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夜になると咳が止まらない人へ。医師が教える、今日からできる対処法

2026年11月04日

からだと心

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昼間は気にならないのに、夜になると咳が止まらなくなる。夜中に何度も目が覚めてしまう——。そんな経験はありませんか?
そこで今回、呼吸器内科医として日々、咳に悩む患者の診療にあたる三島渉先生に、夜に咳が出やすくなる理由や今日から実践できる正しいセルフケアの習慣についてうかがいました。

夜に咳が出やすくなるのはなぜ?自律神経と咳の関係

―風邪をひいているときなど、昼間よりも夜に咳が気になるという声を聞きます。夜に咳が出やすくなるのはなぜでしょうか。

三島:自律神経の働きによって、咳の出やすさに違いが起こります。人のからだは、昼に活動モードの「交感神経」が優位になり、夜に休息モードの「副交感神経」が優位になります。

交感神経が働いている活動モードのときは気管支が広がって空気が通りやすいのですが、逆に副交感神経が優位になると気管支が細くなりやすいため、昼よりも夜に咳が悪化しやすいのです。

―自律神経が影響しているんですね。ほかにも夜に咳が出る原因はあるのでしょうか。

三島:喘息も大きな原因の一つです。喘息というと、子どもの病気だとイメージする方も多いようですが、大人になって初めて症状が出る方もたくさんいます。最初はのどの痛みや鼻水といった風邪の症状があり、そのうち咳だけが治らないという状況になって受診したところ、じつは喘息だったとわかる方も多いです。

とくに近年は食生活の乱れやストレスからアレルギー体質の方が増えている影響もあり、喘息になる患者さんが増えているように感じます。

三島:ほかにも、後鼻漏(鼻水が喉の奥に流れてしまう状態やそのように感じる症状)や逆流性食道炎によって咳が悪化している場合もあります。高齢の方の場合は“誤嚥(ごえん)”といって、唾液や食べたものが気管のほうに流れ込みやすくなることがあり、それが夜の咳につながることもあります。

今日からできる、咳を悪化させない5つの習慣

―「咳が続く」といってもさまざまな原因が考えられるのですね。

三島:そもそも咳はからだの防御反応で、口から肺まで続く空気の通り道(気道)に異物が入ってきたときに、それを体外へ出そうとする反射反応です。

適度な刺激でちょうどよく外に異物を出せるのが一番良いのですが、それが過剰反応してしまうと咳が止まらなかったり何日も続いたりしてしまいます。過剰反応させないためには、急激な温度変化や乾燥、煙や強いにおい、ホコリなどの刺激をできるだけ避けられる環境をつくることが大切です。

―咳を悪化させないためには、具体的にどういったケアが必要なのでしょうか。

三島:体調面と生活環境の両方からアプローチが必要です。具体的な方法を5つ紹介します。

(1)寝室の湿度・温度を整える

三島:乾燥は、喉や気道を刺激する大敵です。室内の湿度は、50%前後を目安に加湿器などで調整してください。乾燥対策として、寝る前にコップ1杯の水を飲んだり、マスクをして寝たりするのも有効です。

また、急激な温度変化も喉への刺激になりますので、室内の温度も一定に保つようにしましょう。

三島:さらに乾燥を避けるという点でいうと、はちみつ(※)やのど飴、トローチでのどをうるおすのも良いでしょう。はちみつには、ウイルスや細菌に対する作用を持つ成分が含まれているとされ、咳やのどの症状をやわらげるのにも役立つと考えられています。ただ、先ほどお伝えしたとおり、糖質の摂りすぎはからだによくないので、食べ過ぎには注意してください。

(※)はちみつには乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、1歳未満のお子さんには与えないよう注意してください。

(2)入浴時は湯船にゆったり浸かる

三島:シャワーを浴びるだけでなく、湯船に浸かるとリラックス効果が高まり、自律神経を整えることに役立ちます。

さらに、入浴剤を活用してリラックスしやすい環境を整えるのも一つの方法です。湯船にゆったり浸かることでからだが温まり、心身の緊張がゆるむので、睡眠前の過ごし方としても取り入れやすいでしょう。

(3)腸内環境を整える

三島:現代人の多くは、糖質過多でタンパク質不足の傾向にあります。例えば、朝食はパンとコーヒー、お昼はパスタだけ、といったメニューでは、食事のほとんどが糖質になってしまいます。

糖質をはじめ、小麦や乳製品、カフェインの摂りすぎは、腸内環境を乱すことにつながることがあります。腸内環境が乱れると、体内の免疫が落ち、それが咳を悪化させる原因の一つになるのです。そのため、主食は控えめに、野菜やタンパク質を中心としたおかずをしっかり摂ることをおすすめしています。

(4)寝具を清潔に保ち、寝る姿勢を工夫する

三島:寝具はしばらく掃除をしていないと、ホコリっぽくなったり、ダニが発生しやすくなったりします。こまめに洗濯や掃除をすることを心がけてください。

また、枕の角度が咳を起こしやすくしている場合もあります。後鼻漏などで鼻づまりが強い方や、逆流性食道炎のように胃酸が逆流しやすい状態の方は、枕が低すぎると鼻水や胃酸が喉のほうに流れてきやすくなるので、寝る姿勢も意識してみましょう。

(5)飲酒・喫煙は控える

三島:タバコは喉を刺激するため、咳を悪化させるのはもちろんですが、じつはお酒も要注意です。

アルコールは肝臓によって分解され、体外に排出されます。肝臓はからだに必要なタンパク質をつくるとても大事な臓器ですが、アルコールを分解しているあいだは、本来からだに必要な働きが後回しになってしまいます。

さらに、アルコール分解は肝臓にとって負担が大きく、肝臓でつくられるさまざまなタンパク質の合成が低下します。すると、喘息をはじめとしたさまざまな病気が悪化する原因となるのです。咳を悪化させないためにも、健康のためにもお酒は控えめにするのが良いでしょう。

リラックスすると咳に良い?悪化させない生活習慣のコツ

―紹介していただいたケアは、咳だけでなく健康な生活を送るためにも大切なことですね。

三島:そうですね。大前提として、喘息などの持病があれば、まずきちんと治療することが第一です。そのうえで大切なのが、自律神経を整えること。

現代人は日常的にストレスが多く、交感神経が刺激され続けている状態にあります。この状態が続くと、炎症を抑えるホルモンを分泌する副腎も疲れてしまい、からだ全体の免疫力や炎症をコントロールする力が下がります。そのため、もともと喘息がある方は、この力が弱まることで咳が悪化しやすくなるんです。

ですから、先ほどお伝えした入浴をはじめ、睡眠不足や疲れをためない、バランスの良い食事をとる、適度な運動をするといった規則正しい生活をすることが必要です。また、瞑想やヨガなど自分に合った方法でリラックスする時間をつくることも、結果的に咳の緩和につながります。

―冒頭では「副交感神経が優位になることで気管支が狭くなってしまう」とのことでしたが、リラックスをして咳の悪化にはつながらないのでしょうか?

三島:副交感神経が優位になって気管支が狭くなること自体は、健康な方にも起こる自然な生理現象です。

ポイントは、日々のストレスや不規則な生活によって気道がどのくらい敏感になっているか。健康的な生活が送れている場合、夜間の多少の収縮では咳は出ません。逆に喘息がある方は気道が敏感になり、副交感神経による収縮がきっかけとなって咳が出やすくなってしまいます。

セルフケアでも改善しないときは?目安は2週間続く咳

―咳が続くとき、市販薬を使う方もいると思います。くすりを使う際の注意点があれば教えてください。

三島:咳が出はじめた段階で市販薬を活用して症状の改善を目指すことは有効な選択肢の一つです。咳の原因や症状に合わせて適切なくすりを選ぶことで、つらい症状の緩和が期待できます。

ただ、風邪のような一時的なものであれば2週間ほどで治まってくるのが一般的です。市販薬を使っても症状が治まらない場合は、きちんと医療機関を受診することが大切です。

―夜の咳が続く場合、喘息以外の深刻な病気が隠れていることもあるのでしょうか。

三島:夜間に限った話ではありませんが、咳の原因になる病気は非常に種類が多く、普通の風邪をはじめ、なかには肺がんや結核といった深刻な病気が隠れている場合もあります。2週間を超えても咳がずっと続いている場合は、医療機関を受診して検査をしたほうが安心です。

また、「ヒューヒュー」という音がする場合や、咳に加えて熱が出ている、痰に血が混じっている、胸が痛い、息が苦しいといった症状がある場合は、2週間を待たずに早めに受診してください。

―最後に、夜の咳に悩む方に向けて、これだけは知っておいてほしいというアドバイスをお願いします。

三島:長引く咳の背景に病気が隠れていた場合、早期に見つかれば治せる可能性がある一方、病気が進行していると命に関わることも少なくありません。喘息も、放っておくと症状が悪化し、くすりがなかなか効かなくなってしまうこともあるでしょう。また、結核のような病気だった場合、ご本人だけでなく、職場の方やご家族など周りの人の健康にも影響を与えてしまいます。

自分のためにも、周囲の大切な人たちのためにも、「咳ぐらいならそのうち治るだろう」と侮らずに、長引く咳が気になる方はぜひ一度、医療機関を受診していただきたいと思います。

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