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「『冷え』とはどういう状態?放っておくとどうなるの?」医師・川嶋朗先生に聞く、冷え対策に効果的な『温活』のコツ

December 1, 2023

  • 取材・文:及川夕子
  • 撮影:村田克己
  • イラスト:野瀬奈緒美
  • 編集:大森奈奈
  • 監修医師:川嶋朗

更新日:2023年11月27日

寒い季節になると、手足がいつも冷たい、寝つきが悪くなる、疲れやすいーーなど、冷えによる不調に悩む人も多いのではないでしょうか。

「からだを冷やしてはいけない」ということはよく知られていることですが、からだが冷えるとどのような影響が及ぶのか、また温めるとからだにどういいのか。これらをきちんと意識している人は少ないかもしれません。

そこで今回は、冷えに関する著書も多い医師の川嶋朗先生に、からだが冷える仕組みとその影響、積極的にからだを温める「温活」のメリットや効果的な方法について伺いました。早めの対策を心がけて、寒い冬を元気に過ごしていきましょう。

冷えとは、体温調節の仕組みがうまく働いていない状態

―― 川嶋先生は、冷えがもたらす病気やからだの不調についていち早く警鐘を促してきた医師であり、冷えの改善策なども積極的に紹介されています。そもそも「からだが冷える」「冷え性」というのはどのような状態をいうのでしょう。

冷え性に明確な定義はありませんが、体温調節の仕組みがうまく働いていない状態です。例えば平熱が36度以下だったり、平熱が低くなくてもからだが冷たく苦痛に感じていたりするなら、それは冷え性と捉えていいでしょう。

西洋医学的にいうと、冷え性は自覚症状の一つであり病気とはみなされません。よって診断基準や治療法もありません。しかし「何らかの対策を必要とするもの」なのは確か。実際に多くの方が悩んでいますよね。

それに対して、漢方医学では「冷えは万病の元」であり積極的に解決すべき問題と捉えます。患者さんの症状・体質・体力などを決める際には、さまざまな点から分析していきますが、中でも悪寒を表す「冷え」は重要な項目の一つになっています。

冷えというとよく「手足が冷たい」→「お腹が冷える」→「全身が冷える」と言ったタイプ分けをすることがありますが、これは左から右へ重症度が上がっていくと思ってください。

平熱が低い、手足がいつも冷たい、元気が出ないなどの自覚症状がある方は、全身が冷え切ってしまっている。冷えは「痛い」「硬い」「動かない」から始まると私はよくいうのですが、頭痛、肩こり、腰痛などに悩まされている方も冷えが隠れているかもしれません。

冷えの原因は生活環境にある!?

―― 冷えをもたらす原因について、教えてください。

現代人の冷えの主な原因の一つに、生活環境が関係していると考えています。65年以上前、健康な成人の体温はおよそ36.9度(※1)でしたが、10数年前の調査(※2)では、36.1〜36.2度まで下がっていました。「昔はそんなに高かったの?」と驚かれた方も多いことでしょう。

また、私が10年前に調査(※3)した際、「困っていること」で「冷え」と回答した人は約7割で、中でも若い年代の女性の割合が高かったのです。

本当なら年齢が上がるほど代謝は落ちていくものなのに、若い人の方が冷えで悩む人が多いのはなぜか。考えられるのは、エアコンなどでいつでも快適な環境で過ごせるようになったこと。自力で体温調節をしなくても生きられるようになったため、現代人は寒さ、暑さに弱くなってしまったのだと思います。

もう一つは運動不足。筋肉や運動量が多いほどからだは熱を生み出すことができます。エレベーターや車などの便利な乗り物のある生活では、からだを動かす機会が減り、冷えやすくなることも考えられます。

そのほか、日常生活での過度なストレスや緊張、露出の多いファッション、過度なダイエットなども原因になるでしょう。

※1 出典:田坂定孝、吉利和、滝童内博、冨家崇雄、戸川潔、町野龍一郎、篠浦旭、本田西男、入来正躬:健常日本人腋窩温の統計値について。日新医学44(1):633-638,1957

※2  出典:テルモ体温研究所「発見!正しく体温を測れている人は少ない?結果詳細・解説」より

※3 出典:血めぐり研究会 supported by Kao

暮らしに簡単に取り入れられる「血めぐりUP」の秘訣

―― 冷えを積極的に改善するには、どのような対処法がありますか。

温活は「温める」「体力をつける」の2段階で取り組むといいでしょう。お腹部分を温めたり、大きな筋肉や太い動脈が通っているところを温めたり動かしたりすると効率よくからだ全体が温まります。

あと食事の時はよく噛むことも大切です。食後にからだがポカポカ温かくなるのは、「食事誘発熱産生」という仕組みが関係しています。よく噛んで食べると脳の視床下部が刺激され、神経ヒスタミンという物質が分泌されます。脳のヒスタミン神経系が活性化されると、熱産生が高まり、内臓脂肪を燃焼するよう働きかけます。その熱により体温も上がるということ。

また噛むことは、通称・幸せホルモンと呼ばれる「セロトニン」の分泌にも効果的です。セロトニンは心の安定に欠かせない脳内物質で、不足するとうつや冷えにつながりやすいともいわれており、食べ物をよく噛むことは消化や吸収を助けることはもちろん、熱を生み出し、心の安定にもプラスに働くのです。

そして散歩は気軽にできるうえ、色んな疾患予防にもなるおすすめの冷え対策です。筋肉が増えるとからだを温める力も強くなるのは事実ですが、何もしないでいると一般的には30歳ごろから筋肉が減り始めます。温活を目的にした運動は継続が大事です。ハードな運動でなくてもいいので、1日7000歩を意識してみたり、少し筋肉に負荷をかけるような強度を上げたウォーキング(20分程度)を、週3回を目安に行うのもいいでしょう。

1)階段はできるだけエスカレーターを使わず自分の足で登る。
2)少し速歩きして運動量を増やす。

この2つを意識するだけでも、第二の心臓といわれるふくらはぎが刺激され全身の血めぐりがよくなります。

―― 川嶋先生は、西洋医学に限らず東洋医学なども含めた統合医療で治療をされています。冷え性がつらい場合に、漢方やサプリメントを取り入れるのは有効でしょうか。

漢方の治療であっても、生活習慣を改善して自然治癒力を上げていくことが第一段階になります。セルフケアではなかなか改善できない場合には、漢方薬やツボ刺激、サプリメントなどを使い、それでよくなっていくことももちろんあります。漢方薬は証(体質)によって選ぶものなので、漢方医学を専門にする医師や漢方薬局で相談していただくのがよいでしょう。

ご自身でサプリメントを取り入れる場合には食生活を見直した上で、不足しがちなビタミン、ミネラルを補いからだのベースを整えるものを選ぶとよいでしょう。筋肉やホルモンの原料になるタンパク質もしっかり摂るようにしてください。

冷えは病の入り口。健康のために「温活」を取り入れて

―― 最後に、冷え性で悩む人へメッセージをお願いします。

冷えは自然治癒力が落ちているサインであり、病気の入り口にもなるものです。からだが冷えているとさまざまな不調や不快感が伴います。

前述の通り、ウォーキングなど無理のない運動を取り入れ、自力で熱を生み出せるように筋肉をつけていくことが、冷えから脱出する基本的な方法です。100歳まで生きると言われるこれからの時代、不快な症状を我慢する必要はありませんし、からだを温めるだけで健康が維持できるなら、「温活」はメリットだらけだと思いませんか?健康でいるためにも、「温活」を取り入れて元気に過ごしてくださいね。

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