久住昌之の突撃!男の仕事飯

Vol.4これぞ!働く男のコスパ飯
日本橋 そばよし「生のりそば&おかかご飯」

今回は日本橋の立ち食い蕎麦「そばよし」だ。

実はこの店は来たことがある。ボクが「泉昌之」(原作ボク、作画和泉晴紀)名義で描いているマンガ『食の軍師』で、取材した。取材と言っても、店の人に断ることなく、ただの客として食べにきたのだが。

その時は昼の時間だったから、大変な混雑で、店の真ん中に長い行列ができていた。とにかく人気店だ。なぜならアタリマエだけどウマいからだ。もちろん立ち食い価格だから、安い。かけそば一杯270円。普通の立ち食い蕎麦店は、かき揚げ天蕎麦が主軸だが、この店はあえてかけそばを押している。それは汁のうまさが一番わかるからだと言う。しかも化学調味料無添加。ウチの鰹節の旨味に、旨み調味料など無用!と言わんばかりの自信か。

それもそのはず、この店は鰹節問屋直営なのだ。そしてその鰹節工場はこの店の3階にある。直下型直営。しかもこの店の創業は江戸時代というから、本物の江戸前。老舗中の老舗。そんな歴史ある大店が、まさかの立ち食い蕎麦経営というのが面白い。せっかちで権威を嫌う、江戸っ子の粋を感じるじゃないか。

前にこの店を探して歩いていた時、目で見つけるより速く、鰹節の匂いに鼻が反応した。視覚より嗅覚って、俺は犬か。今回も、店が近づくと、プーンと鰹節と醤油の入り交じった匂いがして、まだ午前10時前だったが、急速に腹が減ってきた。日本人なら誰しもこの匂いには弱いはずだ。店に入ると、以前来た時は無かった折りたたみ椅子があり、座って食べられた。ラッキー。混んでくると片付けるらしい。

ここで蕎麦と一緒に絶対に食べたいのが、おかかご飯。並ライス150円、半ライス80円。これを頼んだら、カウンターにある鰹節の粉を好きなだけかけてもよい。かけたらそこに醤油をちょっとたらす。箸で軽く混ぜて、食う。これがもう、最高にウマい!俗に、猫まんまとか、ニャンニャン飯と言って、時々飲み屋にあるが、あれとは鰹節のレベルが違う。普通は削り節だが、ここのは上の工場で鰹節を作るとき発生する粉鰹だ。こんな単純なものがなぜこんなにも奥深くおいしいのだろう。あー、思い出したら食べたくなってきた。

さらにこの店の魅力は季節の変わり蕎麦があること。この日は「生のりそば」と「おろしもりそば」があった。生海苔は金沢八景漁師直送。大根おろしは日本一辛いと噂される秋田のしばり大根を注文されてから下ろすと言う。激しく迷ったが、生のりそばを半ライスとともに注文。しめて450円という安さ!まさに働く者の味方だ。

この生のりそばが、ウマかったぁ!磯の香りビンビンで、やっぱりウマい汁に抜群の相性。蕎麦もやや細麺でポキポキシコッとした感じが最高。ボクは、変に本格手打ち蕎麦に近づけようとしてる麺の立ち食い蕎麦が好きではない。立ち食い蕎麦には立ち食い蕎麦らしい麺のおいしさがある。ここのは立ち食い麺の上等麺だ。

そこにおかかごはん。ああもうタマラナイ。蕎麦とご飯は、間を鰹節がきっちり取り持ってくれて、バッチリ合う。

おつゆの足りない方は、丼をカウンターに持ってきてくれたら継ぎ足します、と張り紙。この世知辛い時代に泣けるサービスじゃないですか諸君!化学調味料も入っていないし、遠慮も躊躇も体裁もなくズーズーゴクゴク汁を味わおう。麺をたぐろう。

とどめは、缶ビールをおいていること!仕事帰りにクイッといって、蕎麦ぁズズッと食って、さっと家に帰るシアワセもある。夢の立ち食い蕎麦屋だ。

日本橋とはいえ、三越や高島屋なんかからはちょっと離れてポツンとある。なのに人気店なのも当然だと、今回改めて思った。

今回ご紹介したお店はコチラ!

サラリーマンの強い味方 そばよし

サラリーマンの強い味方
そばよし

住所 東京都中央区日本橋本町1-1-7本町山崎ビル1F
TEL 03-3241-0884
営業時間 7:30〜20:00
朝食営業、ランチ営業

※土曜、日曜、祝日休

マンガ家/ミュージシャン 久住 昌之

PROFILE

マンガ家/ミュージシャン久住 昌之(くすみ・まさゆき)
1958年7月15日 東京・三鷹生まれ
法政大学社会学部卒。美學校・絵文字工房で、赤瀬川原平に師事。
1981年、泉晴紀と組んで「泉昌之」名でマンガ家としてデビュー。谷口ジローと組んで描いたマンガ「孤独のグルメ」は、各国で翻訳出版、2012年にTVドラマ化され、現在season5。劇中全ての音楽の制作演奏、脚本監修、最後にレポーターとして出演もしている。最新作は生まれ育った東京三多摩地区を散歩して綴った自伝的エッセイ集「東京都三多摩原人」(朝日新聞出版)1月20日発売。
  • カメラマン 瀬谷壮士
  • 更新日 2016.04.28

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