすくなる可能性があります。
また、ご家族のなかに乳がんにかかった方がいる場合は、発症リスクが高まる傾向にあります。家族歴がある方は、平均的な罹患年齢より若く発症する傾向があるため、早めに検診をはじめることをおすすめします。
また、意外と知られていないのですが、不妊治療のくすりや低用量ピルなど、女性ホルモンを補う治療を受けている場合、乳がんのリスクが上がる可能性があるといわれています。
もちろん、これらのくすりを使うこと自体が悪いわけではありません。ただ、安全に使い続けるために、できれば使用をはじめる前に一度検診を受けて胸の状態を確認し、その後も定期的に検診を受けていただくことをおすすめします。

国は40歳以上から検診を推奨。でも、いつから検診を受けるべきかは人それぞれ
―「乳がんは治るがん」という話を聞くこともあります。
島田:乳がんは女性が最もかかりやすいがんではありますが、死亡数は大腸がん・肺がん・膵臓がんのほうが上位にあがります。早期に発見できれば適切な治療につなげられるため、検診やセルフチェックを習慣にすることがとても大切です。
※国立がん研究センターがん情報サービス「乳房」4.生存率より。
一方で、乳房にできたしこりに長いあいだ気づかずがんが進行すると、肺や肝臓、骨、脳などへ転移してしまうケースもあります。こうした転移が起こると、治療に費用も時間もかかってしまい、生活への影響も大きくなります。
―早く対処するためにも、乳がん検診が大切なのですね。
島田:そうですね。ただし、前提として、しこりがある・胸に違和感があるなどの自覚症状がある人は「検診」ではなく乳腺外来や乳腺科で「受診」をしてください。「検診」は、症状のない方を対象に、わずかな異常を早期発見するために行うものです。
一方、「受診」では、症状の原因を調べることが目的となるため、必要に応じて追加の検査を行いながら、その症状の原因は何かを突き止める検査診断を進めていきます。
一見、同じように感じるかもしれませんが、検診は「目隠しをして水槽の中に魚がいるか探す作業」のようなものです。一方、受診は「釣り上げた魚がどんな種類かを判断する作業」といえるでしょう。それぞれ役割が違うため、選択を間違えると見つかる病気も見落とされる可能性があるのです。
―自覚症状がない場合は、いつから乳がん検診を受けるのが良いのでしょうか?
島田:国は、国民を乳がんから守るための「対策型検診」として、検診の指針(ガイドライン)をつくっています。それが、40歳以上の女性を対象に2年に1回、問診とマンモグラフィを受ける検診です。
ただし、これは個人のリスクに応じた考え方とは異なります。家族歴がなく、女性ホルモン剤も服用していない方は平均的なリスクかそれ以下です。そのため、自治体の対策型検診をまずは利用するのもいいでしょう。ただ、平均よりややハイリスクな場合は、場合によっては40歳よりも若い年齢から検診を受けるのがおすすめです。
―乳がん検診を受ける頻度についてはいかがでしょうか?
島田:検診を受ける頻度に関しても、個々のリスクによっておすすめの頻度は変わってきます。例えば、家族歴がある方には、進行の早いタイプの乳がんが発症する傾向があるため、1年に1回をおすすめします。必ずしもすべての方にとって「対策型検診の勧める2年に1回受けていれば安心」ではないのです。
はじめての検診は乳腺専門クリニックなどで、家族歴や服薬歴、手術歴、生活習慣なども詳しく情報を共有したうえで検査を行い、ご自身の乳房の状態や発症リスクに応じた生涯の乳がん検診プランを立てることをおすすめします。また、普段の検診の段階から乳房のかかりつけ医を持っておくと、いざというときも安心です。

はじめての乳がん検診。当日の流れと検査内容
―はじめて検診を受けるとき、当日はどんな流れで進むのでしょうか?
島田:乳がん検診に来ていただいた場合、一般的な流れは「受付・問診」「着替え」「画像検査」「結果説明」の4ステップです。
1.受付・問診
まずは受付・問診を行います。最近はネット予約時にあらかじめ問診を入力しておけるクリニックも増えています。事前に入力することで、おすすめの検査をスムーズに案内してもらえたり、受診当日に待ち時間が短縮できたりします。
2.着替え
受付をしたあとは、更衣室で検査着に着替えます。上の服は脱ぐため、上下が分かれた服装で来ていただくとスムーズです。
3.問診・検査
検査前に、あらかじめ入力された問診内容の確認と追加の問診、その日に行う検査の説明が行われます。そのあと、検査室でマンモグラフィや超音波検査などの画像診断を受けていただきます。検査自体は、それぞれ10分前後です。
4.結果説明
検査後すぐに医師が確認し、その場で撮影した画像を見ながら詳しい説明があります。クリニックによっては、その日のうちに結果報告書をもらえるところもありますが、自治体の検診などでは通常、結果は後日(1〜2か月後)郵送です。
―マンモグラフィと超音波は、どう違うのですか?
島田:マンモグラフィと超音波の検査の違いは、以下のとおりです。

島田:マンモグラフィは、乳房を板で挟んで広げ、X線で撮影する検査です。唯一、初期の乳がんのサインである「石灰化」が見つけられます。
一方で、乳腺が発達しているタイプの「高濃度乳房」の方は、マンモグラフィでは乳腺が白く映し出されるため、白く映る腫瘍の影が隠れてしまうことがあります。とくに石灰化を伴わないタイプの乳がんの場合、マンモグラフィのみでは発見できないことがあるのです。

島田:超音波検査では、機械を胸に当てて、音波の反射を画像に起こします。マンモグラフィと比べると放射線による被ばくや痛みは少なく、塊をつくる乳がんを数ミリ単位の段階から発見できます。一方、石灰化のみの早期の乳がんを見つけるのは不得意になります。

島田:このように、マンモグラフィと超音波検査は、それぞれの強み・弱みがあるので、はじめての検診や、気になる症状があるときは両方実施するのがおすすめです。それぞれの検査を組み合わせることで、上手にそれぞれの弱点をカバーすることができるため、がんの見落としが極めて少なくなります。
マンモグラフィは痛い?乳がん検診前によくある疑問を解消
―マンモグラフィは、「痛そう」というイメージを抱いている人も多そうです。
島田:おっしゃるとおり、以前は痛みの印象の強い検査方法でした。でも、いまは機械も改善されていますし、何よりも撮影する放射線技師たちの技術も上がっています。
また、マンモグラフィの撮影を適切に行うための試験もあり、それに合格した認定技師は「認定NPO法人乳房健康研究会」のHPで公開されています。痛みが心配な方は事前に確認して、認定技師のいる施設で検診を受けてみてはいかがでしょうか。
また、生理前は胸が張って敏感になりやすいので、その期間を避けるなど、日程の工夫ができると良いですね。生理がはじまって5~6日後くらいになると、乳房がやわらかくなり、マンモグラフィが痛く感じづらくなることがあります。
当日の工夫としては、力を抜いて検査を受けることが大切ですね。マンモグラフィは乳房だけでなく、大胸筋まで挟んで撮影します。緊張している状態で筋肉を挟むと痛みを感じやすいので、できるだけリラックスして検査に臨んでください。
―妊娠中や授乳中など、乳がん検診を避けたほうが良いタイミングはありますか?
島田:妊娠中や授乳中は、マンモグラフィ検査はおすすめしません。授乳中はとくに乳腺が母乳で白く映るので、異変を発見しにくくなるためです。妊娠中や授乳中は、超音波検査のみ受けて、どうしても必要な場合のみマンモグラフィ検査を受けるのが良いでしょう。
―検診当日の服装や持ち物で気をつけることはありますか?
島田:検査時には下着も外すため、脱ぎ着しやすい服装で来てください。また、ネックレスなどのアクセサリーも検査時には外していただきます。

島田:服装や持ち物以外でよく聞かれるのが、食事制限です。検診というと「お腹を空かせてきたほうが良いのでは」と思っている方もいらっしゃるのですが、乳がん検診では食事制限はありません。しっかりと食事を取って来てくださいね。
―乳がん検診は、どのくらいの費用で受けられるのでしょうか? 活用できる補助などがあれば教えてください。
島田:乳がん検診の費用は、どこで受けるかで変わります。
たとえば自治体の検診で受ける場合、国が推奨する対策型検診は40歳以上・2年に1回が基本で、1,000円前後の自己負担で受けられるところが多くあります。都内はとくに補助が手厚く、無料で受けられる区もあります。費用や対象年齢などは自治体ごとに異なるので、ぜひお住まいの地域の検診について調べてみてくださいね。
それから、会社の健康診断で検診を受けようか考える方もいるかと思います。ただし、労働安全衛生法に規定される企業が行うべき「法定健診」にはがん検診は含まれていません。乳がん検診のみオプション扱い、自己負担で受けるケースも少なくないので、事前に確かめてみてください。
自費の場合も、医療機関によって異なりますが、マンモグラフィと超音波検査の両方を受ける場合は、1万〜2万円程度の場合が多いです。単体で受ける場合は、マンモグラフィは5,000〜1万円程度、超音波検査は3,000〜7,000円程度が目安です。
決して安い検査ではないかもしれません。ただ、乳がん治療に必要となる治療費や時間、生活のなかで諦めなければいけないことなどと比べると、検診のほうがはるかに少ない負担となることは間違いありません。

「要精密検査」となったら?セルフチェックで備えておく方法
―乳がん検診で画像診断の結果が、「要精密検査」だった場合、どのような流れになるのでしょうか。
島田:「要精密検査」となった場合には、別日に詳しい検査をすることが多いです。精密検査にはある程度時間もかかりますし、心の準備も必要かと思いますので、まずは初回の結果についてお話ししてから、経過観察で良いのか、さらに精密検査が必要なのか、必要な場合はどんな精密検査をするのかなどを相談します。
なお、「要精密検査」という結果は、必ずしも乳がんを意味するものではありません。検査は詳しく調べて、良性かどうか、もしくは治療が必要かどうかを確認するためのステップですので、怖がりすぎずに、まずは詳しいお話を聞きにきてくださいね。

―乳がんを早期発見するためにも、自宅でできるセルフチェックはありますか?
島田:日頃から乳房の状態を意識しておくことが大切です。そういった乳房を意識する生活習慣を、「ブレスト・アウエアネス」といいます。
よく「しこりの有無を確認しましょう」といわれますが、自分の胸の普段の状態を知っていないと、しこりの有無にも気づけません。月に一度だけ意識して触診するのではなく、お風呂でからだを洗うときやボディクリームを塗るとき、着替えるときなど、日常的に胸を触る機会をもつことをおすすめします。普段の状態を知っておくことで、違和感に気づきやすくなるはずです。
それから、生理周期や気持ちの浮き沈みなど、胸以外のご自身の状態も日常的に記録しているとなお良いですね。乳がんは女性ホルモンとも関わりのある病気なので、そういった情報も診断に役立つためです。
―最後に、はじめて乳がん検診を受ける人へメッセージをお願いします。
島田:はじめての乳がん検診が怖いのは、当然のことです。痛みへの不安もあるし、結果を知ること自体が怖いと感じる人もいるかと思います。でも、その不安があるからこそ、安心するためにも検診をおすすめします。
「症状がないのに検診を受けて良いのかな?」と検診を控える方もいますが、ご自身では気づけない異常を検診でしっかり確認することが大切です。
また、「違和感はあるけど、忙しいし……」と胸の違和感を我慢したまま、受診が遅れる方もいらっしゃいます。ですが、心配な症状があるときは検診ではなく乳腺科へすぐ受診をしてください。乳がんによる症状でないことも多くあるので、早く安心するためにも受診をためらわないでほしいです。
それから、乳がん検診は定期的に続けることが大切です。検診を通じて「ここなら安心して相談できる」と思える乳房のかかりつけ医を見つけておくと、万が一精密検査や治療が必要になったときも安心かと思います。
家族のため、仕事のため、周りの人のために頑張っている人ほど、自分のことは後回しになりがち。でも周りの人のためにも、まず自分が元気でいることが一番大事です。怖さや不安がある方も、勇気を出して、乳がん検診を受けてみてくださいね。
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