子どものデリケートゾーンの正しい洗い方は?お風呂と性教育について

2025年08月01日
子どもが4~5歳になると、身の回りのことが少しずつ自分でできるようになります。お風呂に入るときも、一人でからだを洗えるように教えていく家庭が多いことでしょう。そこで悩みになりやすいのが、デリケートゾーンの洗い方です。
親世代の方も習う機会がなかったため、実は正しい洗い方がよくわかっていない……というケースも少なくないようです。また、子どもが異性の場合は、どのように教えたら良いかより悩むこともあるかもしれません。
本記事では、デリケートゾーンの正しい洗い方や教え方を踏まえ、これを一つのきっかけにして家庭で性教育に向き合うメリットを、泌尿生殖器ケアにまつわる活動を広く行なっている、ミキズハウス助産院 院長の石嶺みき先生に伺いました。
よくある間違ったやり方は「洗いすぎ」「お湯で流すだけ」
―主に性器の周りを指す「デリケートゾーン」。どう洗うのが正しいのか、洗い方を子どもにどう教えれば良いのか、悩みの多い場所だと思います。間違った洗い方をしていると、からだにはどんなリスクがあるのでしょうか?
石嶺:デリケートゾーンは高温多湿な環境にあるため、正しく洗わないと細菌が繁殖して不快なニオイにつながるなどのトラブルが起きやすい部位です。また、丁寧にすすげていないと、汚れが溜まってかぶれたり、かゆみや赤みが出たりすることもあります。
デリケートゾーンの状態や正しいケアを知っていれば、そうしたトラブルが防げるようになります。ところが、小さな子どもはもちろん、大人でもデリケートゾーンを正しく洗えている人は、実は多くありません。人には聞きにくいし、学ぶ機会もなく、自己流で洗っている人がほとんどだと思います。
―なるほど。では、「間違った洗い方」でよくある例があったら教えてください。
石嶺:間違った洗い方は大きく2つで、1つ目は「洗いすぎ」です。
清潔にしなくちゃと思うあまりに洗いすぎると、デリケートゾーンがもつ常在菌や保湿因子まで洗い落とし、本来備わっているはずのバリア機能が働かなくなってしまいます。
もう1つは「お湯で流すだけ」。お湯だけでは、皮脂やそれに混ざった老廃物を洗い流せないため、かゆみやかぶれなどの原因になってしまいます。
特に女の子の場合、性器の周りは粘膜が入り組んでいたり、形状が特殊だったりして、どうしても洗いにくいもの。そのうえ、汗や皮脂にくわえて尿などの分泌物もあり、細菌の栄養分になる汚れが溜まりやすい場所なんです。
デリケートゾーンの正しい洗い方は? 男女別のポイントも
―では、デリケートゾーンの「正しい洗い方」を、ここでしっかり学びたいです!
石嶺:まず、男女共通のポイントは「肌へのやさしさを考えた石鹸を泡立てて、やさしく泡で洗うこと」と「熱すぎないお湯で丁寧にすすぐこと」です。
デリケートゾーンは普段、弱酸性に保たれています。アルカリ性の石鹸やボディーソープもありますが、刺激性の観点から肌と同じ弱酸性のソープがおすすめです。液体タイプのボディーソープや、泡タイプのボディーソープ、固形石鹼などさまざまな種類がありますが、きめ細やかに泡立つならどれでも構いません。女の子の場合はとくに、デリケートゾーン専用ソープを使うのもひとつの手段です。
また、熱いお湯は刺激が強く、過剰に皮脂を洗い流してしまいます。熱さが乾燥やかゆみを引き起こす可能性もあるので、ぬるま湯でやさしく、でもすすぎ残しがないように手で丁寧に洗ってください。

―子どものデリケートゾーンを洗ってあげるとき、性別ごとに気をつけたいポイントはありますか? まずは男の子の場合について、教えてください。
石嶺:男の子のケアで気を配りたいのは、おちんちんの皮(包皮)。無理のないところまでやさしく引き下げた状態で洗い、洗ったあとはかならず皮を引き上げて、元の状態に戻します。
包皮を“むくか・むかないか”は、現代医療においても意見が分かれるところです。近年はむかないことが主流になってきていますが、性器の形状によってはむかないことで汚れが溜まってしまい、炎症を繰り返したり感染症にかかったりする恐れもあります。心配な場合はかかりつけ医に相談して、指示をあおぐと良いですね。
加えて、男の子は陰茎や陰嚢の裏にも汚れが溜まりやすいので、忘れずに洗いましょう。
―女の子の場合はいかがでしょうか?
石嶺:先ほども述べましたが、女の子は、小陰唇の内側やひだの隙間に汚れが溜まりやすいので注意してください。爪でひっかいて落としたくなってしまうかもしれませんが、指の腹で丁寧に洗いましょう。
恥垢(ちこう:汗や皮脂、尿、おりもの、古い皮膚などが混ざり合った垢)がこびりついている場合は、指にベビーオイルなどをなじませ、やさしく撫でて落とします。
また、膣のなかに指やお湯、泡を入れて洗わないよう気をつけましょう。シャワーやトイレのビデなどを使って膣のなかまで必要以上に洗いすぎると、膣内を健康に保つための常在菌(乳酸菌など)が減ってしまい、自浄作用が低下してしまうんです。
洗い方を教えるときは「同意を取る」ことが大切
―子どもが自分で正しく洗えるように教えたいのですが、洗い方を伝えるためとはいえ、デリケートゾーンをあらためて見たり触ったりするのは気が引けます。どのように教えるのが良いのでしょうか?
石嶺:そうですね。やはり小さな子どもが相手でも、まずは「同意を取ること」が重要です。
自分のからだはすべて大事ですが、デリケートゾーンはなかでもとくに大切な、他人が自分の同意なく見たり触ったりしてはいけない場所です。親が洗い方を教えるのもはばかられる……という感覚はよくわかります。
だからこそ、きちんと「正しい洗い方を教えたいから、ちょっと触っても良い?」などの声かけが大事です。
私は助産院で仕事をしているとき、生まれたての赤ちゃんに対しても「おむつを替えるね」「お風呂に入れるから裸にするよ」などと声かけをしています。まだお子さんが小さい方は、赤ちゃんのうちからそうした習慣をつけておくと良いですね。
そして、もしも子どもが嫌がったら、その日はきっぱりと諦めましょう。洗い方を教えるのに最も良いタイミングは、お子さんがからだを洗うことに興味を持ったときです。焦らず、お子さんのタイミングを待ちましょう。

―ひととおり洗い方を教えたあと、子どもがちゃんと自分で洗えているかの確認はどうすれば良いでしょうか? 一緒に性器をのぞきこんでもよいものですか……?
石嶺:「洗えているか一緒に確認しても良い?」といった声かけとともに確認するのは、問題ないと思いますよ。
お顔が一人ひとり違うように、性器の形状も一人ひとり違うもの。汚れが溜まりやすい場所や、赤みやかぶれが出やすい部分も、お子さんによってそれぞれ異なるのです。だからこそ、親と一緒に性器を見られる年齢のうちにしっかり確認しておくのが大切。そうすれば、一人でもそのポイントを意識して洗えるようになります。
女の子のデリケートゾーンはどうしても見づらいので、本人が嫌がらなければ、手鏡を使って一緒にチェックするのも良いですね。大切な自分のからだだからこそ、自分でちゃんと洗えるように確認しておきたいところです。
すでにお子さんが恥ずかしがる年齢の場合は、信じて委ねつつ「もしもトラブルがあったら教えてね」と一声かけておきましょう。
―子どもがうまく洗えていないのか、しばしばかゆみやかぶれが出てしまう場合はどうしたら良いでしょうか。
石嶺:まずは、正常なときとそうでないときで、デリケートゾーンの見た目がどう変わるのかを一緒に確認しておくことをおすすめします。
たとえば、「かゆいところが赤くなっているね」など、具体的な状態を子どもに伝えることで、子どもが自分で洗うときにも状況の変化を察知できるようになるはずです。
ただ、親が「ちゃんと洗おうね」「しっかり洗えてる?」などと言いすぎると、心配した子どもが一生懸命洗ってしまい、洗いすぎから別のトラブルを引き起こす可能性もあります。
というのも、子どもは親に褒められたい、期待に応えたい、という気持ちが強いんですよね。繰り返し声をかけられることで、「もっとちゃんと洗わなきゃ」と思い込み、必要以上にゴシゴシ洗ってしまうことがあるんです。
かゆみやかぶれの原因は、洗い方だけとは限りません。そもそも清潔でない手でいじったり、かいてしまったりすることで、トラブルが起きている可能性もあります。そのため、洗い方ばかりに固執せず、「触るときはきれいな手でね」「かゆいようなら教えてね」などの声かけも、あわせてしていくと良いでしょう。
それでもかゆみやかぶれが続くようであれば、一度お医者さんに診てもらってくださいね。
性教育で、自分のからだと心を守る術を身に着ける
―デリケートゾーンの洗い方とあわせて伝えておきたい「性」の話はありますか?
石嶺:デリケートゾーンに加えて、水着で隠れる胸やおしり、口なども含めてプライベートゾーンと呼びますが、その大切さも一緒に伝えておきたいところです。4~5才くらいの子であれば、「ここは大切な場所だよ」「洗い方はこうだよ」くらいでも充分です。
口頭での説明に自信がなければ、性教育の絵本やアニメなどを活用するのもおすすめです。言葉だけでは伝えづらいこともイラストが補ってくれますし、豊かな表現を借りて説明することもできます。子どもにとっても楽しさが際立って「からだのことを知るのって面白い」「こういう話題って恥ずかしくないんだ」と感じてもらえるのではないでしょうか。
親子間でのそうしたコミュニケーションを通じて、性の話は「特別なこと」ではなく「日常のなかでごく当たり前に話せること」だと思ってもらいたいですね。

―性教育となると、つい必要以上にかしこまってしまいがちですよね。特に子どもが異性の場合はハードルも高い気がします。
石嶺:大人がそうなってしまう根底には、そもそも正確な性の知識を持っておらず、自信がないケースも多いんです。
正しく知っていないと教えられないし、「質問されたらどう答えよう」と身構えてしまうのは当たり前。そういうときは逆に良い機会だととらえて、大人も知識のアップデートをすると良いですよ。医学も性教育も日々進化しているので、エビデンスのある内容をしっかり学んでお子さんに伝えましょう。良い絵本は、医療従事者も納得できるほど、わかりやすくまとめられていたりするため、大人が勉強するときも意外と役立ちます。
ほかにも、ユネスコの『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』では、教えておきたい性教育の内容が年齢ごとに示されているため、「こういうことを話すのはまだ早いかも?」などと迷ったとき、ひとつの参考になりそうです。
―最後に、子どもが小さいうちから性教育をするメリットを教えてください。
石嶺:デリケートゾーンやプライベートゾーンについて学び、日常的に適切なケアをしていくことは、子どもの自立心を育てるチャンスになります。そうして幼児期から性教育にふれることで、からだや心を守る術も身に着けられるんです。
たとえば、子どもが他人からからだを触られるなどのいたずらに遭ってしまったとします。子どもに性についての正しい知識と親子の信頼関係があったら、「これは問題だ」と理解でき、すぐ親に相談できるはずです。ほかにも、生理が始まって戸惑ったときや、性器のことについて悩んだときなども同様でしょう。
正しい性教育は、心身のトラブルの予防や早期解決につながります。デリケートゾーンの洗い方を教えることは、家庭で性について話すきっかけをつくり出し、親子間の信頼関係を築いていく土台づくりにもなると信じています。
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