賢者の仕事、賢者の健康

Vol.2脳がちゃんとしてないと、人生はうまくいかないんです。
脳科学者澤口俊之先生 インタビュー(後編)

まともな脳科学者はテレビに出ません。ですが…

− そこでおうかがいしてみたいのですが、先生がメディアに登場して、脳科学のことを広くわかりやすく解説する仕事にも力を入れてらっしゃるのはどうしてですか?

澤口私が言うのもなんですが、まともな脳科学者はテレビに出ません。出る余裕ないし、めんどくさいですから。

私が一般書を書いたり、テレビに出演する理由はふたつあります。ひとつは私の師の影響です。先ほどの話と関係しますが、大学院生時代に徹底的に鍛えられたんですよ。久保田競先生(生理学者/京都大学名誉教授)というものすごく厳しい指導をされる先生で、先輩や後輩の中には、胃潰瘍になったり胃に穴があいた人が何人もいるくらい。それがよかったと思います。

で、何が言いたいかと言うと、その先生は一般書もお書きになる方で、インタビューも積極的に受けるんですね。「国立大学の教授というのは、税金でやっている以上は国民に還元する義務がある」ということで。専門的な研究と同時に、一般の方々にわかるような発信もしなきゃいけないと教わりました。ひとつはその影響が大きいです。

もうひとつは、いい加減な脳科学の知識が世の中に広まりすぎているということです。こちらのほうが理由としては大きいかもしれません。現代の脳科学的に正確な知識をなるべくわかりやすく伝えたいということですね。

脳科学の進歩は著しいわけですが、最先端の脳科学者が専門用語だらけの解説をしても、世間の人はだれもわからない。ですから自分の研究のみならず、世界中の研究成果をまとめて、皆さんの人生にプラスになることを伝えていこうと。私の場合、それが研究以外の活動のベースにあると思います。

ただ、この「広くわかりやすく伝える」ということが意外に難しい。ときには私も極論に近いことをあえて言うこともあります。「男性脳」とか言ったりするのもそうで、実際に男女の脳で差はあるのですが、これもちゃんと正確に言おうとすると長く複雑になってしまいますから、そこはジワジワ系でいいかなと思って始めました。コメントをするときは最初に極論じみたことを言っておいて、視聴者に注目してもらい、徐々に誤解を解いて行く方法論をとってます。

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