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妊娠に備えたからだの準備とは?「妊活」について、自分も、そして周りの人も知っておきたいこと

January 11, 2024

  • 取材・文:及川夕子
  • イラスト:小川悟史
  • 編集:大森奈奈
  • 監修医師:荒田尚子、三戸麻子

更新日:2024年01月10日

人生100年時代を迎えた現代では、昔と比べると人生の選択肢が広がってきました。結婚する・しない、子どもを持つ・持たない、どこで暮らすか、いつまで働くか、何を生きがいにするかなど、私たち一人ひとりにさまざまな可能性があり、選択肢があります。前提としてどんな生き方も尊重されてよく、すべての人に健康で幸せな生活をおくる権利があります。

一方で、将来子どもを持つという点に目を向けると、妊娠・出産には年齢的なタイムリミットがあり、先延ばしできないという現実も。また出産前からの生活習慣や病気が、妊娠・出産・赤ちゃんの健康に影響することも知っておきたいこと。

そこで今回は、近年注目されている妊娠前の健康管理「プレコンセプションケア」について紹介しながら、妊娠に備えて持っておきたい知識や妊娠しやすいからだづくりのポイントを解説。今すぐに妊娠を考えていなくても、心とからだをしっかりとメンテナンスしておくことは大切なこと。未来の可能性を広げ、自分らしい人生を選択していくためにはどんなケアが必要なのか。プレコンセプションケアの啓発に取り組む、国立成育医療研究センターの荒田尚子先生と三戸麻子先生に伺いました。

妊娠前の健康管理「プレコンセプションケア」って?

「いつか子どもが持てたら……」という人も、現在「妊活と向き合っている最中」という人にとっても、必要なのは「妊娠に備えたからだの準備」。とはいえ、具体的に何からどう進めたらいいのかわからないという人も少なくないのではないでしょうか。

「医療の発展によって妊婦の死亡率や周産期死亡率(※1)は劇的に減りました。しかし、若い女性の痩せや肥満の増加、月経関連疾患、性感染症の増加などがリスク因子となり、妊婦や赤ちゃんの健康に好ましくない影響が及ぶ可能性の高い妊娠が増えています。将来への選択肢を残しておくためには、より早い段階から健康や妊娠のリスクを減らしておくことが大切。それは生まれてくる子どもの健康にもつながっていくものなのです」と、国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター母性内科 診療部長の荒田尚子先生はいいます。

そんな中で広まってきたのが「プレコンセプションケア」という考え方。日本では2015年、国立成育医療研究センター内に「プレコンセプションケアセンター」が開設され、妊娠や出産、心身の健康にまつわる情報発信や健康支援の取り組みがスタートしました。

※1 周産期死亡は、妊娠満22週以後の死産と生後1週未満の早期新生児死亡をあわせたもの。周産期死亡率は、各年において出産1,000件に対し周産期死亡が何件あったかを示す値 。

いますぐ取り入れたい、妊娠に向けた4つのアクション

妊娠に備えたからだの準備として具体的に何から取り組めばいいのでしょうか?ここからはプレコンセプションケアの重要な柱となる4つのアクションを紹介します。このなかには、若い世代が取り組むべきことはもちろん、カップルで取り組むこと、生涯にわたり必要なケアや健康管理も含まれています。

「全部一度に行うのは大変かもしれませんが、できることが増えるほどより健康になり、より健全な妊娠・出産のチャンスを増やすことにもなります。『若いから無理をしても大丈夫』ではなく、若いからと油断せずに健康でいるための生活を意識することです。できることから行い、1つでも多く増やしていきましょう」(荒田先生)

Action1 今の自分を知る

□生物学的な男女の違いを理解する
□性の多様性を受け入れる
□妊娠と年齢の関係を理解する
□適正体重を維持する
□基礎体温でリズムを知ること
□悩みを相談できる人や場所をつくる(ストレスを溜め込まない)
□基礎体温をつけてみる

妊娠・出産に関連するリスクが少しずつあがってくる35歳くらいから妊娠を考えるケースが増え、不妊症に悩むカップルも増えてきています。
「卵子は年齢とともに質が低下し数も減少します。ライフプランを立てるときは、キャリアプランだけでなく、からだに起こる変化のことも考慮しましょう」(三戸先生)

TOPICS:肥満も痩せもリスクになり得る

痩せ(BMI18.5未満)の状態で妊娠した場合は、2500g未満の低体重児の出産につながることがあり、日本では約10人に1人が低出生体重児として生まれてくるというデータもあります(※2)。

「低体重児で生まれた赤ちゃんは、小児期から糖尿病や高血圧などの生活習慣病になるリスクが高くなることや生まれた後の成長が追いつかず最終身長が低くなりやすいです。一方、肥満は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群といった分娩異常のリスクを高めます。普段から標準体重でいることを心がけましょう」(荒田先生)

標準体重でいることが大切なもう一つの理由は、痩せすぎ、太りすぎは排卵障害を引き起こしてしまう可能性があることです。下記のBMI値を参考に、標準体重を把握しておきましょう。

BMI20未満 12%リスク上昇
BMI20〜24 排卵障害のリスクが最も低い
BMI25 以上 25%リスク上昇
米国の看護師健康調査IIのデータを解析
26,125人の妊婦と803人の排卵障害の不妊女性を対象
※標準の範囲はMBIが18.5〜24.9/BMI=体重kg ÷ (身長m)2

※2 厚生労働省「人口動態統計」より

Action2 生活を整える

□主食・副菜・主菜・乳製品・果物をバランスよく食べる
□今妊娠したい・妊娠してもよいと思う人はサプリメントなどで葉酸摂取をスタート
□禁煙する・受動喫煙を避ける(パートナーも一緒に禁煙を)
□アルコールを控える。妊娠中は禁酒を
□危険ドラッグ・有害な薬品は避ける
□1週間に150分程度の運動を習慣に

より健康を意識した食生活、生活習慣を改めて見直してみましょう。栄養バランスのよい食事の他に、摂取するといい葉酸は、胎児の細胞分化に不可欠なビタミンで、ブロッコリー、ほうれん草、納豆などに多く含まれています。アルコールや危険ドラッグ、有害な薬品を避けることも大切です。また、女性の喫煙は不妊のほか、流産・早産、低出生体重児につながり、受動喫煙でも同様の悪影響があります。

TOPICS:男性パートナーの喫煙も不妊につながる

男性の喫煙も同じく不妊やED(勃起障害)につながる可能性があります。生まれてきた赤ちゃんにも、両親の喫煙により、乳幼児突然死症候群、注意欠陥・多動性障害などにつながる可能性があります。

Action3 検査やワクチンを受ける

□不妊につながる感染症を予防しよう(コンドームの活用、カップルで性感染症のチェックを受けるなど)
□妊娠する前に必要なワクチンを接種
□年に一度は健康診断を受ける(生活習慣病やがんは早期発見・早期治療が有効)
□がん検診を受ける(20歳から子頸がん検診、40歳から乳がん検診など)
※乳房を意識した生活(ブレストアウェアネス)をこころがけましょう。

妊娠中にかかると赤ちゃんに影響を与える感染症があります。

「例えば風疹、麻疹、水ぼうそう、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は妊娠前のワクチンで予防できます。特に風疹は女性だけでなくパートナーや家族も接種しておいて、妊婦さんに感染させない環境づくりが大切です。インフルエンザワクチンは妊娠中も接種できるので、重症化を防ぐためにも毎年打つようにしましょう」(水戸先生)

TOPICS:男女ともに性感染症予防の正しい知識を

性感染症の中には不妊の原因になったり、赤ちゃんの健康に影響を与えてしまったりするものがあります。

「妊娠を考えていないときのセックスではコンドーム、オーラルセックス用コンドームなどの使用を(※3)。カップル間でどちらかが性感染症にかかったら、ピンポン感染を防ぐためにも女性は婦人科、男性は泌尿器科で相談し、カップルでしっかりと治療をすることが大事です」(三戸先生)
※3 コンドームで完全に予防できない性感染症(梅毒や尖圭コンジローマなど)もあります。

Action4 かかりつけ医を持とう

□女性はかかりつけの婦人科医をつくる
□月経トラブルについて知る・予防・治療をする
□避妊は男女で(より確実な避妊法である低用量ピル+コンドーム併用でより安全なセックスライフを)
□定期的な歯のチェック・クリーニングを(早産や赤ちゃんの低体重児と関わりがある)
□持病があり妊娠希望があるときは主治医に伝える(高血圧、糖尿病、喘息など)

高血圧や糖尿病では流産率が上昇するなどの報告があります。持病がある方はあらかじめ主治医に相談することでリスクを減らしましょう。

TOPICS:女性は婦人科にかかりつけ医を持っておくことも重要。

月経が正常に来ていることは健康な証拠。ですが現代女性は月経回数が増えていることから子宮内膜症(生理痛や不妊の原因になる疾患)を発症する人も多くいます。

3ヵ月以上の無月経やひどい生理痛は放置せずに婦人科に相談してみましょう。また、女性は20代から子宮頸がんに罹患する人が増加します。発見が遅れると将来の妊娠をあきらめなくてはならなくなったり、命の危険にも及びます。予防にはHPVワクチン(※4)と子宮頸がん検診の両方を受けることが効果的です。定期接種の対象ではなかった大人世代は2年に1度の子宮頸がん検診で早期発見に努めましょう。」(三戸先生)

※4
1)HPVワクチン:小6~高1の女子の女の子は無料でHPVワクチンを接種できます。また平成9年度~平成18年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日)で接種を逃した、または合計3回の接種を完了していない場合に、無料でHPVワクチンが受けられます(キャッチアップ接種の期間は2025年3月まで)。男性への接種については、2023年12月末現在、年齢にかかわらず任意接種(全額自費/自治体により助成がある場合も)となっていますが産婦人科・小児科や内科などでも受けられます。

2)令和5年4月からは、平成18年度生まれ(誕生日が2006年4月2日~2007年4月1日)の方もキャッチアップ接種の対象になります。また、平成19年度生まれ(誕生日が2007年4月2日~2008年4月1日)の方も、通常の接種対象の年齢(小学校6年から高校1年相当)を超えても、令和7(2025)年3月末まで接種できます。

3)過去に接種したワクチンの情報(ワクチンの種類や接種時期)については、母子健康手帳や予防接種済証等でご確認ください。

出典:厚生労働省(情報は2023年12月現在)

コラム

女性と男性の妊孕力(妊娠するための力)

女性の結婚年齢と生涯不妊率の関係を見ていくと、20-24歳で結婚した場合の生涯不妊率は約5%。この数値は、結婚年齢が高齢化するとともに高くなり、20代後半では約9%、30代前半で約15%、30代後半で約30%、40代前半で64%と、結婚年齢が高齢化すると生涯不妊率は上昇します(※5)一方で、加齢の影響を受けるのは女性だけではありません。40歳を超えると男性の精子の質の低下が進むために不妊や流産になることも多くなるといわれています。また、高齢の父親から生まれた子どもでは出生児の健康リスクが上昇します。

※5 出典:Menken J, Trussell J, Larsen U.Science. 1986 Sep 26;233(4771):1389-94.(公益財団法人1more Baby応援団 理事 齊藤英和先生の記事より)

(出典:Hassan MA, Killick SR.Fertil Steril. 2003 Jun;79 Suppl 3:1520-7.(公益財団法人1more Baby応援団 理事 齊藤英和先生の記事より)男性の年齢と相手が1年間に妊娠する確率の関係を示したグラフ。男性が高齢になると累積妊娠率は低下する)

可能な限り妊娠の確率が高い時期に妊娠できるように、パートナーと早いうちからライフプランを立てて、からだの準備をしておくことがベスト。ですが年齢を重ねても生活習慣を改善することで、不妊の原因を一つずつ減らしていくことは可能です。

Aciton1~4 出典:プレコンノート | 国立成育医療研究センター

自分とパートナーのこれからの健康管理について、考えてみませんか。

「プレコンセプションケアは、性別や年代にかかわらず、すべての人に当てはまるライフコースアプローチです。プレコンセプションケアを行うことで、将来の自分の健康もよくすることができますし、自分の可能性を最大限発揮させることにつながります。またそれが、将来生まれてくるかもしれない自分の子供、つまり次世代の健康もよくすることができます。ぜひ、ご自身のライフデザインに取り入れてみてください」(荒田先生、三戸先生)

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