正しい腸活とは?専門家に学ぶおすすめの食べ物や習慣

2026年08月03日
「腸活」という言葉が広まって久しいですが、「とりあえずヨーグルトや納豆を食べている」など、腸に良さそうなことを“なんとなくしている”人も多いのではないでしょうか。
今回は、腸活を正しく理解するために、腸のスペシャリストであり自律神経研究の第一人者である小林弘幸先生にインタビュー。腸活の正しい知識から食事・運動・呼吸といった実践的なアドバイス、さらには腸活に悩む読者の疑問への回答まで、たっぷりと語っていただきました。
腸の機能と役割、そして「腸活」とは?
―まず、腸の基本的な働きについて教えてください。
小林:腸は、約6メートルもある小腸と、約2メートルの大腸からなる管状の消化器官で、それぞれ異なる役割を担っています。
小腸の主な働きは「消化・吸収」と「免疫」。小腸には免疫細胞の5割が集まっており、食べ物から栄養を吸収するだけでなく、胃酸で処理しきれなかったウイルスや病原体をブロックしています。
大腸は、小腸の先で水分を吸収しながら便をつくり、不要なものをからだの外へ「排泄」する役割を担います。さらに、大腸の腸内細菌は腸のバリア機能も高め、免疫バランスを整える「重要なカギ」を握っていることもわかってきています。腸はまさに、からだ全体を守る、健康の要なのです。

―では、「腸活」とは具体的にどんなことを指すのでしょうか?
小林:「腸活」とは、わかりやすくいうと「腸内環境を整えること」です。具体的には、腸に炎症がない健康な状態にすること。腸内環境を整えるためには、食事による内側からのアプローチと、運動など外側からのアプローチが重要になってきます。
─腸に炎症が起こっているか、どのように判断するといいのでしょうか。
小林:腸の健康状態は、自分で確認できます。そのサインが「便」です。形のある、しっかりとした便が出ていれば腸内環境は整っています。一方で、下痢や硬すぎる便が続いているなら、腸に炎症が起こっているサイン。また、肌あれ・むくみ・冷え・メンタルの不調も、腸内環境悪化のサインとして現れやすい症状です。
―便の状態でわかるのですね。ほか、「腸内フローラ」という言葉もよく耳にしますが、腸内環境とはどんな関係がありますか?
小林:腸内には数千種類、数兆個以上の腸内細菌が生息しており、それらが密集する様子が「花畑(flora)」に見えることから「腸内フローラ」と呼ばれています。
腸内細菌は善玉菌・日和見菌(※)・悪玉菌の3種類からなり、理想のバランスは善玉菌2割、日和見菌7割、悪玉菌1割。
このバランスが崩れると、悪玉菌がつくり出す毒素が血液にのって全身に回り、免疫力の低下やさまざまな病気を引き起こす原因になります。反対に、しっかりとバランスが取れていれば質のいい血液がつくられ、免疫力の向上にもつながるわけです。
(※)善玉菌・悪玉菌のどちらでもなく、腸内で優勢なほうに味方する細菌。
「幸せホルモン」の多くは腸でつくられている
―先ほど、メンタルの不調も腸内環境が悪化しているサインとお話されていましたが、なぜでしょうか。
小林:腸は「第二の脳」とも呼ばれており、脳と密接に関係し、互いに影響を及ぼし合っているからです。これを「脳腸相関」といいます。
実は、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンは、体内のおよそ8割から9割が腸内でつくられているんです。そして、腸の運動を調整したり、消化を促進させたりするだけでなく、間接的に脳に届き、メンタルにもポジティブな影響をもたらしてくれます。
―反対に、ストレスが腸に影響を与えることもあるのでしょうか?
小林:そうですね。ストレスは腸の大敵ともいえるでしょう。腸は、独自の神経系と自律神経の2種類の神経が連携して動いているので、ストレスによって自律神経が乱れると、大きな影響を受けます。
自律神経は、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経で成り立っています。腸の動きを司るのは副交感神経。ストレスがかかると交感神経だけが優位に跳ね上がり、副交感神経の働きが弱まってしまう。その結果、腸の運動も低下してしまうのです。
―副交感神経を上げることが、腸にとっても重要になるのですね。
小林:実のところ、腸活の本質は「副交感神経を優位にすること」にあります。深呼吸などを行い副交感神経を優位にすると血流がよくなり、排便リズムが整い、肌の状態が改善し、さらにはメンタルの状態も整う。心技体ではなく、体技心——つまりからだが整うとメンタルもついてくる、という順番です。
ヨーグルトは効果あり?腸活におすすめの食べ物や摂り入れ方
―まずは、内側から腸内環境を整えるための食事について教えてください。腸活におすすめの食材や、摂り方のポイントはありますか?
小林:腸活の食の基本は、「発酵食品」と「食物繊維」です。発酵食品は腸内の善玉菌をサポートしてくれるもの。食物繊維は腸内細菌の「餌」になります。
発酵食品はヨーグルト・納豆・味噌・キムチ・ぬか漬けなど種類を変えながら。食物繊維は根菜・海藻・きのこ・バナナ・キウイなど。具だくさんの味噌汁は、発酵食品と食物繊維を同時に摂れる理想の腸活メニューです。
大切なのは、この2つをセットで摂ること。食物繊維だけでも善玉菌の餌にはなりますが、ストレスや食生活の乱れから腸内にいる善玉菌が減っている人も少なくありません。そこで発酵食品を摂り入れ、善玉菌をサポートすることによって、腸内環境を整えやすくすることが理想です。
─いろいろな食材を摂ることがポイントになるんですね。食事のタイミングについてはいかがでしょうか。
小林:6時・12時・18時を目安にした3食が理想です。食べたものを小腸で消化するには6時間ほどかかるため、その間隔を意識すると腸への負担も少なくなります。
とくに朝食は必ず摂るようにしたいもの。朝食は、からだを活動モードにするスイッチとなり、自律神経を整えることにもつながります。朝食の習慣がない方は、バナナとヨーグルトなど軽いものでも構いません。何か口にすることを心がけてみてください。
食べる量は腹7分目を意識しましょう。「ちょっと足りないかな?」くらいが、胃や腸に負担をかけず、ちょうどいい量です。

―発酵食品のなかでも身近なヨーグルトは、取り入れている方も多そうです。食べ方について気をつけることはありますか?
小林:ヨーグルトに含まれる菌は、腸内にいる菌に刺激を与える役割をします。だから同じヨーグルトを食べ続けると慣れが生じて、刺激も薄れてしまう。そこで私は、1か月から2か月ごとに銘柄を変えることをおすすめします。
腸内環境を整えるには、「菌の多様性」も重要です。腸内にいる菌の種類が豊富であるほど、腸内環境は良好に保たれやすいことがわかっています。ヨーグルトに限らず、納豆、味噌、キムチなど、さまざまな種類の発酵食品をローテーションして取り入れてみてください。
運動、マッサージ……食事以外でもできる腸活は?
―次に、外側からのアプローチについて教えてください。
小林:腸活には運動や腸もみなど、外側からケアをすることも重要です。今日からすぐできる方法をいくつかご紹介します。
(1)呼吸を整える
腸活において、とくに意識してほしいのが呼吸法です。ストレスがかかり、交感神経が優位になると呼吸も浅くなりがちに。
副交感神経を上げるために一番効果的なのが「吐く息を長くすること」。鼻から3秒吸って、口から6秒かけてゆっくり吐く——これを朝・昼・寝る前の1分間ずつ行うだけで、副交感神経が上がり、腸の動きの改善が期待できます。
(2)朝一番に、コップ1杯の水を飲む
朝にコップ1杯の水を飲むことで、胃に重力がかかって大腸を刺激できます。夜間の脱水を補う効果もあり、最もシンプルで継続しやすい習慣です。胃に適度な刺激を与えるためには、何度も分けて飲むより一気に飲み干すのがおすすめです。
(3)運動習慣をつくる
血流をよくし、腸の働きを活発にするのに、適度な運動は欠かせません。1日10分でもウォーキングやスクワットをしてみてください。大切なのは継続すること。エレベーターより階段を使う、というだけでも立派な腸活です。
(4)入浴中に腸もみマッサージを行う
両腰のあたりをやさしく揉むことで、外側から大腸を刺激できます。入浴中、からだが温まった状態で行うのが最も効果的。お湯の水圧も加わって、腸の動きがよくなります。

自分に合った腸活で、からだと心を整えよう
―腸活の効果はいつごろから実感できるものですか?
小林:食事でも運動でも、まずは2週間続けてみてください。そこでお腹が張るなどの不快感がある場合は、その腸活は合っていないということ。摂り入れる食材や菌の種類を変えてみましょう。
腸活に正解はなく、合うものは人それぞれ違います。からだの声に耳を傾けながら、自分に合った腸活の方法を探していってください。
―自己流で腸活をしている人に向けて、アドバイスをお願いします。
小林:何かとストレスの多い現代社会では、腸内環境が悪化している人が非常に多いと感じています。目に見えない部分は、どうしても意識されにくい。でも、腸を意識するようになると、からだが変わり、心が変わり、日々のコンディションまで変わっていく。そう感じている患者さんをたくさん見てきました。
内側と外側、両方のアプローチを継続することが腸活の基本ですが、最初から全部やろうとすると続きません。まずは一つからでいいので、今日から習慣にしてみてください。
【Q&A】腸活にまつわる「これって本当?」
最後に、「なんとなく腸活をしているけど、これって実際どうなの?」という読者からの疑問をいくつかピックアップし、小林先生にお答えいただきました。
Q. 腸活をするとやせるのは本当?
A. 個人差はありますが、腸内環境が整うと代謝が上がり、脂肪がつきにくくなるといわれています。
腸の状態が悪いと、余分な吸収が行われて脂肪が蓄積され、代謝も悪くなってしまいがちに。体重の変化を感じたら、腸内環境も見直してみてください。
Q. 便秘になる人と下痢になる人、その違いは?
A. 根本は同じ。どちらも腸内環境の悪化が原因です。
「便秘と下痢は真逆の症状」というイメージがありますが、腸で起こっていることは同じ。腸が水分を過剰に吸収すると便秘、吸収が足りなければ下痢として現れるだけで、治療のアプローチも基本的には同じです。
とくに注意したいのが「隠れ便秘」です。下痢が続く原因として、重い便秘が根本に潜んでいる場合もあるといわれています。この場合、硬い便の脇を柔らかい便がつたって出てくるため、症状は下痢として現れます。下痢止めを使うと便秘がさらに悪化するため、長引く場合は専門医への相談をおすすめします。
Q. 腸活は年齢や性別によって変える必要がある?
A. はい。年齢とともに腸内環境は悪化しやすくなります。
50代以降は、加齢とともに減少しやすいビフィズス菌をしっかり摂りましょう。副交感神経も年齢とともに低下するため、自律神経のケアも意識したいところです。さらに女性の場合、生理周期や更年期のホルモンバランスの変化が腸の動きに影響し、便秘の悩みが増えやすくなります。
ただ、食事と運動というベースをしっかり続けることで、その影響を最小限に抑えることができます。
Q. 冷たい飲み物やエアコンによる内臓の冷えは、腸内細菌のバランスに影響する?
A. はい。腸の冷えは血流を悪化させ、動きの低下を招きます。
冷たいものを飲むと腸の血流が悪くなり、蠕動(ぜんどう)運動が鈍ります。夏場は「からだは暑いのに内臓は冷えている」という状態になりやすく、腸内環境が乱れる原因になることも。白湯やお茶など温かい飲み物を摂り入れることが、腸を内側から守ることにつながります。
Q. お酒は腸内環境に悪い?
A. 飲み方次第。過度な飲酒は問題ですが、食事と一緒に飲めばそのダメージを和らげられます。
お酒1杯に対し、水1杯から2杯を一緒に飲むことをおすすめします。また、マッコリのような発酵食品由来のお酒は選択肢のひとつです。
とはいえ、アルコールそのものは腸に炎症を起こしやすく、飲みすぎは腸内環境を乱すことになりかねません。適量を心がけましょう。
Q. 医薬品の便秘薬・整腸剤や食品のサプリメントは腸活に有効?
A. 上手に活用すれば腸活のサポートになります。ただし刺激性の便秘薬の長期連用には注意が必要です。
たとえば、毎日の食事で食物繊維を20g摂ろうとするとレタス約6個分にもなりますから(※厚生労働省の食事摂取基準では男性20g以上・女性18g以上が目標値)、サプリメントで補うと有効的でしょう。ほかにも、乳酸菌サプリメント、飲料もおすすめです。
一方で、大腸の粘膜を直接刺激して、腸の蠕動(ぜんどう)運動を高める下剤(便秘薬)は使いすぎると腸に炎症を引き起こす原因になるため、長期連用は好ましくありません。整腸剤を試してみて、それでも改善しない場合は医師に相談することをおすすめします。
- 1
いいね!










