賢者の仕事、賢者の健康

Vol.2脳がちゃんとしてないと、人生はうまくいかないんです。
脳科学者澤口俊之先生 インタビュー(後編)

「いつかはこうなりたい」というイメージを持っておくことは大切です。

− 今日は大変勉強になりました。私の場合「右脳は感性・左脳は理性」みたいなイメージさえ未だに引きずってましたから、ちょっと頭も良くなった気がします。いまだけかもしれませんが(笑)。仕事では結局、好奇心が大事なんだというお話(前編)も大変興味深くうかがいました。

澤口ほんとそうですね。私はとにかく意味ないことはしたくないんですよ。私の好奇心がくすぐられないような。「こんなの意味ない」が口癖ですからね(笑)。

ちなみに「自分のやっていることに意味がある」と思っている方は、健康長寿になりやすいという研究もあります。そもそも人間は、自分のやってることに意味を見いだそうとする生き物ですが、実際の社会には、どう考えても意味がないことが多くてツラいですね(笑)。若い頃のように好きな研究ができないとか。会社勤めの方はもっとそうかもしれない。

そのときは仕方ないですよ。そういうこともやがて役に立つだろうと思っておくしかない。「いつかはこうなりたい」というイメージを持っておくことは大切です。実際そうならなくても、そのイメージがあることで、人生がいい方向に進むということはわかってますから。

未来を夢見る能力は人間だけに備わっています。「他者と協調する」「世のため人のために生きる」「感謝の気持ちを持つ」――これらも人間の本質で、脳や人生に良い影響をもたらすことがわかってきています。

私の好きな論文があるんですが、それによれば夢を持っているだけで、人は7.1年長生きできるっていうんです。夢を持っていて、かつ自分の人生に意味があると思っている人は、そうでない人に比べて10年くらい長生きするという研究もあります。「未来記憶」というのは7歳くらいから出て来るんですけど、お子さんに「そんなのできるわけないよ」なんて言っちゃうのは一番ダメです。夢を肯定的に捉えてあげないと。

なかなか夢を持ちにくい時代ですけどね。先ほど「脳科学がなぜこんなに注目されているのか?」というご質問もありましたが、注意しなければいけないのは、「科学が信奉されている時代は不安の時代である」と言われていることです。

いまはちょっとそういう傾向もありますから、我々みたいな脳科学者の話はどうでもいいって私はよく言うんです。そういうときのほうが世の中は安定してるかもしれませんよ。世の中もっとハッピーになって、科学なんて言葉を意識しなくてもいい時代が来たほうが本当はいいのかもしれない。たとえそうなっても、私は研究を続けてると思いますが(笑)。

編集者/東北芸術工科大学客員教授 河尻 亨一

PROFILE

編集者/東北芸術工科大学客員教授河尻 亨一
雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心に多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集を手がけ、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。
現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。
  • カメラマン 平岩紗希
  • 更新日 2016.03.15

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