賢者の仕事、賢者の健康 賢者の仕事、賢者の健康

Vol.2あまり信用しなくていいんですよ、脳科学の話なんて。
脳科学者澤口俊之先生 インタビュー(前編)

好奇心と楽しさが脳を刺激する

− 科学が進めば進むほど、昔から言われている当たり前のことが学問的に証明されていってるという印象も受けるのですが。

澤口その通りです。我々は後追いしてるんです。あまり信用しなくていいんですよ、脳科学の話なんて(笑)。最近ではあまりにも脳科学が世間に信奉されてしまっているところがあるので、「脳のどこを活性化したらいいみたいな研究はあまり信用するな」と脳科学者が警告する本が出てるくらいです。どこを活性化すればいいとかそういうものではなく、様々な現象との関係性から総合的に導かれる結論が大切です。

その意味で最近注目されているのは、仕事や生活におけるクリエイティビティ(創造性)の重要さです。クリエイティビティは幼少期に伸ばしたほうがいいということもわかってきました。それがいつ育まれるかというと、結局は幼少期なんですね。それを育む遊びというのは、たとえば砂場遊びみたいなものです。山を作ったり崩したりしますよね。あんな感じの遊びでいいんです。

もうひとつ重要なのは好奇心(Curiosity)です。好奇心に関する研究はこの2〜3年で急速に進みました。仕事でも好奇心や探求心がない人は本当にツラくなる。そういう人は「主体性もなければやる気も出ない」ということが証明されており、「どうやればモチベーションが上がるか?」という研究もいっぱいあるんですが、わかったこととして、好奇心・探究心をくすぐっちゃうのが一番いいと。「報酬を上げる」とか「未来を予測させる」とか色々な研究があったんですが、結局は好奇心でした。

そりゃそうですよね? 我々研究者が色々めんどくさいことをやってるのも、好奇心があるからですよ。だれに言われなくても自分でやっちゃいますから。まあ、好奇心が湧かないことに関してはなんにもやらないんですが(笑)。

いずれにせよ、お子さんに勉強させるのも好奇心を刺激してあげるのがいいです。となると、子供は遊んでるのが一番いいんですよ。お茶の水女子大の内田伸子先生が一昨年、東大を含むいわゆる難関大学に合格した子供を持つ1000人くらいの保護者を対象に調査した研究を発表されたのですが、小学校入学前は「思いっきり遊ばせる」「好きなことに集中して取り組ませる」の2点を意識して育てたほうが、難関大学への入学率が約2倍に高まるということです。我々の研究でもそれに近い結果が出ています。遊びでも仕事でも「楽しい」という要素がないと脳はうまく働かないようですね。

>>後編に続く

編集者/東北芸術工科大学客員教授 河尻 亨一

PROFILE

編集者/東北芸術工科大学客員教授河尻 亨一
雑誌「広告批評」在籍中には、広告を中心に多様なカルチャー領域とメディア、社会事象を横断する様々な特集を手がけ、多くのクリエイター、企業のキーパーソンにインタビューを行う。
現在は実験型の編集レーベル「銀河ライター」を主宰し、取材・執筆からイベントのファシリテーション、企業コンテンツの企画制作なども。
  • カメラマン 平岩紗希
  • 更新日 2016.03.01

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