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40〜50代、世代の異なる3人が高尾美穂先生に質問! 「更年期との向き合い方、教えてください」

February 1, 2024

  • 取材・文:及川夕子
  • 撮影:日下部真紀
  • イラスト:野瀬奈緒美
  • 編集:大森奈奈
  • 監修医師:高尾美穂

更新日:2024年01月31日

女性ならいつかは迎える更年期。元気に過ごしていく人もいる一方で、多様な症状に悩まされたり心身の不調から昇進を諦めたりする人も出てくるなど、更年期が女性にとって大きな転機になることは確か。「どんなことが起こるの?」「どう過ごしたらいい?」と不安に思う人も少なくありません。

今回の健康美塾は「更年期」をテーマに、産婦人科医の高尾美穂先生を囲んで座談会を実施。さまざまな年代の女性スタッフが、更年期の実態や上手く付き合っていくための方法、治療法、考え方などについて根掘り葉掘り伺いました!

座談会メンバー
高尾美穂先生(イーク表参道 副院長・産婦人科医)
Kさん:更年期の兆候はまだない40歳
Nさん:そろそろ更年期?という44歳
Yさん:更年期真っただ中の50代、ホルモン補充療法を継続中

更年期が来るのを怖がらなくても大丈夫

Kさん:「更年期」という言葉は知っているものの、これから迎える世代にとって「怖い」というイメージを持つ人も多いようです。実は私もその一人なんですが。実際はどうなのでしょう。

高尾:ここ数年で、メディアが更年期を取り上げるようになって多くの人が知るようになりましたよね。でもネガティブな情報だけが印象に残っているのかもしれませんね。不安や怖いという気持ちになるのは、まだよく知らないから。知識を得たら、次に必要なのは「アクション」だと思いますよ。

Kさん:行動するということですか。

高尾:はい。私たちは今、更年期にどんなことが起こるか、なぜ起こるのかもわかっている時代に生きています。医学的な対処法も確立しているし、元気でいたいならするべきこともわかっていますよね。よりよくなれる選択肢があるなら取り入れてみたらいいと思うんです。例えば生理痛だって、生理痛の薬を飲んだり、とてもつらかったら治療を受けたりできるでしょう?

そしてアクションの次にすること、それは「継続すること」。現代は、閉経後の人生がとても長いということもあり、ずっと元気でいるためには継続してからだと向き合っていく必要があります。そうしたことを理解して行動する人が増えていけば、そう遠くないうちに「更年期がきた→対処法がある→やってみた→更年期?そんなに心配することなかったね」という未来がやってくるんじゃないかって思っています。

全員:なるほど。一歩踏み出すことが大事なのですね。

高尾:ようやく職場や家庭で「更年期症状でつらいんです」と言いやすい時代にはなってきましたよね。あとは「調子が悪くてつらい」から、「もっと調子よくなりたい」というマインドに切り替えられるかどうか。行動する女性は増えてきていますから、産婦人科医としては「みんなもついてきて!」という思いです。

Point解説:更年期のはじまりと閉経まで

更年期のいちばんわかりやすいサインは月経不順

Kさん:更年期がそろそろ来そうだという具体的なサインってあるんでしょうか。

高尾:40歳以降で月経周期が明らかに変動しはじめていれば、更年期に入っていると考えていいでしょう。子宮を摘出された方が自分の更年期を知りたいときは、ホルモンの血液検査をしないとわかりませんが、それ以外の方は生理の様子で大体わかりますよ。

Kさん:ホットフラッシュがあるのが更年期なのだとばかり……。月経周期が変動しはじめたら、というのは初めて知りました。

高尾:生理の出血量や月経周期が乱れてきたという理由で受診しても全く問題ありません。もちろん多様な症状が一気に押し寄せてきて「自分はどうしちゃったの?」と悩む方もいます。そういう時も早めに婦人科を受診してほしいですね。

Nさん:私は今44歳で、これまで順調だった月経周期が若干乱れはじめてきている実感があります。よく聞く「ホルモン補充療法」(※2)は女性ホルモンが低下した閉経後の治療だと思っていたのですが、閉経前からでもはじめていいものですか?

高尾:はい。40代半ば過ぎで月経周期が乱れてきたら、とくに月経と月経の間隔が長くなってきたらはじめていいタイミング。自分の体の中で女性ホルモンが十分作れている場合は、少量足した程度では何も変化はないので過度な心配は無用です。補充した結果、調子が悪いのが良くなったとしたら卵巣機能が低下してエストロゲンの分泌が低下してきているとみることができます。だから「とりあえずやってみる」でもいい治療法なんです。

※2 ホルモン補充療法(HRT)
低下した女性ホルモン(エストロゲン)を補う治療法。通常は2種類のホルモン剤(エストロゲンと黄体ホルモン)を使用。更年期の多様な症状に対して効果が期待できます。ほてりやのぼせ、発汗などの自律神経系の不調や関節の痛み、気分の不調などに効果があるほか、加齢の影響が大きい肌や血管の老化などにも予防効果が期待できます。補充する量は月経が順調に来ている年代が体内で作っている量の1/3ほどと少量。更年期以降のエストロゲンの急激な減少のカーブを緩やかにして更年期症状を予防・緩和するのが目的です。

Yさん:私も周りも更年期を体験していますが、更年期に入ると疲れやすいとかやる気が起きないという声もよく聞きます。

高尾:一般的には更年期にはからだと心の両面で不安定になることが多くなります。血管運動神経症状といってほてり、冷え、疲れやすいといった症状を訴える人も多いですし、関節痛がでる人もいます。女性ホルモンは女性の全身の様々な部位や機能に作用しているので、それまで守られていた部分が変化していくんです。

Point解説:更年期症状

受診から治療まで、どうやって進んでいく?

Kさん:婦人科は内診があることを気にする人もいますよね。更年期の診察はどんなふうに行われるのか流れを知っておきたいです。

高尾:私は問診の時に、患者さんに内診台は初めてかどうかや出産歴があるかどうかを聞くようにしています。初めての場合には一つひとつ丁寧に説明しながら進めていくようにしていますね。

月経の異常は更年期によるものか、病気によるものなのか見分けがつかないことも多いので、婦人科では内診を含めて必要な検査をすることがあります。更年期はメディカルチェックをするいい機会でもあるので、内診も必要なことだと受け止めて検査も前向きに受けてほしいと思います。

Point解説:更年期の診察の流れ

Nさん:月経周期が不安定になりはじめた時期に婦人科を受診して、その後1度月経があったことを伝えたら、医師から「何もしなくてもいい」といわれてそのままです。

高尾:一度周期が乱れたくらいだと様子を見ることはありますね。でもその先に周期が短くなったり飛び飛びになったりすることがあれば、改めてホルモンの血液検査をしてみてもいいと思います。年齢とともにE2(エストラジオール)が低くなりFSH(性腺刺激ホルモン)が高くなると閉経が近づいているサイン。ただ、E2はアップダウンしながら下がっていきますし、女性ホルモンは毎日変動するものなので、ホルモン値から閉経時期を予測することは難しいのです。実際の診療ではホルモン値だけでなく、患者さんの月経の状態や困っている症状から治療を始めるかどうか検討することになりますね。

Point解説:エストロゲンの主な働き

Yさん:私は、更年期の不調のために仕事やプライベートの楽しみを制限されるのは嫌だと思い、早めに医師に相談してホルモン補充療法を継続してきました。慣れてくれば2ヵ月に1度くらい薬を処方してもらいに通院して、症状によって薬の量を相談したり、ときどき検査や健康チェックもしてもらったりと、ルーティンになっていくので楽です。何より、先々の健康管理も含めて医師から必要な検査を勧められたり、色々なアドバイスをもらえるというのは安心です。課題があるとすると相性のいい医師に出会えるかどうかが大事かと……。

高尾:私たち医師の課題でもあるのだけれど、更年期世代のヘルスケアや更年期障害の治療にすべての医師が精通しているかというと、専門分野の違いもあってそうではなかったりします。日本女性医学学会認定の専門医(※3)資格(女性ヘルスケア専門医)を有している医師など、更年期の診療に力を入れている医師や詳しい医師を探してみてもいいかもしれません。

※3 一般社団法人 日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・専門資格者一覧

更年期でもキャリアを諦めない。少し先の人生を想像しながら行動を

Kさん:更年期についてやっと実態が見えたというか、勘違いしていたことも多かったのですごく勉強になりました。

Nさん:私もちょっと怖いと感じていたのがかなり緩和されました。改めてこれから更年期を迎える私たちは、どんな意識で生活していったらいいでしょうか。

高尾:閉経し女性ホルモンが欠乏すると、その影響が10年、20年かけてじわじわと自分の体に現れてくる。そうなってから体のメンテをするのでは遅くて、人生1度きりなのでやり直せないんですね。だからこそ、効果が認められたエビデンス(科学的根拠)のあるケアや治療法を選択していきましょう。

大事なことだから改めて強調すると、更年期以降の女性の健康課題とは「更年期に起こる女性ホルモンの揺らぎの課題」「閉経以降のエストロゲンがない状態になることから起こる不調や疾患への対応」。この2つに分けて考える必要があります。更年期症状には、漢方薬や精神的な面でのカウンセリングなども用いられるけれど、2つの課題に効くのはホルモンを、治療によって少量足すことで緩やかなカーブになっていく。エストロゲンの量をちょっと底上げするイメージです。更年期症状には、漢方薬や精神的な面でのカウンセリングなども用いられるけれど、2つの課題に効くのはホルモン補充療法しかないんですね。そして治療でどう変化があったかを自分で確認し、評価することも大事。しんどかったらホルモンの量を調節しながら継続していくこともできますからね。

Kさん:対処法があることは心強いですね。更年期症状でキャリアを諦めるか迷う人もいると調査(※4)では出ています。

高尾:更年期症状があると昇級の意欲が落ちてしまうのは確か。体調もそのうち落ち着いてくるので、更年期の間は、離婚や退職など重大な決断をしないほうがいいかもしれませんね。更年期は人生の曲がり角のようなもの。曲がり角をトップスピードで曲がる人はいないじゃない?スピードを落として安全に曲がったらまたスピードを上げて走ればいいわけで、そういう時期だって思うのも大事です。

Nさん:仕事と体調管理と、周囲と折り合いをつけていくためにできることはありますか?

高尾:職場にとっては社員の不調がどれぐらい続くのかという見込みがわかることが大事なわけです。インフルエンザなら数日、手術なら2週間とか。でも、誰しも具合が悪くなったり病気になったりすることはあるわけですから、個人に我慢を強いるのではなく「しっかり休んで、元気になって戻ってきてね」と気持ちよく送り出せるような社会になっていく必要があるでしょうね。

ときどき更年期支援を女性優遇という人がいるけれど、そうではないと思います。女性はキャリアの中で月経を繰り返し、子育てや介護の負担、子宮頸がんや乳がんといった女性特有の病気や更年期と、たくさんの落とし穴があります。その中でキャリアを積んでいくことは大変。それに対して、政策や企業などの支援はその落とし穴を埋める作業です。ただし、平らになった道の上をどれだけ頑張るかは本人次第です。30代、40代の女性にはとにかく大事なテーマだから今からイメージしておきましょう。

そして、目の前の霧が晴れるみたいな経験ができると思うので、何かやってみようと思うなら、1度婦人科を受診してみてください。大事なことは「鉄は熱いうちに打て」ですね。

更年期とキャリア

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