賢者の仕事、賢者の健康 賢者の仕事、賢者の健康

Vol.2あまり信用しなくていいんですよ、脳科学の話なんて。
脳科学者澤口俊之先生 インタビュー(前編)

仕事を一生懸命やることで“脳力”は伸びます

− 脳の基底を鍛えるという意味で有酸素運動が効果的というお話でしたが、ビジネスパーソンが仕事力をアップするための脳の鍛え方というのはないのでしょうか。

澤口脳の基底ではなく脳機能の伸ばし方ということですね? その答えもめちゃくちゃ簡単です(笑)。機械的な単純作業や事務作業でない限り、自分の仕事を一生懸命やる。これが一番。ビジネスパーソンが伸ばしたい“脳力”というのは、仕事で使う能力ですから。使わなければ脳機能はおのずと下がってきます。有酸素運動をきちんとやってあとは頭を使う。これが王道です。

もちろん、栄養も大事ですよ。脳と栄養に関しても様々な研究があり、実証されているものもありますけど、新しい論文が次々と出てきますし時代によっても変わります。長いスパンで見てかつ論文的にも信頼できそうなものを挙げると、一番いいのは魚ですかね。

ただし、DHA・EPAだけじゃないです。いくつかの栄養素を組み合わせたほうがいい。となるとやっぱり和食がいいということで、日本人の場合はそんなに気にしすぎることはないと思います。ようするに大切なのはバランスの取れた食生活です。これも当たり前のことなんですが。

健康志向のブームに影響を受けすぎて、「健康! 健康!」と思い詰めると逆にストレスになっちゃいます。これに関しては、アメリカで行われたある研究がありまして、適性体重を維持できている人というのは、ダイエットに何の興味もないんです。そういう人は「食を過度に意識することなく、脳が求めるものをその都度自然に摂取してるのでは?」という説ですね。「これを食べなきゃ…」と無理に思うことによって食生活のバランスが崩れます。ただ、そのバランスの崩れ方には根が深いところもある。幼少期にバランスを崩してしまった人は、あとあと成人して以降も響くようです。

− 興味深いお話です。我々の脳は「自分にとって何がベストか」といったことを本能的に知っているのかもしれませんね。本来はその“声”に従ってやればいいものを、ストレスや生活スタイル、社会規範といった様々な外部要因によってねじ曲がることから起こる問題も多いのでは? と。

澤口睡眠だってそうじゃないですか? 「7時間がいい」なんていうのは盲言です。あれはあくまで平均値ですから。それに合わせようとして生活リズムを崩した人もたくさんいます。まともな研究者なら、ベストな睡眠時間が個人によって違うことがわかっていますから、まずはそれを調べなさいと言うでしょう。

脳機能の高め方でもテクニックや方法論はいっぱいあって、いままでクルマ通勤だった人が自転車通勤にしただけでよくなったという研究もありますけど、それが万人に合ってるかはわかりませんからね。一般化できないことは我々としても言いづらい。一般化できることとしては有酸素運動と脳を使うこと、あとはバランスの取れた栄養です。とどめ的なことなんですけど(笑)。

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